俺の知らない公爵家の話
よろしくお願いします
さて、気合を入れて産まれたけどやる事をやらないとな。目はまだ開かないから景色は見えない。
耳もよく聞こえないからなんかザワザワしてるけど無視してっと。
ここは小説に習って体の中に何か力が無いか調べてみるか!
調べた結果は右胸に何かモヤモヤしたものがあるのはわかった。
動かそうとしても重くて動かない、どうしよかな?
うーん、全部は無理ならパンのように千切って少しづつ動かそう。
よしよし、小さく千切る事には成功した。
それを、ゆっくりゆっくり右手に持っていく、手のひらまで持っていくと穴が開いてるのがわかった。
穴に千切った魔力を入れようとしても蓋のような物があって出ていかない。
よし、魔力を肘まで動かして気合を入れて勢いよく穴にぶつけると蓋ごと魔力が外にでたぞ!
これで魔力を消費する事ができる!
5回魔力を千切って手のひらから外に出す。
蓋が無くなったから勢いよく穴にぶつけなくても外に放出出来るようにもなって楽になったし魔力を使い切る事が出来た。
魔力が回復してるのも分かるし、少し回復したら魔力を右足、左足、左手、頭、右手の順番で動かして完全に回復したらまた放出しよう!
女神様との約束を果たした。
と、喜びでテンションが上がっていた俺は周りの人がどうなっているかなんて気にもしていなかった。
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「奥様、後少しです頭が出てきましたよ、息んで下さい」
後少しもうすぐ私と夫の赤ちゃんが産まれる!
大丈夫よ私がちゃんと産んであげますからね!
うう〜んっと力を入れると
「おっぎゃああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「奥様、産まれましたよ!元気な元気な男の子です!それにこの子は神の愛し子です!おめでとうございます!」
ああ、良かった。
無事に産まれた。
それにお義母様と同じ神の愛し子、この世界に居る女神様であるユナ様の最も好きな色である『白銀』その『白銀』が髪に現れる人を神の愛し子と言う。
『白銀』の色が『白』に近ければ近いほど神に愛されてる証拠なのだ。
神の愛し子は全員が才能豊かで決して悪人は産まれない将来が約束された人。
私と夫の赤ちゃんが愛し子として産まれた。
ドラクル公爵領は魔の森と接しているから危険が多い。
子供の将来が心配で仕方なったけど神の愛し子であるならばきっと大丈夫と少し安心出来るわ。
「マリー!産まれたのか!」
ああ、夫が扉の前で待っている。私達の宝物を早く見せてあげないと。
「リリー?エドを入れてもいいかしら?」
私の侍女でお産も手伝ってくれていたリリーに声をかけると、彼女は笑顔で頷いた。
「奥様、若様を。首に手を添えて頭が振れないように気をつけて下さい。」
私達の赤ちゃんを私に渡し、エドの待つ扉をリリーが開ける。
まさかあんな事になるなんて思いもせずに。
「マリー!私達のたから……ぐわぁ〜〜」
扉を開けて夫が部屋に入って来た直後私達の赤ちゃんから魔力弾が放出された。
ベッドに座っている私に抱っこされている赤ちゃんの高さは丁度夫の腰の少し下だった。
夫は私達の宝物を見る事無く気を失って執事のエドワードに運び出された。
私はエドワードに運ばれる夫を呆然と見送った。
後で聞いた話によると赤ちゃんの魔力弾じゃ無かったら二度と子供が出来なくなる所だったらしい。
「神の愛し子は才能豊かと言われるけど産まれてすぐに魔力弾を放つなんて……」
「はい、私も驚きました……旦那様は大丈夫でしょうか……」
「この子の名前を一生懸命考えてたのに……」
「はい、少し可哀想ですね。」
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はっ、と飛び起きた。
私は何で寝てるんだ?
うぐぅ~股間が痛い!
とにかく痛い!
何があった!
「旦那様!起きられましたか!」
エドワードがこちらを焦ったように見ている。
エドワードが焦るなんて何時ぶりだ?
