デートの場所は1から作る
よろしくお願いします
7歳の時、鍛練ばかりで婚約者らしい事を何一つしてない事に気が付いた。
だから、デートをしようと思ったがこの世界は娯楽が少ない。
悩んだ俺は、本人に聞いてみた。
「ヴィー、やり直しで色々な場所に行ったと思うけど、行ったことのない場所はあるの?」
「突然ですね、行ったことのない場所ですが?色々行きましたが、一面の花畑には行ったことが無いですわ。子供頃にお母様が呼んで下さった絵本に、出てきますの。でも、侯爵領にも王都の近くにもありませんでしたし、逃げている時はそれどころではありませんでしたわ。だから、見てみたいのですわ。」
「そうなんだ。いつか自由が手に入ったら一緒に行こうか。」
「約束ですわよ、シルバー様。その時を楽しみにしていますわ。」
公爵領は、元々魔の森だ。
しかも、一度森を吹き飛ばして領地を広げている。
花畑があったとしても、全部吹き飛んでいる。
仕方ないな、無いなら作るか!
シルヴィアが実家に帰っている間だけで、花畑を作る作業を続けて来た。
めっちゃくちゃ大変だったよ花畑。
ある程度の大きさが必要だし、管理する人も必要だし、土地を使う理由も考えなくちゃいけないし、めっちゃくちゃ大変だった。
管理人は、連れてきた農民の中から花が好きで戦うのに向いて無い人を見付けた。
土地を使う理由は、前に考えた甘い物作戦を使う事にした。
楓の木で周りを囲んでメープルシロップを、花畑の花で養蜂をしてハチミツを、そしてサプライズで不可能と言われる木を植えて、と両親を説得した。
問題は土地だった。
甘い物の為とはいえ、かなりの大きさの土地がいい場所になかった。
本邸から日帰り出来る場所は、もう農地になっていた。
「使ってもいい広い場所なら、ちょっと遠いけどここにあるよ?ただ、ここは魔の森に近いから少し危ないよ。」
父上が教えてくれた場所は、砦と別邸の間にある場所だった。
ここなら、不可能と言われるあの木も育つかも知れないし、魔の森の近くは植物が育ち易いからいいかも知れない!
植えるのは、楓、ハーブ類、あの木にするつもりだったけど、公爵領は油が少ししか取れないと聞いて椿も植える事にした。
シルヴィアがいない間に視察をしたら、思っていたより広くて驚いたよ。
母上達が、甘い物を作るならこれぐらい必要!
と、父上に聞いたより広く場所をくれるよう説得してくれたみたいだ。
それから3年かけてシルヴィアがいない間、花畑予定地と屋敷を行ったり来たりして花畑を作った。
メープルシロップも、ハチミツも、椿油も好評だ。
公爵家は今、金があって困る事はない。
むしろ赤字経営で貯金を切り崩しているから、褒められた程だ。
そして今年、あの木が実を付けたと報告が来た。
不可能と言われている木が実を付けたなら、花畑の完成でいいだろう。
3年もかかったけど、四季の全部で花が咲き誇る自慢の花畑だ。
シルヴィアも喜んでくれるだろう。
明日、本邸に帰る前にピクニックに出かけよう。
初めてのデートだ。
御者と護衛騎士には昨日の内に伝えておいたから大丈夫。
使用人にも料理人にも言ってあるから昼ご飯も大丈夫。
よし、完璧だな!
本邸に向かってない事に、シルヴィアがすぐに気付いた事は誤算だったけどね!
