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生徒会長様はご機嫌ナナメ

優等生のマネキンのような彼氏を持つ私は、校則にも勉強にも、とにかく厳しい茉人(まひと、)と、恋人らしい事をした事がほとんどない。

たまには恋人っぽい事をしたかった私は、幼馴染である裕輝ひろきに協力してもらい、ヤキモチを妬かせよう大作戦を決行する!

(甘/ほのぼの/青春)

---------


興味を持って下さってありがとうございます。少しでも読んで下さった方の心に残れば嬉しいです。


齋藤茉人さいとうまひとはとても厳しい。

学ランのボタンを一番上までキッチリとしめ、髪を綺麗にワックスで撫で付け、さらに眼鏡をかけ、常に背筋を伸ばしている。

学生の見本やマネキンのような人だ。


生徒会長という立場のせいか、特に校則にうるさい。

とにかく融通がきかなくて、彼女である私にも容赦がないくらいだった。


まぁ実際私もかなりの遅刻魔だし、制服はアレンジして気崩してるし、怒られる様な事をするのが悪いのだが…。

それでも毎回、寿命が縮む思いだ。


そんな茉人まひとを好きになったのは私だが、たまには普通の恋人同士の様に甘い顔を見せてくれても良いと思うのは、果たして私のワガママなんだろうか。


他の人とは違うんだ、私は茉人まひとの特別なんだと思わせて欲しい。


だからじゃないが、私はクラスメートである幼馴染の裕輝ひろきに頼み、茉人まひとを妬かせよう大作戦を決行したのだ。










「なんでオレがお前に惚れたなんて噂を流されなきゃならねぇんだ!!」


「なによ今さら、相談した時、協力してくれるって言ったじゃない」


裕輝ひろきに協力を頼む話をし、放課後に考えた作戦を伝えると、裕輝ひろきは協力を渋った。


「オレは齋藤の野郎に一泡吹かせるって聞いたから、協力するっつったんだぞ!!」


私と同じく、少し問題児の裕輝ひろきは当然のごとく、茉人まひとに目を付けられている。

最初に声をかけた時は、かなり乗り気だった。


「それは言葉のあやよ、ア!ヤ!」


確かに協力にこぎつける為に、多少の脚色はしたが、ここで裕輝ひろきに降りられたら困る。


だが裕輝ひろきは私の考えた、茉人まひとを妬かせよう大作戦の詳細を頑として受け付けない。


仕方なく溜め息を吐くと、私は諦めたフリをしながら背中を向けた。


「ならいい。アンタのお父さんに、今まで秘密にしておいてあげたテスト結果を全部…」


「んなッ!?待て待て!!それはマズい!!」


「じゃあ協力してくれる?」


裕輝ひろきのお父さんは警察官で、茉人まひと以上に怖くて厳しい人だ。

今までの赤点を全てバラしたら、命が危うくなるかもしれない。


お父さんの名前を出せば、裕輝ひろきが落ちる事は分かっていたが、私は最後の一押しにと立ち上がる。


「じゃあね、死なないといいね」


「まっ…待て五十嵐!!」


案の定、裕輝ひろきは焦った様に私の腕を掴んだ。


「やる!やるから!!」


一丁上がり。

私は内心でほくそ笑むと、再び椅子に腰掛けた。


「じゃあ噂を流して良いのね?」


「し…仕方ねぇ、今回は我慢してやる」


「ちゃんと噂を裏付ける様な態度をとってよ?」


「はぁ?どうすりゃいいんだよ?」


「どうって…、そうね。…所構わず私を口説いたり…」


「…っな…!」


小さく裕輝ひろきの呻く声が聞こえたが、無視して話を続ける。


「一日中私の後を追い掛けたり…」


「ふざけろてめぇ!んな事出来るわけ…」


「例えよ、例え」


結局、お父さんの名前を出して脅しをかけながら作戦の説明を終えると、裕輝ひろきに念を押して話を終えた。

後は、噂が広まるのを待ってから行動を起こすだけである。










そうして数日。

わざと流した噂が広まった頃、私は裕輝ひろきと二人で教室に残っていた。


「色恋の噂って、ホントあっという間に広まるね。正直こんな噂になるとは思わなかった」


窓から校庭を眺めながら呟くと、裕輝ひろきは不機嫌そうに煙草に火を点ける。


それは見馴れた光景で、最初のうちだけ口うるさく怒ったものの、私も何も言わなくなっていた。


「…で?齋藤は来るんだろうな」


「へ?」


「へ?…じゃねぇ!何のためにオレが我慢したと…」


「あぁ、分かってる分かってる。今日の放課後、アンタが私に告白するつもりらしいって言う話は、ちゃんと茉人まひとの耳に入ってるよ」


それは間違いなく伝わる様に、私自ら手回しをした。

不安な事は、茉人まひとが知った上で来ないかも知れないという事だ。


「…来なかったらどうするつもりだよ」


「……」


私の不安を代弁する様に、裕輝ひろきが口を開く。

だけど私は答えられなくて、黙り込んだ。


「おい五十嵐!てめえ、オレにあんな真似までさせて来なかったら…」


「うるさいな!来るよ!」


ついそう怒鳴るが、それは半分以上は祈りの様な言葉。

本当は来ないかも知れないと、不安が胸中を渦巻いている。

その不安は裕輝ひろきにも分かったのか、裕輝ひろきは苛立った様に私に詰め寄った。


「最初から無謀だったんじゃねえのかよ!」


「……」


「聞いてんのかよ!」


さすがに我慢の限界が来たのか。

裕輝ひろきが私の胸ぐらを掴み、壁に押し付けた時だった。

