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成長と布石

よろしくお願いします


 やっとちゃんと耳が聴こえる様になったら、産まれた公爵家の事を多分両親と祖母が話していた。

 聞いてる内に解った事は、乙女ゲームに何故この公爵家が名前さえ登場しないかだ。

 濃すぎる、濃すぎるよ公爵家!

 公爵家だけでゲームが二本作れそうだよ!


 初代から父親である五代目まで、王家と喧嘩しかしてないじゃん!

 ゲームやってて「何でこうなったの?」って思う箇所が何個かあって、結局解らなかった箇所は全部公爵家が絡んでる。

 俺の年記が完璧じゃ無かった理由は公爵家を登場させなかったからだ。


 ゲームの攻略対象は王太子、騎士団長の息子、魔法師団長の息子、男爵令息、暗殺者、冒険者の若きホープ、そこそこ大きな商会の息子だ。

 努力だけで結婚出来たのは、全員国の貴族から無能だと思われていたからなんだな!

 ゲームが現実となると世知辛いな!


 無能と思われている王太子が婚約破棄して、婚約者を実質私刑に出来たのはゲームだからだろう。

 そして、この世界で私刑になり続けている彼女は本来周りの貴族が断固として止める筈なのに、元の世界の影響力でゲーム通りアッサリと殺される。

 世界の影響力は想像を超えて厄介なモノだと理解も出来た。


 彼女は王太子の婚約者なのに全てのルートで殺される。

 王太子、騎士団長の息子、魔法師団の息子、男爵令息のルートでは犯罪者として。

 暗殺者、冒険者のホープ、商会の息子のルートはヒロインを権力で害する可能性があるとして暗殺、魔物に襲わせる、誘拐して他国に捨てられ病死。


 暗殺以外は普通に不可能だ。

 犯罪者にするには有能な貴族が全力で止めるし、侯爵令嬢が護衛も付けずに魔物がいる場所にはいかないし、商会の息子程度では誘拐した後国境を越えられないし、そもそも誘拐出来るか怪しい。


 更に、今の彼女は知力も武力も女神様に与えられている。

 それでも死ぬなら国が滅びる魔物が多数現れるし、国が滅びる疫病が蔓延する。

 どっちにしても国が幾つか滅びる。

 恋愛してキャッキャウフフでハッピーエンドはありえない。

 多分、女神様がやり直してなければそうなっているからやり直している。


 王太子、騎士団長の息子、魔法師団長の息子、男爵令息とは学校が始まるまで会わない方がいいだろう。

 王家と王家に忠誠心を持つ無能だ。暗殺者はゲームで過去の事を喋らないから何処の出身かわかない。

 商会は潰せるけど王都にある商会だから面倒くさい。最初の狙いは冒険者のホープだな。


 冒険者のホープを潰すには冒険者ギルドが邪魔だな。

 そもそも冒険者ギルドは必要ない。

 よく小説やゲームでは貧しい者の受け皿と言われるが、国から見たら貧しい者に仕事も斡旋出来ないという恥だ。

 公爵家には魔の森があるから魔物討伐専門の騎士団を作れば冒険者は必要ないどころか邪魔でしかない。


 よし、とりあえず冒険者を潰す為に冒険者ギルドの事を調べながら魔力量と魔力操作を上げるぞ!

 ステータスが見られないから感覚や工夫で鍛えるしかない。

 魔力量を増やすには放出すればいいから楽だけど魔力操作はどうするかな?


