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魔の森での戦いと枷

よろしくお願いします


 母上が大魔法を使った瞬間、辺りから『ブチブチッ』と、何かを引き千切る凄まじい音が聴こえてくる。

 次の瞬間、魔の森の木が凄まじい勢いで空に浮かんでいく。

 よく見ると、木の下に石柱がある。

 石柱が木の根を引き千切りながら、空に向かって伸びたからさっきの音が聴こえたのか。


 かなりの高さまで石柱が伸びたら、上に乗っている木を落とす。

 広範囲に木が降り注いで下にいる魔物を、潰していく。

 冒険者が魔の森の中にいたら、魔物と一緒にペシャンコだったな。


 降り注いだ木は、意外な事に粉々になっていなかった。


 「魔の森の木は、魔力を持っていて剣くらいなら魔力で自分を守ったりしないけど、かなりの力が加えられると魔力で自分を守るんだよ。」


 「魔の森の木の特殊魔法じゃよ。だから加工するときは、魔力が抜けるのを待ってから加工するんじゃよ。」


 「アナスタシアは魔の森の木を使う事を知っているから、態々この魔法を作ったのよ。見てなさい、次が来るわよ。」


 お祖母様がそうゆうと、石柱が地面に戻っていって何も無かったかの様に、倒れた木だけが残された。

 次の瞬間、円状に倒れている木が中心から外に転がっていった。


 石柱を中心から伸ばしていってるんだな!

 石柱が伸びれば、その上にある木は石柱から落ちていく。

 落ちた先にも石柱があり、どんどん落ちていく事で中心から外側に倒木を退かしていってる!


 俺達の前にも倒木が溜まっていったけど、これどうやって中に入るんだ?

 円状の外側は木で一杯なんだけど?


 目の前に石柱が出来て、倒木を横に吹っ飛ばした!

 うわぁ〜。母上にしては派手な魔法だな〜。

 反対側の木も吹っ飛んでるのが円状の外側じゃ無くて魔の森の奥に吹っ飛ばしてるよ。

 いきなり倒木が空から落ちて来るとか、考えたくもないな。

 下にいる魔物達はグチャグチャだろうな。


 「よし、準備は出来たな!魔物が来る前にアナスタシアが作った場所に陣を敷くぞ!急げよ!」


 曾祖父様の号令で騎士団がなだれ込んでいく。

 魔法使い達が、先行してかなり中心に近い所まで走っていく。

 一列に並んで、一気に土壁を作って簡易的な砦を建てていく。


 「シルバー、シルヴィア、あの壁を信じ過ぎてはだめよ?壁の外で死んだ魔物を踏み台にして、壁を越えて来る魔物もいるし、単純に壊して来る魔物もいるわ。」


 「だから、戦いながら土壁にも注意を払うのよ。注意しないと、突然魔物に囲まれてすぐに殺さてしまうわよ。」


 「分かりました。注意しながら戦います。それより母上は大魔法を使ったのに、中に入って大丈夫なのですか?」


 母上の魔力はもう半分以下になっている。

 これから魔物に囲まれるかも知れない場所に居ないで外にいた方が安全なんじゃないか?


 「外にいた方が、危険なのよ。迂回してくる魔物も少なく無いのよ。」


 「中は騎士団、外は冒険者、って決まりがあるの。いざという時は騎士団の近くの方が、私達ドラクル公爵家の一員は安全なのよ。」


 「それにじゃ、今の冒険者達は信用に値しないのじゃよ。魔の森に入ってすぐに、大魔法を使うのはいつもの事じゃのに、大魔法を使う前に公爵家の許可も無く突っ込んで行ったかのぉ。」


 「そうですね父上。私が領主に成ってからは初めてですが、父上達の時もありましたか?」


 父上の言葉に、お祖父様達は首を横に振った。

 えっ!初めてなの?

