表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/32

私は生きたい②

よろしくお願いします


 ゆっくりと体を起こしお腹を触る。

 大丈夫、血はでてないわ。

 あの男に続いて脳筋にまで殺された。

 昨日とは違う私の未来の夢、何か意味がある気がする。


 ベッドから出て夢の内容をノートに書いていく。

 一つ気になったのは、脳筋が言っていた『彼女』の事だ。

 脳筋は夢の中では婚約者がいなかった。

 指に婚約者がいる者が付ける指輪をしてなかった。


 最初の夢では指輪をしていた。

 二度目の夢では指輪をしていないのに『彼女』と幸せになる、と言っていた。

 一体誰の事なのかしら?

 あの男と一緒に囲っていたあの令嬢の事かしらね?


 侍女が来たので、ノートを閉じて魔力錠の付いた箱に入れる。

 お父様からの誕生日プレゼントだ。

 夢で死んでしまったお父様を思いゆっくりと撫でた。


 いつも通りの日常を過ごし、今日も夢を見るのかと思いながら私は眠る。


 ああ、夢だ。

 また、未来の夢をみるのね。

 また、死んでしまうのかしら?

 いいえ、いいえ!これが未来だと言うのなら、しっかり見るのよ!

 お父様を助け、私も生きる為に!


 今までの夢との違いは魔法の授業だった。

 前の夢では、私と模擬戦をするのは仲間達の誰かだった。

 お互いに怪我をしないように注意しながら、魔法を使い合う。


 私があの男の婚約者に決まって王都に行くまでの3ヶ月、私はドラクル公爵家の世界最強の魔術師ヴァイオレット様に魔法を叩き込まれた。


 魔法なら女性も自分の身を守れるからと、わざわざ騎士団の立て直しに忙しい中3ヶ月も私の為に付きっきりで魔法を教えてくれた。


 王都に来てからもヴァイオレット様に教わった魔法の鍛錬は欠かした事が無い。

 私はまだ魔術師ではないけれど、『私』は魔術師になっていた。


 だから、手加減して仲間の令嬢達に魔法を教えていた。

 学園の教師は魔法使いで魔術師ではない。だから、『私』が教わる事が無い。


 でも、授業には出なければならないから、仲間達の魔法をみる事にしていた。

 令嬢達は『私』の教えで成績も上位になって、喜んでいた。


 はじまりは、先生の、あの子の実力を測ってくれないか?と言われた事だ。

 目の前に彼女は、魔術師ではないが先生より魔法の腕が上になったから、先生では実力が測れないとの事だった。


 『私』は快諾し、いつもあの男達といる彼女と模擬戦をする事になった。

 確かに魔術師に近い魔法使いだった。

 でも、まだまだ魔力操作が荒い。


 『私』は他の令嬢達にするように、手加減して戦い魔法を打ち合う。

 彼女の魔法を『私』の魔法で打ち消していき、隙ができたら反撃していく。

 彼女は避けきれずに体を水で濡らす。


 魔法属性は地、水、火、風、氷、雷、光、闇、特殊の属性がある。

 水で攻撃したのは、怪我をさせない為だ。

 ずぶ濡れになった彼女が悲鳴をあげる。


 その悲鳴を聞いてあの男達が走ってきた。

 彼女に声をかわるがわる声をかけている。

 そんな事をするよりタオルを持ってこさせるほうがいいんじゃないかしらね?


 「ドラゴナイツ侯爵令嬢!先程の嫌がらせはどうゆうお積もりですか。魔法を使って嫌がらせをするなんて、僕達魔法師団は許しませんよ!」


 「嫌がらせなどしていません。私と模擬戦をする令嬢達と同じ事をしています。それと、貴方はまだ魔法師団に所属していません。」


 「うぐぐぅ、しかし、水魔法でずぶ濡れにするなど嫌がらせ以外に何だと言うのですか?!」


 「水魔法以外では怪我をしてしまいます。しかし、模擬戦なのですから勝敗は着けなければいけません。怪我をしないで勝敗を着けるのに水魔法が一番有効です。」


 「彼女に謝るつもりは無いと?」


 「彼女に謝る必要がありません。」


 魔法師団長の息子の令息は、目を細めて『私』を見る。

 なんとなく、今回はこいつが敵だと思いましたわ。

 それにしても、魔術師の『私』が本気で嫌がらせをしたらこの程度の訳がないのにわからないのかしら?