 産まれて半年がたった。

 もう、おっぱいと下の世話に羞恥心は無くなったよ……。

 魔力量も順調に増えて弊害が出てきた。

 魔力の放出に時間がかかり過ぎる。

 魔力操作も上がり千切れる魔力も増えたけど、魔力量の方が増えるのが早い。

 試行錯誤の日々だ。


 一歳になった。

 のったりのったり歩く後には俺の専属ベテラン騎士とおばちゃんとおばあちゃんの間の乳母が付いてくる。

 俺は愛し子だからか庭にまだ出られない。

 今日は曾祖母が魔の森の近くにある別邸から俺に会いに来てくれるらしい。

 俺が魔力操作で遊んでいると思っている父親が、もっと魔力操作で遊べる様に呼び寄せてくれた。


 両親は二十三歳、祖父母は四十三歳、曾祖父母は六十六歳、結婚と出産は公爵家は周りの貴族より少し遅い。

 普通の貴族は学校卒業後すぐに婚約者と結婚して子供を作るが、公爵家は王家と子供が被らいように少し遅く結婚する為だ。

 なのに、必ず王太子と同じ年に三代目から産まれている。王家の執念か、呪いか。


 曾祖父母は四十代にしか見えない。

 童顔?美魔女?貴族だから?下手したら祖父母の姉に見える。曾祖父も見た目は同じ位に若々しいらしい。

 貴族凄いな!


 「この子がシルバーブレッドね?凄い『白銀』ね。それに、魔力量も多いわね?魔力操作が追いついてないから少し危ないわね。」


 驚いた、普通はちょっと見ただけでは魔力量は兎に角魔力操作力は解らない。

 流石は魔術師の頂点と言われるだけはある。魔法師団に所属している者のほぼ全ては魔法使いと呼ばれる。

 魔法使いと魔術師には圧倒的に差がある。

 その頂点がこの人だ。

 娘が魔物に殺されない様に鍛えた王妹の愛は凄まじいな。


 俺はとりあえず「あいっ!」と手を上げて挨拶をしておく。

 曾祖母のヴァイオレットは微笑みながら俺の頭を撫でる。

 俺は何故か頭を触られるのが嫌いだ。

 家族以外が触ろうとすると、無意識に魔力弾を放ってしまう。

 犠牲者は乳母、リリー、エドワード、専属ベテラン騎士だ。

 専属ベテラン騎士だけは魔力弾に耐えながら撫でていたが。


 「いいかい?魔力を千切って動かせるのは一つじゃいの。一つ、二つ、三つと増やせるわ。増やした分だけ連続で魔術を使えるの。十個以上動かせたら魔術師と呼ばれるわ。まぁ、今はエステリーゼの母国とは違う隣国のせいで魔力量や魔力操作より、扱える魔法属性が多い方が魔術師に相応しい。何て言われてるけれどね。」


 なるほど!一つだけしかできないと思っていた!二つ三つか!

 それなら圧倒的に早く魔力放出出来る!というか、最後の魔法属性の話の時、美しい曾祖母が美しい鬼になった。

 まじで怖い。

 多分、母親の教えを侮辱されていると思っているんだな。隣国は魔法大国だからな。


 でも、これは使えるの!

 隣国の影響で魔法属性が少ない者は使えないと言う風潮があるなら、落ちこぼれと言われる者を大量にこの公爵領に呼べる!

 戦力は人の数と質だ。

 落ちこぼれを大量に雇うと言えばこぞって公爵領に来るだろう。

 それを、曾祖母が鍛え上げれば魔物討伐専門騎士団の戦力は大幅に高まる!

 冒険者ギルド潰しが一歩前進だ!


 俺はルンルン気分で、魔力を千切る。

 4つまでは魔力を均等に操れたが、5つ目で前の4つも5つ目も均等に操れなくなって体の適当な場所から魔力弾が放出された。

 放出されてすぐ、専属ベテラン騎士が魔力弾を自分からぶつかりに行って受け止めた!

 思わず「おぉ〜」と声を上げて拍手した。

 でもこれに一番驚いたのは曾祖母だった。


 「愛し子が素晴らしい才能を持っているのは知っているけど、まだ一歳になったばかりなのにこちらの話を完璧に理解して、しかも魔力も4つは完璧に操っていたわ!理解力、実行力、魔力の質どれを取っても、もう1人前の魔法使いだわ!いずれこの子は私から魔術師の頂点の称号を受け継いでくれるわ!こんなに嬉しい事は夫と結婚した時と子供が産まれた時以来だわ!」


 美魔女が俺を抱っこしてクルクル回る、回る、回る、もういいんじゃない!

