第六話 S級の勧誘
「私達はお前の力を確認しに来た。おまえのその『キズナ』というユニークスキルをな」
「ど、どうしてそれを……」
俺は誰にも言っていない。
とするならば、連盟にいた誰かか?
だが彼らはこの能力が非凡であることを知るはずがない。
仲間一人一人に目を遣る。
だが皆、勢いよく首を振る。
「私達は優れた人間を見逃さないように日々心掛けている。情報にはどのギルドよりも気を配っている」
それにしたっておかしい。このスキルの異様な強さに気づくのが早すぎる。
それに加えてどうしてこの場所にいることが分かった。今来たばかりだぞ。
「ツ、ツバキにユニークスキル?」
カラサはその事実に驚く。
だが俺もエギルも気にしていられない。
「皆様に比べたら大した能力じゃありませんよ」
「それは私達が判断することだ。これから私とスノラ様と一緒にこのダンジョンに入ってもらう」
「エギルさんと、スノラさんと!?」
「もちろんボス戦は君達だけで挑むといい。経験値が分散するのは嫌だろうからね」
突然のことに、何を言えばいいのか迷っていると、周囲が騒がしくなった。
「あれって、スノラ様じゃない?」
「ほんとだ! やっぱカッコいい……」
「あれってフィンブルの冬のスノラじゃねえのか?」
「ほんとだ。こんなとこに何のようなんだろう」
真っ白な雪のような髪の青年が大勢の部下を連れて歩いている。
スノラ・ストゥルルソンだ。
「初めまして。スノラ・ストゥルルソンと申します」
「は、初めまして」
「申し訳ない。突然大勢で。来ないでって言ったんだけど聞かなくて」
そう言ってあどけなく笑う。
「い、いえ。 大丈夫です!」
緊張はする。
だが何だかスノラと話していると旧友と話しているかのような心地良さすらあった。
「エギルから話は聞いたかな? 一緒に行くのは僕とエギルだけ。もし君が良ければ、その力を見せて欲しいんだ。そうしてそれが本物なら……」
スノラは友達を遊びに誘うように言った。
「僕のギルドに来ない?」
俺、仲間、そしてそこにい合わせた人々が
「えええええええええええええええ!!」
と声をあげた。
スノラやエギルは平然としている。
「どうだい?」
さっきから驚いてばかりで脳みそが追い付かない。
だがこれだけは確認したかった。
「仲間は、どうなるんだ?」
スノラは少し考える。
「そうだね……。僕は君がそうしたいならそうすべきだと思う。でも……」
エギルは首を横に振る。
「やっぱダメみたいだ」
少しがっかりしたように言った。
俺は仲間を一人一人見る。
全員がヴォイドだ。
ユニークスキルを持っていない。
これから先、発現するかもわからない。
だが俺は違う。
それを発現させた。
その上、効果は一流のものだ。
S級ギルドの勧誘もされている。
……。
でもまあ、答えは決まっているな。
「すみません。俺はやっぱりこいつらを置いてはいけません」
はっきりと、それを伝えた。
「そうか。仕方ないね。でも僕の仲間を悪く思わないでくれ。みんな実力でここに入って来たんだ。色々なものをかけて強くなった。それこそ、仲間を置いてきた人だっているだろう。だから、例外を認めたくないんだ。僕は全部のダンジョンをクリアできれば、それでいいいんだけどね」
そういって、後腐れなく笑った。
「じゃあ僕達は行くよ。また会えることを願っているよ」
あっさりと諦めたスノラの後を、エギルは焦って追った。
彼女は去り際に、スノラの提案を断った俺を一瞥した。
「良かったんですか?」
クルクマが少し心配そうに聞く。
「うん。これで良いんだ。もしあのギルドに入れてもらっても、あんなエリート達の中に入ったら、ストレスで死んじゃうからね」
それは本心であった。
「それじゃあ、行こうか。もしかしたらS級ギルドに入る必要はないかもしれない。僕達『トラウム』がS級になるかもしれないしね」
半分は冗談。だが半分は、本気だった。
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