序章
とある世界
「残念でしたー」
平民は私をあざ笑う
「バーか…アハハハハハっ。皇子様は私の味方だしー?」
元公爵令嬢にして現聖女を嘲笑うなんて
「あぁ、そうだった。あんたの大切な人は首切り落として殺してあげたわ。み~んな等しく地獄へ行ったのよ?ウフフフフ、あッハハハハ」
は?
「特にユーラって子、あの」
そう、言葉が続くその瞬間、私は…
「っ!?なに、やってんのっ?回復、回復回復…なお、らない?」
反射的に自らを貫いていた。聖女が扱い、魔を払う特性を持つ、神聖とされる聖氷魔法で。
牢が鉄の臭いとルビーと比べても遜色ないほどに美しくその反面、底が見えぬ深淵をまとった黒の液体でうめつくされた。
後ずさる平民。ピクリとも動かない聖女。
「うっわ…」
誰にも予想がつかなかった。その後に続く言葉を
「くっさ~い。気持ちわっる…こんなもの残していかないでほしいんだけど~?」
そして、牢の中、聖女…否、少女はいたはずだった。
「い、ない?え、どこ行ったの、あいつ。ッどうしよう、やばい、やばいよ、これ。」
鉄の臭いと液体を残して跡形もなく消えていた。肉片も髪の毛一本すら落ちていなかった。聖氷魔法で作ったはずの氷の槍も。
「こんなの、転生した意味がっ……でも、逆に良かったのかも。証拠が消えたのよ?なら、大丈夫。大丈夫、大丈夫。」
自身を落ち着かせる呪文のようにひたすら唱え続けた。
「私の世界だもの。私が好きに、できなくてこの世界は何のためにあるというの?」
「私が思うように動かせなくて、どうするの?」
その一言が放たれた瞬間、世界はがらりと姿を変えた。
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