 目が回って気持ち悪い〜。

 グッタリしだした俺に気付いて両親が止めてくれた。

 この美魔女魔術オタクかな?

 それに一歳とはいえ子供を抱っこして勢いよく回れる六十六歳、かなり鍛えてるな。


 「お義母様、年を考えて下さい。私よりもお年が上なのですから。」


 「あら?何を言ってるのエステリーゼ?私は魔術師なのよ?これぐらい出来て当然でしょ?今の魔法師団は遠距離から魔法攻撃すればいい!だから体を鍛える必要なんて無い!って馬鹿な事を言っているけれどね?陣の展開は早い方がいいに決まっているし、撤退戦で足が遅く体力の無い魔術師なんて恰好の的よ?魔術師を守る為に殿の騎士団と冒険者はどんどん無駄死にしていくわ!魔術師とは、1に魔力操作、2に魔力量、3に体力、4に接近戦の為に杖術、5に魔法属性、なのよ?貴女にも教えた筈よ!」


 凄まじい覇気が曾祖母から放たれる。

 威圧に魔力ものっている。

 魔圧と言ってもいいかも知れない。

 これはどうやるんだ?俺はまだ右手の平からしか魔力を放出出来ない。

 放出した魔力を操り、体に巻き付けた後全力で曾祖母に放つ!

 喰らえ魔圧!


 「ハァッ!甘いわよシルバーブレッド!魔圧を放つなら巻き付けた魔力を圧縮しなさい!そして方向性を確り定めて撃ちなさい!こうするのよ!」


 ドンッと物理的に衝撃が来た気がした。

 俺は負けずに言われた通り圧縮し方向性を持たせて放つ!

 魔圧と魔圧がぶつかりあった。

 俺の方が当然弱い、ヤバイと思った瞬間、世界が黒く染まった。


 「シルバーブレッド!お祖母様やり過ぎです!貴女は魔術だけなら世界最強なのですよ!なにをしているのですか!」


 「アルフレッド。貴方はまだまだね。シルバーブレッドは針の先程度だったけど私の体に魔圧をぶつけたわよ。面では勝てないと、すぐに一点集中に切り替えたのよ。手を抜く方が失礼よ!」


 曾祖母はあまり魔の森の別邸を離れられないと、すぐに帰ってしまった。

 俺はこの日から、魔力放出の仕方を変える事にした。

 曾祖母は全身から魔力を放出していたが、俺は手の平からしか出来ない。

 魔力操作と同じで出来ないと思うから出来ない。きっとやり方がある。


 手の平の放出口を削るように大きくしていく。

 間違っているか、あっているか、解らないけど放出口は徐々に広がった。

 魔力操作も4つを出来るだけ速く動かす様にして自分なりに難易度を上げた。


 魔圧は面でも点でも少しでも曾祖母に近付ける様に形を変えてみたり、放つ勢いを出来るだけ強くしたり、厚くしたり、兎に角考え付く限りの事をした。


 3歳になった。

 歩くのはしっかりしてきたけど、走ると転ぶ。

 喋りはまだまだだ、舌っ足らずで沢山喋ると顎が疲れる。

 放出口は右肩と右足の膝まで広がった。

 右足の爪先までいったら今度は左足だ。魔力操作は二年かけて5つになった。6つはまだ不安定だ。

 上手くいくときもあるし、魔力弾を撃ってしまう時もある。

 毎回専属ベテラン騎士のシールが受け止めてくれている。


 両親は忙しいだろうに必ず一日一回は俺の話を聞きにくる。

 前世では、長男信仰の両親だったから愛されていると実感出来て凄く嬉しい!

 前世では、仕事をしてなかった。

 宝くじが当たって貯金は十億を超えていたからだ。

 宝くじが当たった時、両親に長男に全部渡せと言われ縁を切った。

 妹には2億渡して両親から逃した。あっちで幸せだといいが。


 近頃父上が執務室に缶詰になっている。

 魔の森が活性化しているらしい。

 守りを厚くしてやり過ごすのかな?