「あら?シルバー様、この道では本邸ではなく砦に行ってしまいますわ。ヴァンクロード様に何か急用が出来たのですか?」
誤算だったよ、本当に。
どうしよ。あ〜、う〜、まぁ、仕方ないか。
正直に言おう。
「流石にヴィーは気付くか。これからピクニックに行くよ。サプライズにしたかったんだけどね?着いたら喜んでくれると思うよ。」
「まぁ!それはごめんなさい。でも嬉しいですわ。婚約者とピクニックは夢だったんです!仲間の令嬢が「婚約者とお出掛けして来ましたわ!」って楽しそうにしているのを、何度も見ていましたから。」
「そうか、あの男はヴィーと一度も出掛けなかったのか。婚約の意味も解らないとは、王譲りの馬鹿さかげんだな。」
「ふふっ。私はあまり気にしていませんが、どこまで影響力のせいなのかが気になりますわ。」
「そうか、最初から最後まで影響力のせいなら王太子は本当は優秀かも知れないのか。」
「まぁ、私達にはわからない事ですけれどね。」
そんな話をしている間に、馬車は楓林に入った。
周りから花畑が見えないように楓を植えたけど、ちょっと植えすぎたかな?
まぁ、メープルシロップになるしいいか!
気にしない、気にしない。
楓林を抜けて花畑が見えた。
「まぁ!素敵!シルバー様、花畑ですわ!こんな所花畑があったのですね?!」
「ヴィー、まだ馬車が停まってないから危ないよ。大丈夫、花畑は逃げないよ。」
「でも、どうしてこんな所に花畑があるのですか?」
「ヴィーが行ってみたいって、言ってたから探したんだけど無かったんだ。だから、作ってみたよ。ここはヴィーの為の花畑だよ。」
「嘘、嘘ですわよね?私の為だけの花畑なんて!」
「ヴィーの為に作ったのは本当だけど、建前も必要でね。ここで養蜂もしてるよ。公爵家ででてくるハチミツはここで作ってるんだ。」
「本当に私の為なのですね。あのハチミツもとても美味しくて私大好きなんです。シルバー様、嬉しいですわ!こんなに嬉しい事は、初めてです!ありがとうございます!」
「そんなに喜んでくれると、3年も掛けたかいがあるよ。」
「3年も掛かってるんですの?!でも、ハチミツがでてくる様になったのは随分経っていませんか?」
「ハチミツは一年で取れたよ。3年掛かったのは、アレだよ。」
指を指す方には、花畑に5本ある木が立っている。
アレが不可能と言われる木だ。花は散っているけど、果実は大きく食べ頃だ。
「アレは!まさか、ホワイトアップルですか?!人工的に育てても実がならないのでは、ないのですか?」
「騎士に魔の森に行った時は土を少し掘って持って帰って貰ったんだ。それを木の土に混ぜたら、果実をつけてくれたんだ。魔の森が近いからかかも知れないけどね。」
ホワイトアップル、別名神の守護。
ホワイトアップルの果実をつける木があると、そこには魔物が近付かないと言われる木だ。
当然、何処の国でもホワイトアップルを研究したけど人工的に果実がなるホワイトアップルを育てられなかった。
ここの管理人は世界的偉業を成し遂げたと言える。
お蔭で父上が大々的に発表するとか言い出して、サプライズが台無しになる所だったよ。
父上は笑顔の母上達に拉致されていったよ。
曾祖父様もお祖父様もそれを見て震えていたっけ。
帰ってきた父上は震えながら
「サプライズを台無しにする所だったね、ごめんね?」
と言ってくれた。
何があったかは、聞かないほうがいいだろうな。
くわばら、くわばら。
「でも、サプライズが終わったら大々的に発表するよ?」
と言ってまた、攫われていった。
花畑はシルヴィアの為に作ったと、母上達は知ってるからな。
大々的に発表したら、花畑はシルヴィアから取られてしまう。
父上、よっぽど興奮してるな。
父上は母上達に任せておけば大丈夫だろう。
曾祖父様とお祖父様が
「魔の森に近いか、魔の森の土があればいいなら砦に植えて育てるから、早くサプライズをしてしまえシルバー。」
と、父上を、父上が拉致されている時に庇っていた。
曾祖父様もお祖父様も自分の妻には弱い様だ、ハハハ。
「では、ここには魔物が来ないのですね!ここであの冒険者に会えば、魔物が来ないかもしれませんわ!」
「ああ、そこは考えてなかったよ。ヴィーに喜んで貰う為だけに作ってたから。これで少しは婚約者らしい事ができたかな?」
「あぅ。シルバー様以外の婚約者なんていりませんし、シルバー様以上の婚約者もいませんわ!」
シルヴィアが顔を赤くしている。
やっぱり可愛いな。
そんな俺達を使用人と護衛騎士が生暖かい目で見ていた。
いや、俺達ピクニックに来てるんだから速く用意しろよ、お前ら!
