プロローグ
"清水蓮子"は霊能力者である。
と言うのは、真っ赤な嘘で、彼女は霊なんて見えないし、テレパシーだって使えない。
それどころか、蓮子本人が超常現象なんてものを全く信じていないのだ。
でも、蓮子の職業は霊能力者だ。若くして、池袋で霊能事務所を営んでいる。
しかも、顧客満足度は驚異の100%だ。
なぜ霊能力のない彼女が、これまで仕事をこなしてこれたのか?
答えは単純。依頼の実態が心霊現象じゃなかったから。
悪霊に憑かれて肩が重い?それは連日の仕事疲れだ。
夜中にポルターガイストが鳴る?ちがう、屋根裏にネズミが居るのだ。
でも、蓮子は決して真実を明かさない。
依頼者にとっては、悪霊こそが原因であり、真実なのだ。
ならば蓮子のやることは、除霊と称して、肩こりを解消、ネズミを駆除してやることだ。
蓮子の顧客は皆、満足げに帰る。蓮子はそれが嬉しかったし、これからも嘘を続けようと思っていた。
しかし、蓮子には悩みがあった。
蓮子の事務所は先代の"三峯徳子"から引き継いだ。
実は今の顧客も、ほとんど彼女から引き継いでいる。
つまり、蓮子自身は新規開拓できていない。
仕事は解決してしまえば、そこで終わり。
肩こりはいずれ治る。ネズミもそろそろ戻ってこないだろう。
これでは先細る一方だ。
そこで、蓮子は考えた。
(心霊スポットで除霊のライブ配信したら、面白いんじゃない?)
これは名案だ、事務所の知名度も上がるし、投げ銭とか臨時収入にも繋がるかも…なんて夢みたいなことを、蓮子は妄想していた。
しかし、この安易で罰当たりな計画をはじまりに、蓮子の運命の歯車は大きく動き出す…
これはそんな嘘つき霊能力者の物語。