「エドワード何があった?私は何で寝てるんだ?股間が猛烈に痛いのだが。」
「旦那様は奥様が無事に若様を産まれたとの知らせを受けて奥様の部屋に入られました。」
そうだ!
私達の子が産まれたから部屋に入って……そこからの記憶が全く無い、何でだ?
子供の名前も告げた覚えも無い。
「旦那様が部屋に入った直後に若様が魔力弾を放たれました。奥様に抱かれていた若様の高さが丁度旦那様の股間の高さだった為に直撃しました。専属医によると産まれたばかりの若様でなかったら二度と子供が出来なくなる所だったとの事です。」
「おぉう、産まれたばかりの我が子に攻撃されるとは……いや!産まれたばかりの我が子が魔力弾を使った事の方が問題か?下手をしたらマリーやリリーを無差別に攻撃してしまう可能性がある!」
私がベッドから飛び出して妻の部屋に行こうとするとエドワードが必死に止めてくる。
「旦那様!待って下さい!今無理すると本当に子供が二度と出来なくなる可能性があるのです!走らないでゆっくり歩いてください!」
エドワードに言われた通りゆっくりと歩いて行く。
流石に魔の森と接する我がドラクル公爵家の子供が一人というのは色々と問題がある。
妻の部屋にゆっくりとたどり着きノックをする。
コンコン「私だよ、入っていいかい?」っと言うと扉が開いた。
「エド!大丈夫?立って歩いて問題ないの?」
「ああ、ゆっくり歩く分には問題ないよ。それより私達の宝物は?」
「旦那様こちらです、扉の正面だとまた先程のような事になる可能性があった為、部屋の角に扉が頭の方にくるよう場所を変えました。ここなら奥様にも私達侍女やメイドにも魔力弾を撃つのが難しいと考えました。」
「流石はリリーだな!私も我が子が無差別に攻撃してしまうかも知れないと考えて急いで来たんだ。」
「エドあれからこの子は魔力弾を撃ってないわ。機嫌も良くて可愛らしいわよ。早く見てあげて。」
マリーに言われて我が子に慎重に近付くとご機嫌にキャッキャしながら体内の魔力を動かしていた。
思わず飛び退いた私は悪くないと思う!
痛みの引いた股間が猛烈に痛い気がした。
「エド?!どうしたの?!何かあったの?」
「いや大丈夫!この子が体内の魔力で遊んでいてまた魔力弾が来るんじゃないかって身構えただけだよ。」
「若様はもう魔力操作が出来るのですか?!愛し子とはここまで凄まじいのですね……」
その時「バンッ」っと扉が開いた。入って来たのは母上だった。しかも凄まじい鬼気迫る顔をしていた。
「母上!どうしたのです!スタンビートですか?!」
母上は『白銀』の髪を靡かせながら我が子に猛然と近付くと顔を覗き込み見たことのない勢いで笑い出した。
「ハハハハハハハハハッ!!この子の髪を見て見なさいアルフレッド!『白銀』は『白銀』でも殆ど『白』よ!道理で滅多に聴こえないユナ様から
「今すぐ本邸に行きなさい」っと神託が聴こえるはずだわ!この子は愛し子の中でも特別な子よ!!」
まさか!
愛し子だけに稀に聴こえる神託があったとは!
そして私よりも先に母上が我が子を見るとは!
私も見たいからどいて欲しい!
