親切にしてくれた令嬢
ここは地下スラム街。光が届くのは入り口だけ。じめじめとしている。毎日、ロウソクのわずかな光が頼りだ。ここにはいろんな人が住んでいる。没落した貴族を始め、罪を犯した人や、貧困にあえいでいる人や、差別される人など。私は12才の少女、両親とこの地下スラム街に住んでいる。洗濯物は乾かない。衛生面だってあまりよくはない。私はここで生まれ育った。今日も両親から買い物を頼まれる。私は地下スラム街から地上へと出る。太陽の光がいつも目にまぶしすぎる。私は広い道を歩く。その道の両方には高い建物が並んである。道行く人々、馬車や騎士や、地上の人たち。私を見て鼻をつまむ人々。もうこんなのは慣れている。私はこの長い黒髪を切りたかった。けれども、そんなお金なんてなかった。私はいつもの地上で指をさされて笑われている。私はなぜかこの日はそれに耐えられなかった。だから、早く買い物を済ませようと走る。しかし、私は道につまづいて転んでしまう。私は地上のみんなに笑われている。私は泣きたくなった。もう生きていても、これからも地下スラム街でしか生きられない。私は目に涙をためる。その時だった。ひとりの手が差しのべられた。私は顔を上げる。笑顔の令嬢がこちらを見ている。周りが静かになる。私は令嬢の手をつかんで立ち上がる。私はこの時にこの令嬢に対して憧れをいだく。すると、その令嬢は名も言わずに去っていった。私は令嬢の背中をじっと見つめていた。