8話
「蓮子、その冥来刀は霊力を溜めることが出来るのは前に教えたよな?」
「ええ、もちろん覚えているわ。」
「実は、冥来刀は霊力を『100%以上』溜められる。刀身を越えて力を溜められるんだ。」
「…つまりどう言うこと?」
「冥来刀が100%以上の霊力を貯蔵している時、冥来刀の真の力を解放できる。蓮子、強く念じるんだ。『冥来刀よ、その力を示せ!』と…」
化物の拳が直撃する、その寸前だった。
「冥来刀よ!真の力をここに示せ!!」
蓮子は残った力を振り絞って立ち上がり、冥来刀を振り上げ、声を上げた。
すると、冥来刀が強い閃光を放ち、目の前の化物すら超える、大きな光の刃を形作った!
「な、なんなのよ…このバカでかい刀身は!?」
きららは予想外の出来事に狼狽えている。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
蓮子はそのまま冥来刀を思い切り振り下ろすと、光の刃は化物を一刀両断にした!
「ギャッシャァァァァァァァ!!!」
巨大な化物は世にも恐ろしい断末魔を上げ、消えてしまった。
「うそ…でしょ?」
きららは放心した様子でその場を立ち尽くした。そして、
「ひいいいいいい!」
と情けない悲鳴をあげて、境内の裏側へと逃げて行った。
蓮子は御神木に残された黒い藁人形を見ると、安心した様子で、その場に倒れた。
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「くそ!あの小娘!これで終わったと思うなよ!!」
きららは自宅に逃げ帰ると、すでに復讐心を燃やしていた。
「あ!藁人形をあの場に残してきちまった!取りに戻るか…」
さっきは取り乱して逃げてしまったが、蓮子は満身創痍だった、あの場で気絶していることは大いにあり得る、ときららは考え、また釘堂神社に戻ろうとした。しかし、
「なんだ?足に力が入らない…いや、足だけじゃない!?手が…乾涸びていく!」
きららは自分の霊力の限界を超えて、藁人形を使っていた。それは今回だけに限らない。これまで呪い殺してきた時も、その深い嫉み、恨みは、きららの霊力を越えて、魂までも消耗していた。
「ああ…悔しい…くそ…こんな惨めな最期だなんて…」
きららの身体はみるみる萎んで、ミイラの様になって死に絶えた…
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きららとの死闘を終えて3日経った。
しかし蓮子の身体はまだ癒えず、事務所は休業して部屋で休んでいた。
「冬一〜、湿布替えてよ」
「だから無理だって。物に触れられないんだから」
「うう〜、身体中が痛いよう」
「病院行こうぜ?」
「お金勿体無いもん…この事務所、稼ぎ良くないんだから」
そんなやり取りを交わしていると、テレビで奇妙なニュースが流れた。
アパートの一室で、ミイラの変死体が見つかったと。テレビに表示された名前は「伊狩きらら(27)」…
「あの女、やっぱり限界を越えてたんだな」
「27歳だったんだ…初めて会った時から全然そうには見えなかったわ。」
「魂が磨耗しているのに気付かずに、藁人形を使ってたんだな。『人を呪わば穴二つ』ってことわざがあるが、まさにあの女が体現していたな」
蓮子は枕元に置いている冥来刀を眺めた。自分も無理をすれば、きららのように乾涸びて死んでしまうかもしれない…
「蓮子は大丈夫だ!おいらがついてる!お前が無茶しそうになったら、喉笛噛みついてでも止めるからな!」
「それじゃ、死んじゃうじゃない」
蓮子はくすりと笑った。
藁人形はあの後、神社で焼いて処分した。もう2度と、その呪具による被害がないように…
兎にも角にも、嘘つき霊能力者は、一応霊能力には目覚めた。しかし、まだまだ未熟もいいところ。蓮子の霊能事務所は今始まったばかりだ。
一旦、ここで一区切りになります。
ここまで読んてくれて、本当にありがとうございます!