「母上!私はまだ我が子を見ていないのです!見たいのでどいて下さい!そして私がまだ我が子を見ていない理由をエドワードに聞いて下さい!」
母上は「何故まだ見ていないの?」と言うような顔をして大人しくエドワードに話を聞きにいった。
ようやくちゃんと我が子を見れる。
本当に殆ど『白』の『白銀』の髪に妻によく似た顔の小さな我が子……何だか知らないが涙が出てきた……あぁこれが幸せか。
考えていた名前じゃなく何故か「シルバーブレッド」と付けなきゃいけない気がした。
私は振り返ると、妻と理由を聞いて笑っているが心配もしてくれている母上に我が子の名前を告げた。
「この子の名前は『シルバーブレッド』にするよ!シルバーブレッド・ドラクル!」
「そう……貴方にもユナ様の声が聴こえたのね?私が来た理由はこの子にユナ様が付けて下さった名前を伝える為でもあったのよ。」
「お義母様、この子の名前はユナ様が付けて下さったのですか?!」
マリーが驚いて目を見開いている。
愛し子の中にはユナ様が名付け親の愛し子が極少数居る。一番身近の人は母上なのだが、母上の名前「エステリーゼ」もユナ様が付けて下さった名前だ。
「あれが神託なのですか?この子には別の名前を考えていたのですけど、この子の顔見ていたら「シルバーブレッド」にしなければ!と思ったのですが?」
「正式な神託ではないけれど逆らえないと思ったのならユナ様の神託に間違えないわ。」
本来私は神託を受けられない。
それでもこの子の名前の為に神託を授けられた。
この子はそれ程ユナ様に愛されまた期待されているという事に他ならない。
私は親としてこの子を守れるのだろうか?
「エド、私達の宝物のこの子を私達の持てる全てをかけて守り、叱り、導いて行きましょうね。」
マリーは私の不安を一瞬で消してくれた。
そうだ私達の宝物なのだ。たとえ神の愛し子でも私達の子なのだ!
このドラクル公爵領を押し付けた王家と戦い続けたきたのだ!
守れない訳がない!
私はマリーに笑顔で頷き返した。
「貴方達まだエドとマリーと呼び合ってるの?いい加減子供も出来たのだからちゃんとした名前で呼び合いなさい!アルフレッド!アナスタシア!」
「母上、エドとマリーと呼び合っているのはまだ王家を許した訳では無いと王家に示す為です!決して私達は王家を許しません!」
ドラクル公爵家はそもそも初代ドラクル公爵が王弟として公爵位を下賜された事が始まりだ。
初代ドラクル公爵は兄である当時の王太子と十歳離れていて王に興味もが無かった為、騎士をしていた時に最強種であるドラゴンを討伐した功績で時の王が、ドラゴンのドラと自分の名前のクルスからクルを贈った事によるものだ。
初代が王に興味は無くとも周りはドラゴンスレイヤーを王にしようと画策し、それによって国が二つに割れかけた為に今のドラクル公爵領とは別の場所にあったドラクル公爵領に引きこもって国を守ったのだ。
しかし、王になった兄は殊更に初代を罵った。
力があるにも関わらず王家の義務も貴族の義務も果たさない愚弟と。
初代が本気になったらすぐに王になれたのに、国を守る事を優先した初代を罵る王に貴族が本当の忠誠を誓う訳がない。
ドラクル公爵家は第二の王家の様になっていった。
二代目のドラクル公爵は王家との視えない争いを無くそうと、王太子の側近になり国を一つにしようとした。
しかし、王太子は父親譲りの優秀な二代目を毛嫌いし、同じく優秀な自分の婚約者も毛嫌いし、自分とよく似た虚栄心の塊の様な伯爵令嬢と結婚すると言い、婚約破棄をした。