 魔法師団には魔術師が殆どいない。

 自分が『私』より魔法が上とみているのが、なんとなく分かったわ。

 あの男達は令嬢を連れて勝手に授業を放棄して校舎に帰って行った。


 その後も、魔法授業の度に魔法師団長の令息は『私』に絡んで来ていた。

 3度目の授業で彼女と関わると、魔法師団長の令息がうるさいから『私』は彼女とはもう模擬戦をしないと、先生に言って、先生も了承した。


 それなのに、魔法師団長の令息は


 「なぜ、彼女と模擬戦をしないのですか?彼女は貴女との模擬戦を望んでいるというのに!」


 と、絡んで来た。

 『私』と仲間の令嬢達は、啞然としていた。

 模擬戦をしても、しなくても、嫌がらせになるならどうしようもない。


 「もう、彼の言ってる事はめちゃくちゃですわ。何より、魔術師であるシルヴィアが私達相手に本気をだされたら、一瞬で傷だらけですわ。」


 「魔法師団長の子息なのに、シルヴィアの魔法の腕がわからないなんて。それとも、婚約者より大事な彼女が怪我をしてもいいのかしら?」


 「二人共、私は誰も傷付けたくありませんわ。それにもう、授業で絡まれる事はありませんわ。彼女が魔術師になったのですから。校内で魔術師同士の模擬戦は禁止されてますもの。」


 彼女は少し前に魔術師になった。

 魔法師団は彼女の勧誘に必死になっていた。

 騎士団同様、王都の魔法師団は強くない。

 魔法師団の魔術師はいるには、いるが若手がいない。


 そもそも、魔術師になれる魔法使いは少ない。

 魔力操作と魔力量が高ければ魔術師には平民だろうとなれる。

 でも、才能や地味な努力を続けられる者は少ない。


 私も何度か、今日はやらなくていいかしら、と疲れている時はしたくない時もあったわ。

 その度、ヴァイオレット様の顔が浮かんで、頑張れましたわ。


 「彼女の事は、婚約者がいる殿下達に囲まれていて正直気に入りませんが、魔術師になれる程の努力は素直に認めますわ。」


 「私もです。学園に来てから私もシルヴィア様を見習って努力してはいますが、魔術師への道は遠いですわ。」


 「皆様も、3年間で成長致しましたわ。この調子で鍛錬していけば、魔術師に成れますわ。魔術師は一人でも多いに越したことはありません。スタンビート、他国との戦争、魔物の森を越えての大移動、どれを取っても民の生活を脅かす物です。」


 「だから、ヴァイオレット様は魔法属性の多さではなく、魔力量と魔力操作の高い方が魔術師相応しいとおしゃられているのですね。」


 「魔法属性が幾ら多くても、魔力量が低ければ長時間戦えませんし、魔力操作が低ければ殲滅力が低くなりますものね。」


 「その通りです。今の魔法属性ご多い方が魔術師に相応しいとされているのは、隣国の魔法大国の影響です。陛下がドラクル公爵家憎しでヴァイオレット様の意見と反対の魔法大国の意見に賛成し、魔法師団に広めさせた物です。」


