第十八話 『魔法付与:陽獄炎弾』!!
『魔法付与:陽獄炎弾』!!
剣身が燃えるような赤色に変わり、その周りを小さな炎の竜が跳んでいる。
どうやら、成功したようだ。
ちょーかっけえ!
さっと一振り。
すると炎の竜がその方向へ飛び壁を燃やす。
これきたな。
スキップしながらボスの部屋に入る。
もう見飽きたクリスタルドラゴンがいる。
敵の叫びを聞くより早く、剣を振る。
炎の竜が跳び、敵を燃やす。
陽獄炎弾を撃った時と同じだ!
二回、三回と振ってみる。
竜が二、三体飛んでいく。
敵はいつもの壁でそれを防ぐ。
だが今の俺はそれで終わらない。
『バートバット』で壁を越え敵の上を取る。
遠隔攻撃でこの威力。直撃すれば……!
「くらええええ、陽・獄・炎・斬!!」
紅の剣身が敵の頭部へ当たる。
その刃はすぐには届かない。
しかしじりじりとクリスタルを溶かし、遂に。
バリンッ!
水晶が砕けるような重い音。
そこから地面へ着くまでは一瞬だった。
敵は頭だけでなく、その尻尾まで真っ二つに切れた。
その切れ目には炎がびっしりと詰まっていた。
何だこの最強コンボ。
今までは完全にこのマントに頼りきりだったが、かなり魔法剣士魔法剣士してるくね、俺。
燃え尽きたように色を鈍色に戻す剣を見つめ、宝箱を開ける。
なんだまた鎧かよ。
鎧!?
二度見である。
宝箱に顔を入れたんじゃないかというくらい覗き込んだ。
手にして気づく。
本物じゃん。
誰もいないのは分かっているが、辺りを見回す。
それから鞄とか剣とか諸々降ろして、マントとか防具を脱ぐ。
鎧を着てみるとぶかぶかだ。
でも途端に光だし、サイズが俺に合う。
軽いな、これ。
ぴょんぴょんと跳ねて確認する。
見た前のゴツさがシンジラーレナーイ。
ナンデコンナニカルインデスカーー。
どうしよう。これ来て外出ると目立つよなあ。
変に目を付けられるのも嫌だし脱いでく?
でもカッコいいし自慢したいし。
どうせいつかは着るんだし。
という訳で着て外に出ちゃいました。
辺りにいる冒険者はみーんな色々な鉱石やらを使って鍛冶屋で仕立てた防具を着ている。
パッと見た印象では目立つということはない。
ただ、
「あ、あんた、ソロでビルプルデスの塔を攻略したのか!? それにその装備……」
見る人が見ればすぐ分かってしまう。
話しかけた男は丸刈りの黒人でいかつかったが、割といい奴そうだった。
だって子供みたいに顔輝かせてるし。
「ま、まあね。偶然だよ偶然。君も見たところ一人みたいだけど」
「いや、仲間はそのうちに来る。つっても俺のギルドはBランク。今日が『ビルプルデスの塔』初挑戦だ」
「あんたがギルドマスター?」
「ああそうだ。『ブラック・クラック』だ。夢は世界一のギルドだ!」
恥ずかしげもなく言う。
「あんた、いい奴そうだ。名前を聞いても良いか? 俺はツバキ・ルードレッド」
「俺はロバート・カーターだ。ロブでもボブでもボビーでも、好きに呼んでくれ」
「よろしくボブ。うん。なんかボブって言いやすい。攻略情報は仕入れたか?」
「もちろんだぜ。雑魚敵からラスボスまで全部な」
「ところで攻略パーティーにヴォイドはいるか?」
「ああいるぜ。二人いる。俺はヴォイドだからって差別はしねえ。強くなる根性があればそれでいい」
「モノの分かる奴だな! うちのギルド『トラウム』もおんなじだ!」
「そうか!! 今時珍しい奴だ。それにビルプルデスの塔がクリア出来る程の実力者。でも、名前を聞いたことはないな。最近作ったのか?」
「いや、実を言うとこれまで全員がヴォイドだったからさ。今Dランクのギルドなんだよね」
「こりゃあ驚いたな。てことは最近ユニークスキルに目覚めたわけだ」
「そういうこと」
「おーーいボビー」
手を振りながら近づいてくる人達がいる。
白人が二人、黒人が三人、黄色人種が一人だ。
「それじゃあ、行くよ。また会おう、ツバキ」
「頑張れよ、ボブ」
そう言って俺も手を振って別れる。
いい出会いというのは、気持ちを晴れやかにしてくれる。
でもってもう一つ、思い出したことがある。
全然考えてもなかった。
それどころじゃなかったし。
してくるか。
ギルドのランク上げ申請。
俺はギルド連盟へ寄った。
ギルドのランクは全てギルド連盟に張り出されている。S級から順番に、だ。
ギルドのランクは実績によって決まる。
クリアしたダンジョンや、達成したクエスト、あるいはギルドの総人数や資産などなどだ。
ギルドのランクが上がるメリットは、申し込みが増えることにある。
ちなみにうちも冒険者募集の張り紙はしているのだが、全く来ない。
まあこれが普通。
資産力がなきゃそもそもいい宣伝すら出来ない。
あ。
そういや俺、金がない。
晩飯どうしよう。
そんなことを考えながら、ビルプルデスの塔踏破の報告を今更行った。
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