これには二代目も王家を見限った。
元婚約者と二代目は幼馴染だった。
そして二代目に婚約者が居なかったから二人は婚約した。
これに何故か王太子が激怒した。王太子は「元々二人は浮気して王太子である自分を陰で嘲笑っていたのだ」と喚き散らした。
現国王の過去のやらかしと王太子のやらかしで王家の信頼は地に堕ちていった。
それでも、二代目は王になる気は無いと言い、初代公爵と同じ様に領地に籠もった。
三代目は優秀さを隠す事にした。
しかし解る貴族には優秀さ解り何故そのようにしたか気付く優秀な貴族達に慕われ解らない無能な貴族とは距離を置いた。
そして王太子は勿論距離を置いた。
王太子は三代目を出涸らしと呼び、出涸らしに今の領地は勿体ないと領地替えを命じた。
それが今のドラクル公爵領である。
初代がドラゴンと戦った土地、高さ50メートル、横10キロ、縦3キロ、の絶壁の中間に横幅20メートルの竜の道と呼ばれている道があり、そこを抜けると村が一つだけあり魔の森に囲まれた危険しかない土地だった。
貴族達は激怒した。
何の咎も無い公爵家の土地を奪い強制的に危険しかない土地に領地替えをした王家に失望と恐怖を通り越して憎悪が湧いたのだ。
しかし三代目はこれをふたつ返事で了承した。
公爵家を慕う民達の多くが三代目に付いて行った。一気に魔の森を伐採し多くの魔物を狩り、伐採した木で家を作り狩った魔物で富を得た。
村は一気に子爵領の領都と同じ位になった。
三代目は魔の森を伐採し肥沃な土地を魔物から奪い取り畑にした。
塩は手に入らないから竜の道と呼ばれる唯一の道の反対側の親友である侯爵から買っていた。
魔の森の魔物は高値で取引されるが親友や友人以外と取引を一切しなかった。
三代目は貴族にしては珍しく恋愛による婚約をしていた。
婚約者の母は王家を心底嫌う王妹だった。
ドラクル公爵家を尊敬している婚約者の母は喜び娘に自分が知り得る全ての魔術を教え「危険な場所だからと言って足手まといになってはいけない!」と自分の出来る最大の愛を与えた。
三代目と婚約者が結婚して産まれた四代目は四大公爵家で最も王家の血が濃くなった。
そして四代目は愛し子だった。
『白銀』の色は『白』か殆どなく『銀』に近かったが間違いなく愛し子だった。
四代目は領地を少しづつ広げながら畑や医療、武器、城壁などの領地基礎力を上げる事に注力した。
これ以上一気に領都を広げると、いずれ破綻すると思っての事だった。
そんな中、王都で問題が起こった。
隣国との友好関係強化で隣国の王女を王太子の婚約者としていたのに、王女が結婚準備で結婚一年前に、この国に向かっている最中に王太子の浮気相手が妊娠している事がわかったのだ。
中絶などユナ様は決して許さない。
昔中絶した王家あった。そしてユナ様からの神託が全世界にあったのだ。
「子がいらないなら出来なくしましょう」と、王家の血が少しでも入っている者は一生、子が出来なくなり一つどころか七つの王家だけが滅んだ。
中絶が出来ないなら浮気を受け入れてもらうしかない。
王太子は早馬を出して事情を説明した。
王女は「それでも国と国の友好関係強化ですから王家の血に輿入れします。」と、さらりと言った事に王太子は安堵した。
それが、すぐに、絶望に変わるとも知らないで。
四代目はその日も色々な所に視察に出て資金の割り振りを考えていた。
家に帰り書類を片付けようとしたその時、扉が勢いよく開けられ驚いて見ると愛し子がいた。
そう、母上である!