 この夢でもやっぱり陛下は公爵家憎しに変わらないみたいですね。

 魔法師団にとっても大々的に広めた為、ヴァイオレット様は邪魔でしかない。

 ヴァイオレット様こそが世界一の魔術師であるにも関わらず、愚かな事はですわね。


 魔法師団長の令息には極力会わないようして、『私』は卒業パーティの日まで過ごした。

 卒業パーティは危ないわ。

 前の夢だって、卒業パーティで『私』は捕まり地下牢に入れられるのだから。


 「きゃあ!なんで……これは……魔力抑制……陣!魔法……師団が……犯罪…を……犯した……魔術師に……使う…モノ…なのに…なんで……私に……!」


 卒業パーティの会場に入った直後に『私』は魔力を抑制された。

 魔力を他人が抑制するには、その倍の魔力が必要になる。

 代々の魔術師最強の倍の魔力など誰にもない。

 だから、数人の魔法使い、または魔術師が陣の形をした魔道具を使い魔力を抑制する。


 体の中を無理矢理掻き混ぜられて、痛みと不快感と重圧で『私』は息も絶え絶えになり地面に伏せる。


 「シルヴィア・ドラゴナイツ侯爵令嬢、貴女には魔術師殺害未遂の容疑がかかっています。故に、魔力抑制陣を使用し魔術師である貴方を拘束します。」


 『私』は反論しよとしているが、魔力抑制陣のせいで声が出ない。

 魔力抑制錠を嵌められ引きずられて地下牢に入れられた。


 地下牢に入れられてもなお、魔力抑制錠は外されなかった。

 荒い呼吸を繰り返し副作用に必死で耐えるている。暫くすると、魔法師団長の令息が地下牢に来た。


 「私がこのような場所に来てあげたのですから頭を上げたらどうです?シルヴィア・ドラゴナイツ。」


 髪をかきあげながら、そんな非道な事を言う。

 彼の様な男をリタはナルシストと呼んでいたわね。ナルシストは荒い呼吸を繰り返す『私』に向かって


 「ふふふ、まるで犬ですね。貴女にはその格好が相応しいですね。ああ、そうでした。貴女の罪状と処罰の説明に態々僕自ら来てあげたのでした。」


 肩を竦めながら首を振るナルシスト、私には彼のいい所が何一つわからないわ。

 只々気持ち悪いわね彼。


 「貴女には、私の元婚約者と共謀して私の愛する『彼女』を殺そうとした魔術師殺害未遂で死罪になります。貴女が無実なのはわかっていますよちゃんと。」


 このナルシスト、無実の罪で弁明もさせず『私』を殺そうと言うの?!

 出来る訳がないわ、お父様も黙って……は……。

 まさか!もうお父様は!


 「侯爵は死にましたよ。王太子殿下に最後まで逆らっていましたしね。当然の報いです。貴女を殺す事を認めれば家には手を出さないと、言ったのに「娘の無実を知っいるのに、見殺しにする親がいるか!クソガキ共!」なんて言うから王族侮辱罪で斬り捨てられたよ。ふふふ。」


 お父様はまた『私』の為に死んでしまったのですね。

 なぜ、人を殺しておいてこのナルシストは笑っているのでしょう?

 理解出来ないわ。


 「貴女を殺すのは、この!ぼくを!差し置いて!魔術師に!なったからですよ!!『彼女』の様に僕を愛している訳でもないくせに魔術師になるなんて!許される訳がないでしょう!」


 言っている事が支離滅裂だ。

 このナルシストを『彼女』様に愛していたら魔術師になってもいい?

 魔術師は自分の努力以外になる方法なんてない!

 『私』も私も、国の為に努力をしてきたんですわ!

 このナルシストを愛する為なんかじゃ絶対にないですわ!


