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オルフェンズ

ここは人知れず暗殺者を育てる為の、マフィアお抱えの秘密の施設。

おや?どうやら暇を持て余しているらしい、暗殺者見習いの子供達と、世話役のシスターの物騒な会話が聞こえて来ます。

(ほのぼの/ギャグ)

---------


興味を持って下さったありがとうございます。少しでも読んで下さった方の心に残れば嬉しいです。


「もうすぐヒナマツリだな」


ここはアメリカのとある地域にある施設。

孤児を攫い、人知れず暗殺者として育て上げる機関である。

表向きは孤児院となっているが、裏にいるのはそれこそ裏社会の人間だ。


そんな施設の一室で、さも雛祭りを知っているかの様に呟いたジェイムを、日本生まれの那月なつきは白い目で振り返る。


言っているだけで雛祭りなど知らないだろうな、と確信させるのは、ジェイムの呟いた雛祭りの発音が那月の聞き慣れた発音と違っていたからだ。


「…雛祭りだろ」


溜め息混じりにきちんとした発音で答えてやると、後ろからルイズが口を挟んだ。


「ボク聞いた事ありますよ。あれですよね、自分の年齢の数だけ人を殺して、川に流すんでしたっけ?ちゃんとやらないと、金太郎にまさかりで真っ二つにされるとか」


「そんな訳ねーから、どんだけ物騒な習わしだよ。つーか色々混ざってるし、誰も殺さないから」


馬鹿らしそうに答えた那月の隣では、意外にも興味津々に自分の年齢を気にしているジェイムがおり、那月はジェイムの後頭部に平手打ちを入れる。


「違うっつーの、数えんな」


「あら、日本にはそんな素敵な風習があるの?」


「…?あ、シスター」


声のした方向に視線を動かすと、楽しそうな話にわくわくした様子の女、シスターが立っている。

シスターというのも、施設で暮らす子供達がそう呼んでいるだけで、誰も本名は知らない。


「ね、皆でやりましょ!何人殺せるか勝負しましょうよ!」


「勝負も何も、自分の年齢の数だけ殺すんですよね?明らかに一番年下のボクが一番少ないです」


「けッ、年なんか関係ねーよ」


「楽しそう!きっと思い出に残るわ!ねぇ、那月」


「…知るか。どんな思い出だよ、いらねぇよそんなトラウマ」


楽しそうに話す三人に溜め息を吐くと、那月は面倒くさそうに立ち上がる。


「そんなに暴れたいなら仕事したら?…ほら」


そう言いながらポケットの中から2枚の写真を取り出し、ゴミでも捨てる様に投げ付ける。


「あ?なんだよコレ」


「だから仕事」


投げ付けられた写真を見ながら問い掛けて来るジェイムに短く答えると、那月は自分も一枚の写真を取り出した。


「それぞれの暗殺ターゲット」


そう言うと、ルイズも弾かれた様に写真を手に取る。


「ボクこの写真のオジサン殺して良いんですか?」


「あら、仕事入ってたの?」


三人三様に反応を見せると、新しいオモチャを与えられた子供の様に立ち上がる。


「写真の裏に情報ありますねー 」


「あら本当、ルイズのは小規模マフィアの幹部だわ」


「俺のターゲットは成金のオバサンだな」


各々に写真の人物の情報を確認すると、併せて確認する様に那月を見る。


「マジで仕事かよ?最近暇だったじゃん」


「マジで仕事です」


そう言うと、那月はスタスタとドアに向かって歩き出す。


「私とルイズのターゲットは敵対マフィアの幹部らしーよ。ジェイムのターゲットはその幹部の女だって。ターゲット以外の誰も殺さず、ターゲットのみを始末しろってさ」


「一人しか殺せないんですか?」


残念そうに溜め息を吐いたルイズを振り返ると、那月は写真をヒラヒラと振って見せる。


「物は考え様」


「?」


不思議そうな三人の視線は那月に集まる。


「ボスにバレないように、ターゲット以外を何人殺せるか…、なんて勝負はどぉよ?」


そう言った瞬間。

つまらなそうにしていた2人の表情に変化が起きる。


「それナイスアイデアですね。それなら年齢の数しか殺せない勝負と違ってボクの勝ちです!」


「言うじゃねーか、泣き虫ルイズ」


「ジェイムは、やり過ぎてボスにバレるのが関の山って感じですかね」


既に火花を散らし始めたジェイムとルイズを無視すると、那月はシスターと一緒に部屋を出る。


「あの二人大丈夫かしら?」


「ほっとけ」


心配そうなシスターの背中を叩くと、那月は自分のターゲットの写真を握りしめた。


(本当はターゲット以外は殺すな、なんて言われてねぇし)


人間、少しくらい制限があった方がやる気が出るものである。

特にあの2人の場合、"バレないように"と言う一言を付け足さなければ、取り返しのつかない事態におちいる可能性が高い。


「さ、行こうシスター」


未だ心配そうに部屋の中を振り返るシスターの腕を掴むと、那月はそそくさとその場を立ち去った。


最後まで読んで下さってありがとうございました。

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