父上も驚いていたが、母上も驚いてた。
自分以外の愛し子を見たのがお互い初めてだった。
先に意識を取り戻したのは父上だったらしい。
「申し訳ないが、どちら様かな?ここは公爵家次期当主の執務室なのだが?」
「私は隣国の王女エステリーゼと申しますわ!私の話を聞いて下さいな!」
母上は国の事と王太子の愚かさを語った。
父上は頭を抱えたそうだ。それもそうだろう、どう考えても戦争一直線だ。
しかもこちらの国が十割悪い、他の隣国もこれ幸いとこの国を攻めて来るだろう。
父上はこの時の事を笑いながら
「あの時は国が滅んで、王家の血が濃い私も処刑される未来が視えたよ。」
と、言っていたな。
しかし母上は興奮したように、心底嬉しそうに、どことなく泣きそうに、こう言ったらしい。
「私は王女で第一子の愛し子です。弟も妹も普通に接してはくれないわ。お父様は国王としてしか話せない、お母様が唯一娘として普通に接してくれましたわ。自分の夫になる人も普通に接してくれないと、諦めていたの。でも貴方なら、私と同じ愛し子で王家の血が一番濃い公爵家の貴方なら普通の夫婦になれるわ!私と結婚して下さい!」
国と国の友好関係強化の政略結婚、しかも結婚しないと隣国全部と戦争、結婚以外に選択肢がない、でも父上はそんな事どうでも良かったと笑う。
「私は貴女の事を何も知らない、でも私はこう思う!私の妻は貴女以外にいないと!一年でお互いの事を知っていき幸せになろう!エステリーゼ!」
父上と母上がお互いにプロポーズしている時、王都ではやっぱり事件が起きていた。
王太子が喚き散らしていた。
「何故、王女が城に来ない!とっくに付いているはずだろうが!」
御前会議で王も大臣もいる中、事件を起こした張本人が喚いている。
王は顔色を悪くし、大臣は凍てつく視線で王太子を睨んでいた。
大臣達に最早王家に忠誠心はない。
騎士団や魔法師団は王家に忠誠心を持っているが、大臣達は騎士団も魔法師団も無能と断じていた。
扉が勢いよく開けられ伝令が駆け込んで来た。
大臣達は咎めず報告を聞こうとしたが王太子が。
「ここを何処だと思っている!不敬罪で処刑してくれる!」
「申し訳ありません!過急の報告がございます!隣国の王女殿下はドラクル領に向われて、これを陛下と王太子殿下、大臣の皆様方に読めと手紙を渡されました!」
王太子を大臣達が抑え手紙を読むように指示を出した。
『陛下、王太子殿下、大臣の皆様、初めまして隣国の王女エステリーゼです。
今回の結婚は友好関係強化を目的にした政略結婚です。
ですが、王太子殿下は浮気をされて我が国は多大なる侮辱を受けました。
しかし、私は戦争はしたくないのです。
戦争を回避するには私が王家の血と結婚する必要がございます。
しかし、王太子殿下との結婚は論外です。
故に私は四大公爵家の中で最も王家の血が濃いドラクル公爵家次期当主エリゴール・ドラクル様との結婚をする事で戦争を回避し友好関係強化もしたいと考えています。
許可を頂きたいと思います。』
大臣達は諸手あげて賛成した。
戦争回避も出来て友好関係強化も一部は駄目になるだろうが強化自体が全部無くなるより遥かにいい!
それにドラクル公爵家に他国の血が入ればこれ以上王家が手を出せなくなる。
ドラクル公爵家が出来てから王家の公爵家嫌いは度が過ぎている。
大臣達の思いは無駄だったが。
ドラクル公爵家だから、なんとかなっているどころか利益を出しているが、普通の貴族では爵位を返上しているだろう。
ドラクル公爵家が潰れたら次にどの貴族家が狙われるか解らない。
それにドラクル公爵家はワザと王家に嫌われる様にして国中の貴族を守っている。
無能の貴族や騎士団、魔法師団は理解していないが、大臣達は代々理解し裏から助けている。
理解していない者は大臣になっても他の大臣達にすぐに叩き潰されている。
潰した後にしっかりと理解するまで教えこんでいる。
だから大臣達はドラクル公爵家には基本的に味方をする。
王太子はまだ文句を言っていたが、当然王も隣国全部と戦争など出来る筈もなく許可を出した。
だが、これから十年は隣国に多大な魔物討伐の為の物資と騎士団の派遣で、国庫をすり減らした。
父上と母上の結婚式は王都で国が費用持ち盛大に行われた。
