Dawning
レビュー執筆日:2018/8/22
●優れたメロディと激しく切れ味の鋭いサウンドが組み合わさって生まれた狂乱の世界。
【収録曲】
1.The Lightning
2.Grasshopper
3.Answer And Answer
4.Zero Gravity
5.シベリアンバード ~涙の渡り鳥~
6.Scarlet Shoes
7.コスモス
8.Wild West Mustang
9.Starlight
10.ハートに火をつけて(Album ver.)
11.Caution!!
12.黒い森の旅人
13.The Silence
こんな書き方で始まるのも何ですが、9mm Parabellum Bulletの楽曲はある意味「ワンパターン」です。まるで歌謡曲のような分かりやすい短調のメロディに、メタルの要素を取り入れたハードな演奏、そしてサビに盛り上がりを持っていくベタな曲構成、というのが大きな特徴となっており、これが9mm Parabellum Bulletというバンドの「様式美」と言ってもいいかもしれません。
これだけだと、似たような曲ばかりで飽きてしまうように見えるかもしれませんが、実際にはあまりそういう印象を受けません。言葉では上手く説明できないのですが、彼ら(特に主に作曲を手掛けるギタリストの滝善充)はメロディを作るセンスが非常に優れているのではないのでしょうか。それゆえにメロディラインが多彩なため、過去作と似た雰囲気でありながら焼き直しのイメージはほとんどなく、毎回新鮮な気持ちで聴くことができるのではないかと思います。
また、激しいながらも引くべきところで引いて押すべきところで押す、メリハリの付いた演奏を聴かせるというのもこのバンドの魅力の一つと言えるでしょう。初期の彼らは少々勢い任せに突っ走るようなところがありましたが、今作ではそのような傾向はほとんどなく、練りに練られたメロディと切れ味の鋭いサウンドでリスナーを狂乱の渦へと誘い込んできます。特に『Scarlet Shoes』や『The Silence』において顕著で、前者はサビの盛り上がりが半端ではありませんし、後者は最後の最後まで聞き逃せない展開に目が(耳が?)離せません。
いわゆる「ラウドロック」にカテゴライズされることもある彼らですが、その割にはメロディが親しみやすいため、そういう音楽の入門としてはうってつけではないでしょうか。ただし、「入門」といっても、決して「分かりやすい非個性的な音楽」といわけではなく、むしろその分かりやすさを個性にしてしまっているところがあるので、そういう音楽を聞き慣れた方にとってもお薦めできる一枚となっています。
評価:★★★★★