教室のドアが開いて茉人まひとが姿を見せる。


茉人まひと…」


「齋藤?」


思わず裕輝ひろきと同時に名前を呼ぶ。

茉人まひとは私を襲っている様に見える裕輝ひろきを見ると、クイッと眼鏡を押し上げた。


「何をしている?」


そう低く聞かれ、裕輝ひろきは焦った様に私から離れた。

そして小さく私に耳打ちする。


「来たぞ、この後の展開考えてあんだろうな」


「…考えてない」


「てめッ…」


そう言って、裕輝ひろきが再び私に迫ると、不機嫌そうな茉人まひとの声が響く。


「…おい、答えるんだ。校則で不純異性交遊は禁じられているはずだ」


作戦を続けるなら、ここで裕輝ひろきは出て行くべきだが、頭に血が上ったのか、裕輝ひろき茉人まひとを睨み付けた。


「邪魔だ齋藤、退いてやがれ」


その声は凄みがきいていて、茉人まひとでなければ逃げ出していただろう。


「言わなければ理解できないのか?朱音から離れたまえ」


「あのなぁ齋藤、こいつはオレを…」


「離れろと言っているのだよ」


そう言うと、茉人まひとは一歩私達に近づいて来る。

そこでやっと冷静になったのか、裕輝ひろきは指示を求める様に私を見た。


ここで喧嘩になっても困るし、多少雰囲気が変わったとしても、茉人まひとが来る事は予定内で、私は無言で視線を教室のドアに向けた。


私の意志が伝わったのか、裕輝ひろき茉人まひとから距離を取ると、教室を飛び出す。


やっと茉人まひとと二人きりになれた私は、おずおずと茉人まひとを見上げると、また俯いた。

すると茉人まひとは予想外の事を言った。


「君の考えは分かっている。この僕にヤキモチを妬かせたかったのだろう」


「…は?」


「全くつまらないな」


その言葉を聞く限り、作戦はバレバレだった様だ。

全身から力が抜けた私は、へなへなとその場にしゃがみ込む。


「…ごめんなさい」


「謝るくらいならば、最初からやらない事だ」


「……」


「…こんな作戦を考えたという事は、僕を信用出来なかったという事かい?」


信用してなかった訳じゃない。

ただ茉人まひとに態度で示して欲しかった。

でもそれを言えば、ますます機嫌が悪くなるだろうと、言葉を飲み込む。


「…どうすれば満足する」


「え?」


「僕に不満があるのだろう?言ってみたまえ」


「不満…なんか…」


ないと言いたいが、それを言うと嘘になる。

私の声は、どんどん小さくなっていく。


「不満っていうか…、ただ…」


嫌われたら…と思うと言葉にならず黙り込むと、茉人まひとは苛ついた様に目を細める。

機嫌が悪い証拠だ。


「人間同士なのだ、きちんと話し合う事が出来るだろう?それとも、純粋に僕の事が嫌いになったのかい?別れたいと思って…」


「違います!言います!」


本気なのか脅しなのかは分からないが、茉人まひとは有言実行タイプだ。本当に別れられたら困る。

慌てて両手を振ると、私はおずおずと口を開いた。


茉人まひとに…、茉人まひとに本当に好かれてるのかどうか…知りたかったの」


「…どういう意味か理解しかねるが…」


茉人まひとは私の事を好きって言ってくれた事ないし、他の人とも扱い方が同じだから、もしかしたら茉人まひとにとっての私って…その他大勢と同じなのかなって…」


「…ふむ」


茉人まひとが返事にきゅうしてるのが分かる。

こなバカで哀れな女に、何と言えば良いのか考えているのだろう。


私だって、バカだと思う。

でも茉人まひとの気持ちが知りたくて、我慢出来なかった。

さすがに呆れて言葉もないかと思っていると、茉人まひとは私に近づき、足元に片膝を立てて座る。

まるで王子様のような仕草にドキリとすると、茉人まひとうやうやしく私の手を取った。


「…?茉人まひと?」


「貴女が好きだ」


「…へ?」


今何と言われたんだろう。

思わずきょとんと聞き返してしまう。


「今…なんて?」


「好きだ…と言ったんだよ」


「…私を?茉人まひとが?本気で?」


「何度も言わなければ分からないのか?君の頭はきちんと脳みそが入っているのだろうな?」


「ご…ッごめんなさい!」


じろりと睨んでくる茉人まひとに慌てて謝ると、茉人まひとは汚れた膝を叩きながら立ち上がる。


「君は?」


「え?」


「君はどうなんだ」


そう言われた瞬間。

茉人まひとからの気持ちを聞きたい一心で、自分の気持ちをハッキリ伝えていない事に気付く。


言われてみれば、告白した時も付き合って下さいと言っただけで、好きと伝えていない。


「…お互い様…か、ごめん茉人まひと…」


「そんな言葉が聞きたい訳ではないのだが」


私が望んだ様に、茉人まひとも私の気持ちを聞きたがっているのか。

真っ直ぐに私を見つめる茉人まひとに笑顔で頷くと、私は口を開く。


「私は…齋藤茉人さいとうまひとが大好きです」


そう言うと、大した事はしていないはずなのに、茉人まひととの距離が縮まった気がする。


だが照れながら茉人まひとを見ると、茉人まひとはいつもと変わらない様子で、眼鏡を押し上げていた。


最後まで読んで下さってありがとうございました。

作品を気に入って頂けましたら、ブクマや広告の下にある感想やなど頂けましたら次回への励みになります。

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