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第十話 A級のダンジョン 限定アイテム

 気づいた瞬間、俺は宙に浮いていた。


「ツバキさん!!」


 俺は敵の攻撃を受けたのだ。

 凄い勢いで飛ばされ、鋭いクリスタルが生えた天井が目の前に差し迫る。 


 このままの勢いでぶつかれば間違いなく針串刺し。


 しかし俺だってオーバーヒールのバフを受けている。

 キズナのバフとの合わせ技ほどではないが、これでも十分。


「メーゼ・ド・ラダ!」


 天井が、どろっとした液体をこぼす。

 メーゼ・ド・ラダはものを溶かす呪文だ。

 本来なら、土を沼のようにドロッとさせる程度だが、今ならこのクリスタルさえも溶かせる。


 勢いを変えないまま、天井へぶつかる。

 しかし身体に無残に穴が開くことはない。

 ドロッとしたスライムのような液体がクッションになり衝撃が和らぐ。

 けれど予想に反して、身動きが取れない。

 重力に即して落下するはずの身体がそのねばねばに捉えられ、動けない。


「俺は大丈夫だ! 気にせず戦ってくれ」


 あ。赤い目がすっごい見てくる。

 ちょっとヤバいんじゃないのこれ?

 

 敵が口を大きく開く。そこには赤い炎が溜まっていく。

 そうしてそれは俺の方を向いている。


 好都合だ!


「俺は大丈夫! 攻撃しろ!」


 仲間たちは顔を見合わせる。

 

 べルビアナが大剣を構える。

 アオイがその後ろで姿勢を低くし皆を守るように盾を構える。

 クルクマが杖を構える。ファラはその横で彼女の魔法を補助している。

 オトギリは一番後ろで跳躍の準備をする。


 黒い獅子の顔程まで赤の炎の球は膨らむ。


「ガイア……」

「フィードメル・エタ……」


 敵の咆哮と共に、それが俺の所に飛んでくる。


「テンペスト!!」

「フィーリア!!」


 べルビアナの剣撃が直撃し、緑色の炎が赤と黒の炎を喰らう。


「グウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 今までで一番の咆哮だ。


 アオイ達は風圧で数メートル下がった。

 

 俺はというと、その直前にオトギリによって回収されていた。


 男がお姫様抱っこされるというのは、かなり恥ずかしいということを知りました。


「勝った、のか……?」


 灰色の煙が去ると、獅子が床に倒れているのが分かった。

 そうしてそれが、はじけるように消えた。


 敵がいたその場所に、宝箱が現れた。


「これって、普通の宝箱じゃないよな」


 普通の宝箱は赤と金色だが、これは緑をベースに、ここのクリスタルがあしらわれている。


「開けてみてよ」アオイが促す。


「う、うん」


 俺は、代表してそれを開ける。


 そこには、一枚のマントが入っていた。

 

 取り出して、広げてみる。


 そこには赤地に先程の獅子と思われる動物がデフォルメされて描かれていた。


「多分、限定装備よね」


「でも何の条件だったんだろう?」


「ビルプルデスの塔に初挑戦で、なおかつ一階の敵全員討伐じゃないでしょうか」


「うーん。でも、そんなこと他のパーティもやるんじゃない? それこそ『フィンブルの夜』みたいな人たちが。まあいいわ。そんなことより、これ、どうするの?」


「いりません」

「いらない」

「要らぬ」

「私もちょっと……」


 まあ確かに女の子が着るのはちょっと抵抗があるよね。

 ちょっと厨二的だし。

 でもカッコいいと思ってしまう自分もいる。

 なんせ限定アイテムだし。

 多分俺らしか見つけてないし。


「でもなあ、外で着るには恥ずかしいなあ」


「じゃあダンジョン内限定で着なさいよ。ていうかまだ効果も分からないし」

 

 ひょいッと、オトギリが現れ俺にそれをかける。


「お、おい! もうちょい慎重にだな! 呪いでもついてたらどうするんだ!」


 マントが黒く光る。


「ホレ言わんこっちゃない!」


 あれ?

 

 俺は右手をグーパーグーパーと開いては閉じ、を繰り返した。

 なんか、新たなスキルの獲得と同じ気分。


 身体に従い手を前に構える。

 するとそこから黒い炎が現れる。


「あちっ! ……くない」


 前に押し出すイメージを作る。


 するとそれは勢いよく飛び出し壁に衝突する。

 クリスタルは内側に黒い炎を宿したかのようになった。


 同じように左手を出す。

 今度は赤い炎が現出する。

 それを飛ばすと、クリスタルは燃え、溶けた。


「すっげえ威力」


「これ、かなりレアアイテムよ。外に出たら情報屋に売る?」


「いや、このことは秘密にしておこう。変に喋って、ヴォイドが利用されるのは嫌だ」


「とかいって、そのカッコいいのが案外気に入って独占欲が湧いたとかじゃないでしょうね?」


 ちょっと合ってるから困る。


「おい」

 

 オトギリが宝箱を覗いて言う。


 近づいて、俺ものぞく。

 

 するとそこには一枚の紙が入っていた。


「なんだこりゃ。ええっとなになに……。残る装備 2/3『ヴァルパーレ遺跡』『ファードラギスの塔』に眠る。目覚めぬ者を連れて、眠りを覚ませ。……どういうこっちゃ」


「もしかして兄弟装備じゃないでしょうか?」

 

 確かに聞いたことがある。

 装備を手に入れると通常、ステータスアップが見込める。

 だがたまに、スキルを得ることの出来る装備がある。

 これはまさにそれだ。

 またそれとは別に、その装備を一式揃えると装備版のユニークスキルみたいなものが発動する、兄弟装備というものがあるというのを聞いたことがある。


 といってもそんなものは『フィンブルの夜』のようなS級でなければ手に入れることの出来ない超難易度の高いものだ。


 実際、『ファードラギスの塔』はつい一年前にようやく攻略されたような超ハイレベルのダンジョンだ。だが逆に、『ヴァルパーレ遺跡』は初心者向けだ。それがまだ手に入れられてないというのはどういうことだろう。


「目覚めぬ者?」アオイが首を傾げる。


「敵はツバキしか狙わなかった」


 べルビアナがぼそっと言った。


 言われてみれば、反撃はそこそこしたが、直接的な攻撃は俺にしかされなかった。

 

「ああ、たしかにそうだったわね」


「てことはもしかして、ユニークスキルを持たない人がいるパーティで攻略って条件?」


 そう考えれば、俺だけ攻撃をされたのもうなずける。


「もしこれ一式、揃えたら……」


「でも、変よね。『ファードラギスの塔』はともかく、『ヴァルパーレ遺跡』は初心者のヴォイドだっているはずでしょう?」


「まあこのことは出てから考えよう。それより、どうする? ボスまで行くか?」


 みんなは笑顔でうなずいた。


「当然よ。ここまで来たら、ボスも楽勝よ!」


 そうして俺達は、階段を登り先へ進んだ。


本作を読んでいただきありがとうございます!!


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