 「ふふ……なら……ジーク……フリート…様…も……貴方…を……愛して……いるの……ですね……?」


 「奴の名前を出すなぁ〜〜〜!!」


 「私…達…の……世代…で…最も……優秀…な……方は…ジーク…フリート……様…ですわ……!ジーク……フリート…様……この…国を……お願い…します!」


 「奴の名前を出すなぁと言っているぅ〜〜!」


 ナルシストは叫声を出しながら『私』のいるのいる牢に4発の火魔法を放った。

 あれ程自分が優秀と言っていたのに、魔法はたったの4発しか撃てないのねこのナルシスト。

 『私』は燃えながら笑っていた。


 「その…程度…なのね……優秀な……無能……様……。」


 「黙れぇぇ〜〜!」


 更に、4発の火魔法を放つナルシスト。

 『私』は炎の中で死ぬまでナルシストを静かに、強い眼差しで見ていた。


 起きてノートを取り出しノートに夢の事を書いていく。

 ナルシストは要注意だわ。

 私がいつ、魔術師になるかはわからないけどこのまま鍛錬を続けていけば、必ず私は魔術師になる。

 魔術師になった瞬間、ナルシストから目を付けられるから筈ね。


 今日も夢をみる。

 でも、前の夢達とは最初から違った。

 何故か、あの男達が囲っている令嬢と『私』はよく出会い、よく話をする様になっていた。


 周りの仲間の令嬢達とも、彼女は仲良くなっていた。

 彼女は元々は孤児で男爵に血は繋がっていないが、気に入られて養女なったそうだ。


 将来は、

 「男爵家の嫡男のお義兄様の仕事を手伝い、そのお金で孤児院を経営したい。」

 と笑顔で話していた。

 悪い子では、ないのだわこの子。

 ただあの男達に気に入られているだけで。


 色々な事を、厳しく教えて欲しいと言われ『私』達は彼女に厳しく接していた。

 勿論、ちゃんと出来た時は褒めてもいたわ。

 私も復習になったし、領地経営の勉強にもなったから初めて楽しく夢を見ていたわ。


 卒業パーティも無事に終わって、王城の自分の部屋に付いて中に入った時、いきなり口を塞がれた。

 『私』の口を塞いだ男は、


 「お前は『彼女』に辛く当たっていて見るに耐えない。学園を卒業した後も『彼女』に非道を働くかも知れない。『彼女』の為に後顧の憂いは俺が断つ。」


 そう言い、『私』の喉を斬り裂いた。

 脳筋達の言う『彼女』とは、あの令嬢の事だったのね!

 でもおかしいわ。

 厳しく接してはいても、彼女は『私』達の友人になったのよ!


 卒業パーティの時だって、

 「自信を持ってお義兄様の手伝いが出来るのは、皆様のお陰ですありがとうございました。」

 と泣いて喜んでいたのに!


 「学園最後の卒業パーティでも泣かせるなんて、とこまで『彼女』を馬鹿にしている!」


 意味がわからない。

 彼女の為にしてきた事で、『私』は殺されるの?

 なにがどうなっているの?

 わからない、わからない、わからない。

 そして『私』は死んだ。


 起きた時、最悪な気分だった。

 重い体を動かしノートに夢の事を書いていく。

 『私』のなにがいけなかったのでしょう?

 厳しくも優しくしていた筈なのに?


 今日はの王妃教育は散々だった。

 何故?何故?と頭から『私』が殺された理由がわからない。

 グルグルと考えている内に私は眠りに落ちた。


 また彼女と『私』は仲良くなっていた。

 ただ、今回の彼女は孤児院の経営ではなく、

 「色々な世界が見たいので、冒険者になりたい。」

 と、言っていた。


 『私』からは魔法を、リタからは短剣術を、仲間達からは交渉術や他国の事を教わっていたし学園の休日は冒険者ギルドに行き冒険者の仕事をしていた。


 ある日、彼女は目立つ怪我をして学園に登校した。

 それを見た『私』は彼女の頬を叩いた。


 「貴方はまだ、貴族なのですよ!もし、貴女に好きな殿方が出来て婚約をしようとした時、この怪我を理由に出来なくなってしまうかもしれないのよ!もっと自分を大切にしなさい!」


 彼女を心配しての事だった。

 仲間達も頷き彼女の為に厳しい言葉を掛ける。

 彼女も謝り、『私』達は笑顔で今回はどんな冒険をしたのかお茶会をしながら聞いた。

 怪我をした時の事を聞いて私も、もし魔物と戦う事があったら気を付けようと思ったわ。


 卒業パーティ間近になったある日、王城に帰る馬車が急に止まった。

 騎士によると、冒険者が道に飛び出したらしい。

 なんだか嫌な予感がしますわ。


 「シルヴィア・ドラゴナイツ侯爵令嬢、『彼女』を助けて下さい。『彼女』が魔物に囲まれていて俺が助けを呼ぶために、王都に戻ってきたのですが、ギルドは自己責任と言って動いてくれません!他の冒険者を雇うのも俺の様な新人には無理です!どうか、『彼女』を助けて下さい!」


 『彼女』とは彼女の事だろうとすぐに思いましたわ。

 『私』は騎士達にすぐに助けに行くように命じましたわ。

 騎士達も『私』の友人の貴族令嬢を助ける為なら問題ない、と動いてくれた。


 でも、護衛対象の『私』を放っては行けないし代わりを手配していては間に合わないと、『私』も森に連れて行った。

 オカシイ、私は次期王太子妃だ。森に連れて行くなんてありえない。


 何故か『私』は気にもしないで騎士達と森に向かった。

 森に付いたら魔物達が群れでいた。

 騎士達は戦い『私』も魔法で掩護する為に外に出た時、冒険者が御者を斬り捨てて馬車を奪った。


 「『彼女』の為にここで死ね!」


 そう言い捨てて冒険者は逃げていく。

 騎士達は一人、また一人と死んでいき最後には『私』も死んだ。


 彼女の為に死ね?