 かなり落ち着いて対応してたから、いつもの事だと思ってたよ。


 「そろそろ来ますわね。シルバー、シルヴィア、殱魔騎士団は私の側にいて、ここまで来た魔物だけを相手にしなさい。」


 「分かりました。曾祖母様。注意する事はもうありませんか?」


 「そうね、戦いに集中しすぎるといつも間にか、前へ前へ行きがちよ。魔物をある程度倒したら、必ず周りを見て前に行き過ぎない様に気を付けなさい。」


 「気を付けて下さいねシルバー様。私も初めての大規模戦闘の時は、かなり前に出てしまいました。私じゃ無ければ間違いなく死んでいましたわ。」


 私じゃ無ければって、一人で殲滅したのか?

 ちょくちょくシルヴィアの戦闘狂話がでるな。

 そうしなきゃ生きられない、と思ってやってたんだろうけどちょっと楽しげなんだよなシルヴィア。


 「来ました!いつもの倍はいます!」


 石柱の物見が声を張り上げる。

 来たか。

 俺達がいるのは騎士団の中央から少し下がった場所だ。

 完全に下がると出口を守っている騎士達の邪魔になるからな。


 石壁の向こうへ弓矢と魔法が撃ち込まれる。

 むせ返る血の匂いと魔物の悲鳴が下がっていても感じられる。

 これが戦場なのか……。

 これを、これから何度も経験していく事になるのか。


 落ち着こうと深呼吸しても血の匂いで落ち着かない。

 戦っていないのに汗が止まらない。

 喉が乾いて、手が震える。

 殺さなければ殺される、覚悟を決めろよ俺!

 この程度乗り越えられなきゃ、シルヴィアは救えない!

 俺は!シルヴィアを守る為に!この世界に来たんだ!


 「石壁を越えられます!隊列を変更してください!」


 「分かった!お前もすぐに降りて来い!」


 石壁が越えられるなら魔物はここまで来る。

 戦う覚悟は出来ている。

 さぁ、始めようか!


 気合を入れたら焦りも恐怖も無くなった。

 自分でも解るが、俺は薄っすら笑っている。

 曾祖母様が俺を見て何故か驚いているが、どうでもいい!

 さぁ、さぁ、さぁ、敵を的確に倒し仲間を助けようか!

 それが俺のここで成すべき事なのだから!


 「来たわよ!仲間を信じ自分を信じ、魔物を屠りなさい!」


 俺の所に来た魔物はウルフ系の魔物だった。

 刀を下段に構えて、ウルフが来るのを待つ。

 ウルフ系な攻撃手段は、足に噛み付く、体を持ち上げて引っ掻いてくる、ジャンプをして喉に噛み付いてくる、のどれかだ。

 なら、攻撃を仕掛けるより待つ方がいいな。


 ウルフは俺が小さいから、軽く飛んで喉を狙ってきた。

 下段から上に向かって突きを放つ。

 飛んでいるウルフは避けられない。

 ウルフの顎から頭に刀が貫く。

 引き抜いて左から来ているゴブリンを斬り伏せる。


 すぐに後ろに飛んで、振り向きざまに騎士を狙っているゴブリンの後から首を撥ねる。

 首を撥ねたに右足で左に蹴り倒し、左から来ているウルフにゴブリンの首から噴き出す血をかけて動き止めてから、一気に近付き頭に刀を突き立てる。


 刀を抜いて前を見ると、ゴブリンが数十体こちらに来ようとしていた。

 魔力を6個千切り3個の水球を、水球同士でぶつけ合い水をばら撒き雷魔法を3回ずらしながら放つ。


 残ったゴブリンは4匹。

 近付き斬ろうとしたとき、ゴブリンの頭から体に氷槍が貫いた。

 シルヴィアだな。

 後ろを振り向いたら、意外と遠くにシルヴィアがいる。


 いや、俺が前に出すぎているのか。

 ああ、これが曾祖母様が言っていた、前に前に、って感覚か。

 ヤバいな興奮し過ぎだ。

 シルヴィアの所まで戻ろう。


 「落ち着きましたか?シルバー様。」


 「うん、落ち着いたよ。ヴィーのおかけだ、ありがとうね。」


 「どういたしまして。それより、魔物が想定より多い様ですわ。ヴァイオレット様にお聞きしたら、

 「いつもは、ここには全体で百ちょっとしか来ないのに、もう軽く超えているわ。」

 とおっしゃられていましたわ。」


 「そうなの?じゃあ前線はもっとまずい事になってるかもね。」


 「どうなさいますか?まだ隠しておくつもりなのでしょう?」


 冒険者がいる今、隠しておきたかったけどそうも言ってられないかな?