手を振って仕事しろ。
と命じると、使用人がシートを指差す。
ああ、終わってたのか。
じゃっエスコートしますか!
「ヴィー、シートの準備が終わったみたいだから行こうか。」
手をシルヴィアに伸ばしエスコートをする。
花畑は円形で、中央に一本、それを囲う様に正方形の角の部分に四本のホワイトアップルが植えてある。
中央の一本の周りは花を植えてないから、ピクニックにピッタリだ。
花を見ながら、使用人も騎士達も一緒に料理を食べる。桜の花見ではなくハーブの花見だなこれは。
この世界のハーブは、花が枯れないで咲き続ける。
花の中に種が出来て、それが風邪に揺られて地面に落ちて、種から根がでて、その根が花の根と結びついて栄養をすべて種に渡す。
渡し切るまで、花が咲き続けて渡しきったらハーブごと枯れる。
だから、花の密が多くて濃い。
蜜蜂達は日に3本程度しか花の密が取れない程だ。
養蜂をやってる村は、ハーブではなく普通の花で密を集めるから、量も少なく、味も前世に比べると薄い。
ハーブはただの草の認識だ。
でも、この花畑を見れば誰もただの草とは思わないだろうな。
管理人の養蜂家はハーブは素晴らしい!と絶賛してる。
ハーブティーを教えたら、いつの間にかハーブティーが好きになった女性と結婚していた。
結婚祝いはハーブクッキーのレシピにしておいた。
どうしたって、花畑の景観維持の為にハーブを抜かなくてはいけなくなるから、ハーブが無料で貰えると夫婦揃って大喜びだ。
ゆっくり、まったり、シルヴィアと過ごす。
死にたくなくて、鍛練ばかりしていてはいけないよな。
昨日の疲れが出て眠くなっていたな。
シルヴィアが俺を見て、膝をポンポン叩いている。
なんだ?膝が疲れたのかな?うん?まさか膝枕か?前世では恋人はいても一度もしたことないな。
「お邪魔します」とシルヴィアの膝に頭を乗せる。
意外と恥ずかしいなこれ。
暫くすると自然とシルヴィアと目が合った瞬間、膝から飛び起きて落ちてきたホワイトアップルを掴む。
「ハハハ!空気が読めない果実だな?いや、空気を読んだから、俺を食べろ!って事かな?」
「びっくりしましたわ!シルバー様、それがホワイトアップルの果実ですか?本当に真っ白なんですね。」
「皮はね。中身はピンク、緑、赤、白だよ。シルヴィアも知ってるあの方の空間と同じ色だよ。」
「まぁ、あの方と同じなんですの?だから、魔物が来ないのかもしれませんわね。」
「ちなみに、ホワイトアップルの果実は無理に取ろうとすると全部腐るからやるなよ〜。」
果実を取ろうとしている騎士が、慌てて手を引っ込める。
それを見て、全員が笑う。
ハハハ、今日はいい日だな。
ホワイトアップルはシルヴィアと食べた。
驚いた事にリンゴ取りのスキルを覚えた。
ホワイトアップルの果実に触ると、取っていい果実が分かり取っても腐らないスキルだ。
使用人達にホワイトアップルの果実を取って上げた。
俺が取った果実では、スキルを覚えられないみたいだ。
残念。
俺の家族の分とシルヴィアの家族の分を取って、お土産にした。
ホワイトアップルの果実は、いままで食べたどのリンゴより美味しかった。
さぁ、屋敷に帰ろうか!
明日からまた、鍛練だ。全てはシルヴィアの為に。
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