三日月ブランコ
外国のネット友達が日本にいる数ヶ月。ルームシェアする事になったルナ。
期間限定だし、相手は年下だし。…と言う事で、ベッドは一つで眠るが、当のヴィドは子供扱いに不満な様子…?
(年の差/日常/ほのぼの/甘々/現代/恋愛)
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興味を持って下さってありがとうございます。少しでも読んで下さった方の心に残れば嬉しいです。
「起きてますか、ルナ」
「…はいはい、起きてますよー」
何度目の会話だろうか。
ヴィドと背中合わせにベッドに潜った私は、こうして定期的に話し掛けられ、なかなか眠る事が出来ない。
ヴィドは私のネットゲーム仲間で、語学留学と称して日本へやって来ている、アメリカの高校生だ。
わざわざアパートを借りるほど長期ではないという事で、私の住むアパートへと期間限定で居候していた。
なぜ一緒に寝ているのかと言えば、ベッドが一つしかないからである。
別にヴィドの事は嫌いではないし、もしそんな雰囲気になっても、まぁいいか。と思っていた。
「…ルナ」
「起きてるって」
「…何か話して下さい」
「…寝ないの?」
「眠れない、です」
そう言って、ヴィドは私の背中でもぞもぞと寝返りを打つ。
「ホラー映画なんか見るからよ」
「…見せたのは誰ですか」
「ヴィドが勝手に見たんでしょう」
確かにヴィドの言う通り、ホラー映画を見始めたのは私だけど、一緒に見ようなんて言ってない。
怖いのなら、見なければ良いだけの話だ。
私に文句を言うのはお門違い。
「苦手なら言ってくれれば、他の部屋で一人で見たのに…」
「同じ事です。他の部屋で見ていれば、追いかけます」
「…好きなんじゃないホラー映画。怖いもの見たさってやつ?」
「私が好きなのは、ホラー映画、違います」
「…アニメ?」
何が言いたいのか分かった上で敢えて意地悪を言うと、ヴィドは潜っていた毛布から、顔を出して私を睨んで来る。
「It's uncomfortable.子供扱いしないで下さい」
「高校生でしょ?子供だよ。ゲーム好きだし」
「ゲーム好きなのは貴女もでしょう。私には、ゲームより好きな物あります」
「漫画?」
「違います、今…私が抱きしめています」
そう言うとヴィド私の方を向いて、腰に腕を回してくる。
「…!」
子供だと思っていても、そこはやっぱり年頃の男の子。
想像よりも強い腕の力に驚いてしまう。
「好きな物って…やだな、人を物扱い…」
「すみません。好きな物ではなく、好きな人でした」
「ヴィド…」
「こっち向いて下さい」
そう言われ、ドキドキしながらヴィドの方へ寝返ると、ヴィドは幸せそうに私の胸に顔を埋めた。
「…ッ」
まさかと思って緊張するが、ヴィドは安心したのか、そのまま目を閉じる。
あ、寝るんだ…と内心ホッとしながら、しばらく黙って背中をポンポンと優しく叩いていると、ようやく眠れたのか規則的な寝息が聞こえて来る。
「ヴィド…」
小さく名前を呼ぶが返事はない。
「寝ちゃった?」
そう言うと、気持ち良さそうに眠るヴィドの顔を覗き込む。
「…可愛い寝顔」
こんな台詞は、ヴィドが眠っているからこそ言える。
聞いていたら、きっと子供扱いするな!と凄く怒るだろう。
でも、いつかはヴィドも成長して、少年から男性になる。
それまでは、子供扱いさせて欲しい。
無邪気な寝顔を見せるヴィドを眺めながら、私はもう少しだけ、こんな時間が続いて欲しいと願うのだった。
最後まで読んで下さってありがとうございました。
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