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第293話

「ようこそ! ケイ殿!」


「お久しぶりです。セベリノ殿」


 魔人大陸を後にしたケイは、使者と共にドワーフ王国へと向かった。

 今回の依頼を達成したことによる報酬を受け取りに来たと言うのも、理由の一つとしてある。

 ドワーフ王国の王城に到着してケイが使者に案内されたのは、王太子であるセベリノのいる謁見の間だった。 

 ケイが入ってくるのを見たセベリノは、歓迎の言葉をかけ笑みを浮かべた。


「今回はお疲れさまでした」


「いえ、魔人の彼らの頑張りによる所です」


 セベリノによって依頼された魔人たちの戦闘技術の向上。

 たしかにケイが色々と指導をしたことによって、彼らの戦闘方法は幅が広がった。

 以前のように、ドワーフ族が作った武器の性能に頼るだけではなくなり、個人個人の持っている力による戦いができるようになった。

 今でもドワーフ製の武器を所持しているようだが、今後はあまり使う場面も減ってくることだろう。

 ドワーフの協力があったとはいっても、人族の侵攻を防いだのは彼ら自身の力によるもの。

 ケイはそのことに力を貸しただけで、最後は魔人たちが努力した結果だ。

 決して謙遜で言っているつもりはない。


「……マカリオ殿はお元気ですか?」


 ドワーフ王国は、現在王太子のセベリノがトップに立って国を動かしている。

 彼の父で、ドワーフ市民にとって英雄の扱いを受けている王のマカリオがいるのだが、彼は年齢的にもかなりの高齢のため、最近では体調を崩すことが多いらしく、他国の要人ともなかなか会うことができない状況だ。

