第三話 能力お試し
俺に、このヴォイドの俺に、ユニークスキル……。
あまりの衝撃にその文字を見つめることしかできない。
「どうしたんですか?」
様子のおかしな俺を見かねてクルクマ達が駆け寄る。
「……なあクルクマ、ちょっと、ほっぺ叩いてくれない?」
「どうしたのあなた、遂にそっちに目覚めちゃったの?」
俺はアオイにツッコミを入れることすら出来ない。
「……これ」
その一文を指さす。
みんながその先を覗く。
全員が固まる。
「「「「ええええええええええ!!!」」」」
普段あまり声を出さないぺルビアナとオトギリまでもが声を出した。
「これってやっぱ夢?」
「確認してあげるわ」
パチン!! 加減なくアオイが頬をひっぱたいた。
「では私も」
え、なんで?
オトギリが同じように俺の頬をはたく。
でも痛いのが、とっても嬉しい。
そっちに目覚めちゃったのかもしれない。
「やっぱり夢じゃなさそうだ」
「うっそ、じゃあ本当に……」
「ユニークスキル、ゲットだぜ!!!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
その場にいた俺のことを知らない人ですら祝ってくれる。
ユニークスキルが目覚めた瞬間というのは自然とこうなる。
誕生日のようなものだ。
無条件で祝ってもらえる。
「おめでとう」アオイが言う。
「おめでとう」クルクマが言う。
「おめでとう」ぺルビアナが言う。
「めでたいな」オトギリが言う。
「おめでとさん」誰だこのおっさん。
「おめでとう」ファラが言う。
「ありがとう」俺が微笑む。
ファラに、ありがとう。
ヴォイドに、さようなら。
そして、全ての能力者に
おめでとう。
良い、最終回だ。
……ん? なんか違う。
いや終わらない終わらない。
むしろ俺達の冒険はこれからだ、的な。
なんかそれも終わりそうでやだな。
まあ何はともあれ。
「試しに行こう!!」
「ええ!」「おう!」「……」「ああ」「はい!」全員がそれぞれの反応で肯定する。
俺達は話に出たライド・レイの塔へ行くことにした。
ユニークスキルがなくても攻略できる場所だ。お試しとしては最適だ。
ライド・レイの塔へ着くと、強い不安に襲われた。
もしも、このユニークスキルが弱かったら……。
今までヴォイドでもやってこれたのは、いつか凄いユニークスキルに目覚めるという夢があったからだ。
でももし、これが弱かったら、もうその先はない。
ユニークスキルが進化するというのは稀にあることらしいが、そのどれも、元から優秀なスキルだけだ。
「どうしたの? さ、早く試してみましょう!」
アオイに促され、俺は塔へ入った。
入ってすぐのところには弱いモンスターしか住み着いていない。
目の前に低級のアンデッド『スカル・ベイ』が三体現れる。
意を決する。
目を閉じ、集中する。
使い方は知らない。
感覚だ。手を動かすのと同じ。
俺は『キズナ』を使った。
……。
あれ、おかしいな……。
もう一度。『キズナ』!
……。
おかしい。身体に変化がない。
どんなスキルでも、なにか変化があるはずだ。
けれども何も起きない。
どうしてだ。一体、どうして……。
「え!? ちょっとなにこれ!!」
声に反応し前を向くと、三体のスカル・ベイが倒れている。
「アオイが一斬りで倒しちゃいました……」
クルクマが驚いたように言う。
「何か力が湧いてくるっていうか、やばいわ。これってもしかしてあんたのおかげ?」
「アオイさんだけじゃありません。私も何だか魔力が有り余ってる気がします」
「私も、アオイさんと同じです。いつもより、ずーっと強い魔力を身体の中に感じます」
うんうん、とぺルビアナも頷いている。
残ったオトギリなんて、もうこの場にすらいない。
もしかして、俺の能力って……。
『キズナ』
それが文字通りの意味だとしたら。
仲間を強化する能力。
思えば目覚めたのはファラが加入した瞬間だった。
つまり、ギルドメンバーが五人になった瞬間だ。
それが条件だった。
仲間との絆。
もしもこの五人じゃなかったら、発現しなかったのだろうか。
皆ではしゃぎながらダンジョンの奥に進む。
けれど、魔物は現れない。全部死んでいる。
そうしてそのまま最奥にあるボスエリアに着いてしまった。
そこにはオトギリが立って居る。
ボスである『スカル・ファラド』はバラバラになっている。
スカル・ファラドは本来なら、この五人がそろって丁度安定するくらいのボスのはずだ。
それを、たった一人で……。
俺のユニースキル、もしかして、すげえ強い?
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