 と思ったら、曾祖父母、祖父母、両親、8割の騎士団員、公爵領にいるほぼ全ての冒険者、全員で出撃した!

 魔の森が活性化したら魔の森の中で戦う事で、魔物と一緒に木も吹き飛ばして一気に領土を増やすそうだ。

 今回の活性化で領土は伯爵以上侯爵以下の大きさなるそうだ。


 やっと5歳になった。

 今日、初めて屋敷こ外に出られる。

 ゲームでは、ステータスが見られたが現実になった今は見られなかった。

 理由は、神殿でお祈りしてないからだとさっき父上に教えて貰った。

 ステータスは、HP、MP、攻撃力などは見られない。

 スキル、称号、レベルだけが見られる。

 そしてスキルのオン、オフの切り替えが出来る。


 俺は今まで、魔力操作を自動でオンにしている状態だ。

 魔力操作をオフにてスキルに頼らない状態も鍛えれば、スキルをオンにした時にスキルの恩恵を最大限獲られると考えている。

 まぁ今は、初めての外だ!街の様子や改善点等をしっかり見ないとな!


 「シルバー、貴方は私の膝の上よ。」


 初めての馬車に乗った直後、母上に膝の上に乗せられた。


 「椅子に座っちゃ駄目なの?」


 馬車の乗りごこちが気になるんだけど?


 「シルバー、絶対に醉うしお尻が痛くなるよ。大人しくエリーの膝の上にいなさい。」


 酔うのか。

 前世では乗り物に強かったけど今はどうだろう?お尻が痛くなるって事は椅子が硬いのかな?改善のポイントだな。


 うん、酔ったよ。

 街の様子なんて見てる余裕全く無い。

 道が悪いのか、馬車が悪いのか、母上の膝の上でトランポリンの様に跳ねたよ。

 母上がしっかり抱いてくれたから膝の上に居られたけど、椅子に座ってたらどっかに飛んでいってたな。

 母上も父上もお祖母様も微妙に跳ねてる気がする。

 絶対に改善する!シートベルトは作れるか?


 気持ち悪さに耐えていたら


 「シルバー着いたよ。ここがユナ様の神殿だよ。」


 前世の教会には似ていない正しく神殿があった。

 そこそこ大きいが公爵領にある神殿にしては小さいと感じる。

 何故か神殿を見ていたらムカムカしてきた。

 何故だ?


 「相変わらず、神殿は腐ってるのね。ムカムカするわ。」


 お祖母様が吐き捨てる様に言った。


 「お祖母様、お祖母様もムカムカしますか?入口にいる、あの太った人を見てると全力で魔力弾を撃ちたくなります!」


 「そうね、私もシルバーと一緒であの大司祭を見ると殺意が湧くわ!神殿の神官や司祭達が腐っているから、私達愛し子はユナ様の感情を受け取ってムカムカするのよ。でも、愛し子は少ないから神殿側は言い掛かりだ!と言うのよ!忌々しい!」


 神殿も改善しないとな!