 『私』が何をしたと言うの?

 なにがなんだかわからない。

 あの冒険者は何故あんな事をしたのでしょう?

 混乱しながらもノートに夢の事を書いていく。

 涙を流しながら。


 冒険者には気を付けようと心に誓いつつ、王都の近辺に何故魔物の群れがいたのか考えてながら一日を過ごした。


 また彼女と仲良くなっている夢だっただった。

 『私』は彼女を信じているが、私は彼女を疑って見ている。

 今まで『私』を殺して来たあの男達は、全員『彼女』の為に『私』を殺してきたのだから。


 私がどれだけ『彼女』を見ていても、『私』が見ていない場面は私も見れない、なにか方法はないかしらね。


 今回の『彼女』は、魔道具に興味があるようだった。

 魔道具の作り方は一応、学園の授業で教わる。

 もっと詳しく知りたければ学園のクラブ活動の「魔道具研究会」に入らなければならない。


 『彼女』は男爵家の令嬢だから、自費出費の「魔道具研究会」には経済的に入れなかったが、『私』達が少しづつ出し合い「魔道具研究会」に入る事が出来た。


 『彼女』は毎回自分の作った生活向上型の魔道具をパトロンの様になっている『私』達に見せに来ていた。

 『私』達は、何故このような魔道具を作ったのかを聞き平民の事を勉強する様になっていた。


 私も勉強になったわ。

 王城で暮らしていると平民の暮らしぶりなんてわからないもの。

 『彼女』が作った魔道具をどのように売り出すか等を『私』達は真剣に考えていた。


 結論は、王都に既にある商会では喰い物にされる可能性があるから、ドラクル公爵家を頼る、という物だった。

 リタ達がドラクル公爵家に話を通して、『彼女』に会う段取りを付けてくれた。

 『私』はドラクル公爵家には接触出来ないから、『彼女』の魔道具を監修していた。


 もっと小さく出来ないか?

 逆にもっと大きく出来ないか?等、注文を付けて作り直させている。

 ドラクル公爵家に話を通すのだから、中途半端は許されない。

 『私』達は必死になっている。

 国中が変わるかも知れない事に関わっていると理解していたからね。


 その日も『彼女』と別れ馬車に向かう途中で『私』は誘拐された。

 誘拐したのはあの男の側近候補の商会の息子だった。


 「『彼女』の画期的な魔道具を権力で奪おうとしているのはしってるよ?そんな事させる訳ないじゃん。二度と『彼女』に会えないように他国に捨ててあげるよハハッ。」


 はぁ〜、この男は何を言っているかしら。

 ドラクル公爵家に話を通すのだから『私』が関われる訳が、ないじゃない。

 呆れ果てるわね。『私』は薬を盛られて動けない。


 何故か、『私』を探しにくる筈の騎士団に魔法師団も来ない。

 国内最大の商会でもないのに国境は素通りした。

 なにもかもが冒険者の時と同じ様にオカシイわ。

 何日もかけて他国の辺境の村に捨てられた。


 『私』は取り乱さずに、村で生活して資金を貯めて村から街に、街から都市に移動した。

 王妃教育のお蔭で、この国の言葉も話せるし書類仕事もなんとかなっていたわ。

 書類仕事は平民の中でも高給取りだと『彼女』が言っていた為、『私』はそれを仕事に選んでいたの。


 国境まであと少しの所で、国交が断絶した。

 理由はこの国で疫病が流行したの。

 『私』は国境の近くの街で働いて過ごす内に疫病にかかってしまった。

 薬は幾ら高給取りでも貴族ではない『私』では、高すぎて買えなかった。


 『私』は他国で祖国にも帰れず、誰にも看取られず、最後まで苦しみ一人きりで死んでいった。

☆の評価を貰えるとやる気に繋がります


もしよかったら評価して下さい


読んで下さりありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