 仕方ない、殱魔騎士団と俺達の枷を解くしかないか。


 「今隠していて、公爵家の戦力を下げるより、枷を外して派手に殱魔騎士団の事を喧伝しよう。」


 「私はシルバー様を信じますわ。派手に殱魔騎士団を喧伝してしまいましょう。」


 やっぱりシルヴィアは戦いになると性格が若干変わらないか?

 まあ、いいか。

 シルヴィアがどんなシルヴィアでも、俺は守ってあげるだけだ!


 風魔法で声を大きくし、殱魔騎士団に呼びかける。


 「殱魔騎士団よ!総騎士団長、シルバーブレット・ドラクルの名の下にスキルの枷を解く許可を与える。

 殱魔騎士団の殱魔に恥じない戦いをしろ!」


 『『『ハッ!了解しました!総騎士団長!殱魔に恥じない戦いをします!!』』』


 曾祖母様が驚いた顔をしてこっちに走って来ている。

 それを無視して、殱魔騎士団に呼びかける。


 「何にも恥じぬ!

 『『『生き様を!』』』

 誰もが羨む!

 『『『死に様を!

 その背中で!

 『『『語ってやろうではないか!』』』』』』

 殱魔騎士団全力出撃!!」



『『『おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!』』』


 殱魔騎士団が全力を出して周りの魔物を殲滅していく。

 一人、一人が一騎当千の戦いぶりだ。

 よく5年でここまで強くなったなコイツら。


 「シルバー!どうゆう事なの!枷ってなんなの?!殱魔騎士団のあの戦いぶりはなに?!!」


 「曾祖母様、落ち着いてください。今は殱魔騎士団が周りを片付けてくれたから、話をする時間が出来ましたからちゃんと話しますよ。」


 「ヴァイオレット様、水ですがお飲み下さい。」


 「ええ、分かったわ。落ち着くわ。それにしても殱魔騎士団が強すぎるわね。五十人で前線まで押し上げてるわよ。」


 「あはは、俺もちょっとびっくりしてますよ。」


 「それで?枷って、なんなの?」


 「はい、枷とはスキルをオフにすることです。殱魔騎士団は鍛練でも大半はスキルをオフしています。」


 「スキルをオフにしているの?!!」


 「そうです。スキルは後押しです。スキルを使えば簡単に強く成れるけど、スキルを使わなければ弱いのではスキルの力を十全に使えないと考えました。」


 「スキルの力を十全に使えない?私もスキルをオフにした事なんてないわよ?でも、魔術師最強と呼ばれているわよ?」


 「スキルをオフにして鍛練すれば曾祖母様ももっと強くなれますよ?殱魔騎士団の皆みたいに。」


 「私がもっと強くなる?」


 「そうです。殱魔騎士団の皆はスキルをオフにしていても、ゴブリンを簡単に倒す事が出来ます。」


 「この間のゴブリン討伐では怪我をしていなかった?」


 「あれは、止めの刺し忘れで怪我をしたのですよ。ゴブリン討伐は難なくしていましたよ。そもそも、スキルが無くても人は強くなれますよ。スキルはあくまでユナ様の慈悲、慈悲に縋り続けていつしかそれが当たり前になったのが今なんですよ。」


 「人はそんなに弱くはありませんわヴァイオレット様。スキルが無ければ別の何かで、魔物と戦っていた筈ですわ。」


 「そうね、スキルが無くても剣は振るえる。スキルが無くても魔法は使える。スキルに頼りきりになる必要は無いのね!」


 「そうです。そう思ったから殱魔騎士団には鍛練でスキルを鍛えながら、スキルを使わないでも鍛えました。そしたら、いつの間にか総騎士団長と呼ばれる様になりましたハハハ。」


 殱魔騎士団の鍛錬に口を出したのは6歳の時だったな確か。

 シルヴィアと一緒に殱魔騎士団に乗り込んだのが懐かしいな。

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読んで下さりありがとうございました

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