 父上がデブ大司祭と話をしてる間に周りをみる。

 大通りは馬車が二台すれ違うのがやっとで、運転が下手なら馬車がぶつかりそうだ。

 歩道もガードレールもない。

 信号の代わりもないから十字路が危険だ。

 家と家との間もギリギリで火事になった時の危険は凄そうだな。

 家も石造りでは無く、魔の森の木材で作った木造だ。


 改善するには別の場所に一から領都を作って人が少なくなった後じゃないと無理だな。

 それに領都は竜の道から近すぎる。

 ここは侯爵領との貿易と竜の道の防衛に専念する都市にするべきだな。

 今から作り直すのは無駄に金が掛かり過ぎる。


 「あの大司祭は相変わらずだな!こちらには母上がいるのだから、腐っている事など隠せないと言うのに!」


 改善点を考えているといつになく怒っている父上が帰って来た。


 「いつもの事ですよエド、ユナ様にしっかりお祈りして早く帰りましょう。」


 そう言うと、母上は俺の手を引いて神殿に入った。

 中に入ると、悪趣味な程ギラギラしていた。

 こんな所で祀られるのは嫌だな。

 ユナ様がキレるのもよく解る。

 ユナ様の金像にお祈りをすると世界が『白銀』に染まった。


 目を開けると転生する時の空間に居た。


 「ようこそ、でしょうか?おかえりなさい、でしょうか?5歳の誕生日おめでとうございますシルバーブレッド。」


 振り返るとユナ様がいた。


 「久しぶりだなユナ様。祝の言葉ありがとう。」


 「はい、お久しぶりです。ようやくスタートラインに着きました。魔力量、魔力操作共に順調ですね。では、彼女に会うまでの段取りを話しましょう。」


 転生する時はゆっくりしていたが、ユナ様は急いでいるようだ。

 挨拶もそこそこ本題に入った。


 「半年後に貴方の誕生日パーティがあります。そこに、ドラクル公爵家の盟友達が集まります。普段は王家を刺激しない為に集まりませんが、愛し子の5歳の誕生日という慶事を祝う名目で堂々と集まれます。」


 「なるほど、日本で言う所の七五三で知り合いが集まる様な物か。」


 「そうです。彼女は竜の道の反対側のドラゴナイツ侯爵家の令嬢ですから必ず参加します。そのパーティで私の力を使い二人を婚約させます。」


 ドラゴナイツ侯爵家はドラクル公爵家が出来るまで、竜の道からドラゴンが出て来ない様にする辺境伯だった。

 初代が倒したドラゴンに辺境伯騎士団が壊滅寸前まで殺された時、初代が来てドラゴンを討伐してくれた事を今でも覚えていて代々当主同士が盟友だ。


 「婚約させるってどうやるんだ?5歳とはいえ、もう王太子の婚約者候補だろ彼女。」


 ゲームでは7歳で婚約していた。

 他の貴族よりかなり早い、多分産まれた時から王家は婚約者にするつもりだった筈だ。

 ドラクル公爵家とドラゴナイツ侯爵家を引き離すために。


 「それは、秘密です。教えてしまうと貴方の影響力で失敗する可能性が出てくるからです。あぁ、もう時間ですね。」


 やはり急いでいた。

 ここに呼ぶにも力を使うのだろう。

 なら、言うことを言わないと!


 「神殿が邪魔なら俺が公爵領の神殿だけでも潰すがどうする!」


 ぼやけていく視界の中、確かに「叩き潰して下さい!!!」と聞こえた。


 お祈りをしっかりしてステータスも見れる事を確認して、すぐに皆は神殿を出た。

 外に出ると、冒険者らしき人が通行人に絡んでいた。


 「俺達冒険者がいるから、お前らは安心して暮らせるんだろうが!そんな俺達にぶつかって謝るだけか?誠意を見せろよ!誠意を!」


 うん、冒険者はクズの集まりだな。

 この領を守っているのは、騎士団と領主の父上だ。

 フザケンナ!俺は5つの魔力弾を冒険者に放つ!狙いは股間だ!

 股間以外の場所だと耐えられる可能性がある、シールは普通に耐えるからな!


 クズ冒険者は、声も出せずに気絶した。

 父上が冒険者を恐喝で牢にいれるように指示をだしている間に俺は馬車いれられた。


 「シルバー、イキナリ攻撃してはいけません!それは悪い事です!」


 母上がメッチャ怒ってる!初めて見たよこんな母上。


 「でも、母上。この領を守っているのは騎士団と領主である父上です。冒険者は依頼されているから魔物と戦っています。依頼がなければ戦いません。」


 母上に反論していると、父上が馬車に入って来て俺を膝の上に乗せた。


 「冒険者は確かに依頼で戦っているけど、故郷を守ろうとしている者もいるんだよ?」


 父上が言い聞かせるように俺を諭す。

 俺はこの時初めて気付いた。父上達は冒険者が存在している事を恥ていないのだ。

 だから、冒険者は粗暴だけど頼りになると思っている。

 認識を改めさせないとマズイ!