その時、王太子は初めて母上見てその美しさと愛し子である事を知り父上に激しい嫉妬と憎悪を滾らせたらしい。
そして、それを自分の息子に洗脳教育として施した。私と妻の苦労の始まりだった。
私は母上からは人の見分け方を、父上からは書類仕事を、祖父からは剣術を、祖母からは魔術を習い十五で王都の学校に入学した。
私自身は愛し子では無いがドラクル公爵家の者は優秀だと学校では注目の的だった。
優秀な子息や令嬢、気のいい人懐っこい平民達と仲良くなり、順風満帆の学園生活を送っていた。困った事は二つ、一つは王太子がやたらと突っかかってくる事、2つ目は婚約したいと思う令嬢に出会えない事だった。
妻であるアナスタシアにあったのは、孤児院だった。
名前を侍女であるリリーをもじってマリーと名乗っていた。
私は執事のエドワードをもじってエドと名乗っていたが。
妻は学園ではツンとしていてアナスタシア嬢とマリーが同一人物とは気づかなかった。
妻の方もドラクル公爵家の私が裕福な平民に変装して、孤児院の子供達と泥だらけで遊ぶ訳が無いと気づかなかったらしい。
私達は二年をかけて恋仲になった。
父上も母上も婚約者は平民でも構わないと言ってくれていたから私は気にしていなかったが妻はそうじゃ無かった。
妻の家は港を持つ伯爵家で、資産だけ見れば侯爵家の上位に位置する家だった。
平民との結婚等許されない、と悩んでいた。
だが、そんな悩みは王太子によってぶち壊された。
私は父上と母上に婚約者にしたい人がいると話すと、母上に殴り飛ばされた。
父上にも頭を叩かれた。
エドワードに聞いていた両親は既にマリーの事を調べていてアナスタシア嬢とマリーが同一人物だと知っていた。
確り調べなさい、と説教された後、伯爵家にはもう婚約の話をしてある、と言われ私は両親には敵わないと思うと同時に両親の愛が嬉しかった。
マリーと婚約が出来る!
と喜び勇んで伯爵家に顔合わせに向かった私に待っていたのは、アナスタシアからの婚約は出来ないとの言葉だった。
私も両親も伯爵夫婦も驚いた。
何故?と聞いてもアナスタシアは泣きながら首を振り部屋に帰ってしまった。
呆然としている私達にリリーが命をかけて話かけてきた。
侍女が貴族の会話に勝手に入るなど許されない、腐った貴族ならその場で首が物理的に飛ぶし、普通の貴族でも首にするだろう。
私達ドラクル公爵家は気にしないし、それが有用なら採用もするし特別給金も出す風変わりと言われる貴族だ。
「命をかけて進言します。私の話を聞いて下さいませんか?」
リリーの話はクソみたいな話だった。
アナスタシアとマリーが同一人物だと知った王太子が私との婚約をしたら
「王都の孤児院全ての援助金を止めて孤児院を潰す」
と言ったらしい。
アナスタシアは子供達を守る為に泣きながら私との婚約をしないと言ったのだ。
更に王太子は
「俺の婚約者にしてやろう!光栄だろう!ハハハハ!!断るならドラクル公爵家の様に領地替えしてやる!」
と宣ったらしい。
これに激怒したのは王家の愚かしさを知り尽くしている我らではなく、伯爵夫婦だった。
アナスタシアの部屋に行き、伯爵夫婦は
「家の事は気にするな!領地替えなどさせるものか!お前は幸せになりなさい!」
と叫ぶ様にいった。私の両親は
「王都の孤児院の子供達は全て公爵領にある孤児院で引き取れるから大丈夫」
と当たり前の様に言った。
アナスタシアは泣きながら私に抱きついてきた。
私は徹底的に王太子を潰す事にした。
学園の友人達に今回の事をしっかりと事実のみ聞かせ噂を流させた。
ただの噂なら王家と取り巻きに消されるが、王家のドラクル公爵家嫌いは有名だし、優秀な子息、令嬢、友人が多い平民達が一気に広めれば噂は消せない。
結果、王家は伯爵家に謝罪し、誰もいない孤児院には援助金の増額をし、王太子を王太子の地位から降ろし第二王子を王太子にした。
だがやはりと言うかドラクル公爵家には一切謝罪が無かった。
伯爵家は王家から距離をとり、他の少なくない貴族家も距離を取った。
前々から恐れていた領地替えを脅しとはいえ王家が口に出したのだから。
それからマリーと結婚して社交界に出るにあたって私達はお互いを、エド、マリー、と呼び合い王家を許していない、と態度で示してきたのだ!
絶対に許すものか!
読んで下さりありがとうございます