Promise ring
甘い物が三度の飯より好きな彼氏。
デート中も、目の前の彼女よりスイーツに夢中…かと思ったら?
(日常/ほのぼの/甘々)
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興味を持って下さってありがとうございます。少しでも読んで下さった方の心に残れば嬉しいです。
目の前には、スイーツを食べる恋人、樹の姿。
既にみている私の方が胸焼けしそうな量を食べてるけど、スイーツを食べる樹の手は止まる様子がない。
「…ねぇ樹」
名前を呼ぶと、呼んだ時だけ手が止まる。
「ん?何〜?」
「そんなにスイーツばっか食って、気持ち悪くなんない?」
「なんないよ〜?」
「しょっぱい物とか、辛い物とか欲しくなんない?」
「うん、なんない」
会話が終わる。
樹の度を越した甘党っぷりにも、いい加減慣れたつもりだったのに、まだまだ考えが甘いらしい。
「きっと今の樹の頭の中って、目の前に並んでるスイーツの事だけなんだろうね」
一緒にいる私の事などおかまいなしに、スイーツしか見ていない樹に嫌味を込めて言うと、樹は心外だと言うように顔を上げた。
「他にも考えてるよ?」
「ほぉ、例えば」
「もうすぐパフェがなくなりそうだし、次のスイーツは何にしようか、とか?」
やっぱりスイーツの事じゃねぇか。
頭の中で毒づいていると、樹は私の手を取った。
そのままお菓子の盛り合わせに乗っているチョコリングを摘まむと、私の薬指へとはめる。
「……」
「僕がひなのを愛してるって言う、証拠の指輪ッ」
「…いや、これチョコリング」
「大切にしてね」
「いや、だからこれチョコリング」
チョコリングならぬ、指輪をはめた薬指は、体温で溶けたチョコでベトベトだ。
本人には言えないけど、ぶっちゃけ気持ち悪ぃ。
でも顔に出てしまっていたのか、樹は指輪をはめた手をもう一度取ると、溶けたチョコを味わう様に指を舐め始めた。
「…ちょッ…!?」
何でこんな真似が出来んの?
神経疑う、マジで。
「とけちゃうねー」
「…うん、ってかもう当たり前だよね」
破裂しそうなくらいにバクバクしてる心臓を抑え、平然を装う。
だって、無意識なのか狙ったのかは分からないけど。
樹が指輪をはめたのは左手の薬指。
これはつまり…。
考えると、気を失いそうになってしまう。
指を舐められる事なんて、大した事ない。
私の頭の中は、愛していると言う証拠の指輪を左手の薬指にはめたこの行動が、はたして偶然なのか、それとも必然なのか。
それだけだった。
ちらりと樹を見ると、何事もなかった様にスイーツを食べている。
あぁ、もう嫌だ。
何が嫌って、天然である樹の言動には、何の意味もないって分かってるのに、それでも一喜一憂してしまう自分が一番嫌だ。
そんな私を見て平然としている樹を、私はニヤケ顔で睨み付けた。
最後まで読んで下さってありがとうございました。
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