 「父上、冒険者ギルドに賠償請求はするのですか?」


 父上は目を丸くする。

 いや、父上だけじゃない。母上もお祖母様も目を丸くする。

 これはマズイ!マズすぎる!冒険者ギルド潰しの最大の障害は父上達だ!気付くのが遅れた事が悔やまれる!


 「父上、冒険者ギルドは国を持たない国、として各国に独立独歩を許されています。だから、冒険者は国境をギルドカードで自由に行き来できます。なら、冒険者が問題を起こしたら冒険者ギルドが責任を取らないといけません。じゃないと、冒険者ギルドの存在意義がありません。」


 父上達は考え込んでしまった。

 やがて、父上は首を振って俺にそれは無理だと言った。


 「シルバー、それは無理だよ。冒険者は自己責任、が当たり前なんだ。犯罪を犯しても自己責任、冒険者ギルドに賠償請求は出来ないし、賠償請求したらこの領から冒険者ギルドを撤退させてしまう。そうなったら困るのはこの領だ。普通の国の様にはいかない。」


 「父上は恥ずかしく無いんですか?冒険者は貧民の受け皿、なんて言われてますが、冒険者ギルドが領地にあると言う事は貧民に仕事の斡旋も出来ない無能と言う事です。冒険者は領の恥です。」


 父上は目を丸くした後、顔を赤くした。

 これは怒ってるな。

 友人が冒険者にいるのか?父上が口を開く寸前に


 「落ち着きなさい、アルフレッド。今まで、冒険者達がいる事が当たり前だったけれど、シルバーの言う事も最もです。貧民に仕事を与えられない無能ですか。耳が痛いわね。元王女として、元公爵家当主の妻として。」


 「だから、冒険者が領民に対して恫喝していることが許せなかったのね。シルバー、ゴメンさない。貴方が深く考えずに攻撃したと思って訳も聞かずに叱ってしまったわ。」


 お祖母様と母上の言葉聞いて、父上の顔色も戻った。

 でも、これ以上父上を説得するのは無理だな。冒険者ギルドの実態を調べる必要がある。

 ここは、お祖父様を頼ろうかな?お祖父様は書類仕事と調べ物のプロだし。


 気不味くなった馬車から脱出して、お祖父様がいつもいる図書館に突撃した。

 お祖父様は俺が産まれた少し前に、暗殺者に襲われた母上を守って左足が動かなくなって以来図書館に籠もって公爵家の影を統括して、情報収集にせいを出している。

 理由は暗殺者の依頼人が解らなかったからだ。王家ではないらしい。


 お祖父様に神殿の前であった事と、冒険者に対する皆の意識が変だと訴えた。


 「ふむ、そう言われればその通りじゃな。なぜ、私は疑問に思わなかったのかの?それで、どうやってアルフレッドを説得するんじゃ?」


 お祖父様はまだ四十代なのにジジ臭い喋り方をワザとしている。

 理由は知らない。


 「冒険者ギルドがいかにいらないか調べたい!だからお祖父様、影を貸して!」


 「影を貸すのはいいんじゃが、何を調べさせて、どういらないと示すんじゃ?」


 「影達には、孤児院の子供達の元親が何の仕事をしていたか調べてもらうよ。更に、孤児院の子供が卒院したら何の仕事につくかも、調べてもらう。あとは、冒険者ギルドから孤児院にギルドとして寄付金を出してるかも調べてもらう。」