 誰にも話していないが、実は彼もケイと同じ転生者で、前世の記憶を使うことにより魔道具開発に尽力してきた人間だ。

 この国に初めて来たとき以降会えていないので、体調の方が心配になって来る。


「ケイ殿が来ることを伝えたら会いたいとは言っていたのですが、風邪を引いたらしく休んでいる状況です」


「そうですか……。残念です」


 息子のセベリノからしても、気難しい人間だと感じるマカリオ。

 そんな父が、ケイの訪問には毎回会いたいと言っているのは不思議な感じだ。

 きっと何か2人に通じ合う所があるのだろう。

 しかし、体調のことを考えたら安静にしてもらうしかない。

 父の考え出す魔道具は、誰も思いつかないような物ばかりで、市民の生活を豊かにさせる物ばかりだ。

 ドワーフだけでなく、他の人種もマカリオのことを必要としている。

 セベリノとしても、父のマカリオには長生きをしてもらいたいところだ。


「ところで、逃げた人族のことなのですが……」


「はい……」


 マカリオのことから話は変わり、セベリノとケイは今回攻めてきた人族のことを話し始めた。


「どうするつもりですか?」


「……どう、とは?」


 逃げた人族は、国としてはかなりの小国。

 そのため、魔人大陸に活路を見い出そうとしたのだろうが、それが大失敗に終わり、多くの兵が死に、軍としてもほぼ壊滅的な状況になったことだろう。

 また魔人大陸へ攻め込もうとすることすらできないだろうし、放って置いても潰れてしまう国だろう。

 ケイとしても、このまま放置して潰れるのを待つだけだ。

 そのため、セベリノの言いたいことがケイとしては分からない。


「ケイ殿なら見に行けるのではないでしょうか?」


「……どういう意味でしょうか?」


 セベリノの言葉に、ケイは若干警戒心が湧く。

 たしかに、ケイの膨大な魔力をもってすれば、人族大陸へ転移してエヌーノ王国へ行くことはできる。

 魔人たちが戦う相手の確認をするために一度潜入したので、今からでも大丈夫だ。 

 しかし、転移が使えるということは、カンタルボス王国の人間以外には秘密にしている。

 セベリノの話し方だと、ケイが転移を使えるということを知っているかのような口ぶりだ。

 何か秘密を探る魔道具でもあるのかと勘繰りたくなる。


「転移の魔法が使えるのではないですか?」


「……リカルド殿から聞いたのですか?」


 思った通り、セベリノはケイが転移の魔法を使えるということを知っているようだ。

 知っているとしたら、一番先に思いつくのはリカルドだ。

 しかし、友人の彼が貴重な能力を軽々に話すとは思えない。

 それが分かったケイは、セベリノに対して更に警戒を高めた。

 この場にセベリノ以外がいないのは確認しているが、もしかしたら気配を消す魔道具なんて物もがあるかもしれない。

 そう思ってケイは探知の魔法を発動させようとした。


「いえ、父がケイ殿なら使えるのではないかと……」


「なるほど……」


 セベリノの言葉で、ケイは一気に警戒心を解いた。

 考えてみたら、マカリオも日本人の転生者。

 ケイのこれまでのことから推測して、転移の魔法のことを察知したのかもしれない。

 バレるようなことをしている自覚があるため、それだけでケイは納得してしまった。


「ご安心ください。言いふらすようなことは致しません」


「ありがとうございます」


 転移が使えるということが広まれば、その能力を悪用しようとする人間が寄って来る可能性が高くなる。

 そんな面倒なことになるのはケイとしてもごめん被る。

 バラされないなら、知られていても構わない。


「ケイ殿なら潰しに行けるのではないでしょうか?」


「……軍隊が壊滅状態の小国ですからね。可能だとは思います」


 たしかに潰しに行こうと思えば潰せる国だとは思う。

 それに、ケイにはエヌーノ王国の何倍もの大国だったリシケサ王国を潰すことに成功した経験がある。

 今回は魔族を利用するということはできないが、そんなことをしなくても潰せるだろう。


「潰して来いということでしょうか?」


「後顧の憂いを絶つためにもそうしたいところなのですが、恐らくケイ殿が出るまでもなく潰れると思います。まずは現状を見て来てもらえますか?」


 てっきり潰して来てほしいのかと思ったが、そうでもないらしい。

 セベリノの言う通り、ケイが何かしなくてもエヌーノ王国は潰れるのが目に見えている。

 隣国の侵攻なのか、それとも飢餓状態の市民による反乱になるのかの違いでしかない。

 それだけ今回の魔人大陸の侵略にかけていたはずだ。

 ケイが危険な目を冒す必要はない。

 潰れるのを確認したいとは、セベリノは心配性なようだ。


「報酬と言っては何ですが、今回のとは別に魔道具を1つ差し上げます」


「……分かりました。いってきます」


 魔人族の戦闘技術の向上の報酬がまだ決まっていないが、見に行くだけで更に魔道具がもらえるとなると話が変わってくる。

 結構長いこと島に帰っていないので、そろそろ子や孫たちに会いたいところだが、報酬としてはかなりおいしい。

 そのため、報酬目当てのケイは、エヌーノ王国の状況の確認に向かうことにした。


「レイナルド殿には、もうしばらくケイ殿をお借りすることを伝えておきますね」


「すいませんが、そうして貰えますか? あいつに任せっきりなので……」


 お互い国から出ることができない者同士のため手紙によるものだが、セベリノはレイナルドと交流があるらしい。

 高速で飛ぶ鳥を使った伝達方法で、3、4日のタイムラグがあるが、情報を共有できる重要な方法だ。

 ケイとしては、いきなりいなくなって日向に行き、帰って来たらすぐさま今回の魔人大陸へ行くことになった。

 その間、アンヘル島のことは全て息子のレイナルドへ任せてきてしまった。

 しっかり者の長男レイナルドに、もしもの時は次男のカルロスがいるのだから大丈夫だろうが、さすがに長いこと任せっきりなので申し訳なく思っている。

 そのため、また少しの間任せることを頼んでおいてもらえるのはありがたい。

 ケイはレイナルドへ伝えておいてもらうことを、セベリノに頼むことにした。


「では、行ってきます!」


「お気をつけて!」


 翌日、ケイはセベリノに一言告げ、エヌーノ王国の現状を探りに転移していった。



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