 「あまり冒険者ギルドと関係ないものを調べさせるのじゃな?それで、説得できるのかの?まぁ、いいわい。聞いていたの?調べてくれ。」


 お祖父様が指示を出した。

 お祖父様は調べ終わったら連絡する、と言ってくれたので後は待つだけ。

 俺の予想が当たったら曾祖父母、祖父母、両親は冒険者ギルドに嫌悪と侮蔑を持つだろう。

 すぐには潰せないが潰す準備はすぐにでもするだろう。

 俺の予想はそれ程、領主としては受け入れられない事だ。


 それから十日立った日、お祖父様の影が怯えながら呼びに来た。

 あぁ、俺の予想通りか。

 お祖父様達が誰か一人でもキレると怖いんだよな〜。

 影の様子から全員キレてる気がする。

 俺は影に新人を全員図書館に配置する様に命じた。

 影は顔が引きっていたが、了解して一瞬で消えた。


 図書館に近づくにつれ、空気が重く、息苦しくなっていった。

 これはヤバイな。

 俺は後ろに付いてくる乳母にメイドの新人を避難させる様に命じた。

 乳母は礼を言って走っていった。


 さて、代々の公爵を相手にプレゼンの時間だ。

 前世では、やった事ないけど大丈夫だよな。きっと。多分。

 うん。よし。図書館の扉を開けた瞬間俺は全力で魔圧を纏った。


 ヤベェ、魔力の地獄だ。

 公爵家の全員、いざという時戦える様に曾祖母から魔術を学ぶ。

 夫人になる条件の様な物だ。

 だから、ここにいる俺を除いた全員が魔術師だ。

 魔力が視えたらなら、どんな生物でも逃げるだろう。それほどここは魔力が暴れ回っている。


 「皆、俺は魔術師じゃないから魔圧をなくして下さい。息苦しくて話が出来ないです。」


 曾祖父、祖父母、両親は魔圧を緩めたが、曾祖母が緩めてくれない。

 曾祖父のヴァンクロード曾祖母の肩を抱いて、ヴァイオレット、と声をかけた。

 漸く俺も魔圧を緩められる。


 「お祖父様、調べて貰った事について教えて下さい。」


 「うむ、まず孤児院の子らの親は8割が冒険者だった。そして、子らが卒院したら9割が冒険者になっていた。冒険者ギルドは孤児院に一切寄付金を出していない。これが調査結果だ。」


 「では、公爵家の金で育った子らが冒険者になり、結婚し、子供を残して死に、孤児院に子らが入る。これを、繰り返しているのが冒険者ギルドと言う事ですね?しかも、この領だけではなく、この国だけではなく、全世界で行われていると。更に、それを責めても冒険者は自己責任、と言ってギルドは何もしないと。」


 言葉にする度に大人達の顔が険しくなる。

 机を叩き唸る様に声を上げたのは曾祖父だった。


 「つまり、冒険者ギルドとは孤児院の子供達を食い物にしている!確かに、貧民の受け皿として冒険者ギルドは認識されているが、孤児院や貧民街の補助金は公爵領の税金だ。魔の森がある公爵領に住む者達の文字通り血と汗と涙の結晶だ!冒険者ギルドに人を補充する為にやっているわけではない!シルバー!お前はこの事を知っていたのか?だから冒険者は国の恥だといったのか!」


 曾祖父は魔の森の近くの別邸にある騎士団の総団長だ。

 いつもは、優しい目が鋭くなっている。

 迫力が凄い。こんなのを相手にプレゼンするか。

 しかも、他の大人も歴戦の人達だ。帰りたくなってきた。


 「知りませんでした。でも、予想はしていました。冒険者は国のない国に住む人達です。国がないのですから、どこかに寄生しないと生活出来ません。そして国民も増やせません。でも、冒険者はいなくなりません。土地を持っている国が滅んでも、国土を持っていない冒険者は滅びません。別の国に寄生するばいいし、そもそも総ての国に寄生が完了していますから。」


 「シルバー、いつから冒険者を変だと思ったのじゃ?」


 「冒険者ギルドが、何か国と問題が起こった時、すぐに出て行ってもいいのだぞ?と脅しをかけていると聞いた時です。そもそも冒険者がいなければ魔物討伐専門の騎士団を作ればいいだけです。冒険者ギルドの出している利益はそのまま騎士団の利益になり、戦争が無ければ騎士団は金食い虫とは言われません。騎士団員が倒し持ち帰った魔物を売り、半分は国、もしくは領地に、もう半分は特別給金にすれば騎士は通常の給金と特別給金、更に退役金に負傷手当等を貰えます。冒険者ギルドは国にとって邪魔でしかないはずです。なのに国も我らが公爵家も冒険者ギルドを潰そうとしない。変でしょう?」

長くなったので切りました

読んで下さりありがとうございます

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