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第279話

「斥候が戻ってこない?」


「はい」


 ケイが侵入者を捕まえて数日が経つ頃、その侵入者を送りこんだエヌーノ王国の王城では、宰相の男が送り込んだ斥候部隊が戻らないという報告を受けていた。

 元々、小国なゆえに少数しか送ることができず、段階的に人を送り込むつもりだったが、まずは拠点となる場所の捜索を指示して送り込んだ者たちとの連絡が完全に途絶えた状態らしい。


「生存も確認できない状況です」


「チッ! 魔物か魔人にやられたか……」


 せめて生存さえ確認出来れば、予定通りことを進めることができるのだが、その可能性も厳しいようだ。

 この国の中で手練れの者たちを用意したはずなのだが、このような結果になってしまい、宰相の男は思わず舌打が出てしまう。

 こうなることも視野には入れていたが、最悪でも何人かは逃げ戻って来れると思っていた。

 完全に予想が外れてしまった。


「可能性としては、魔物の方が高いかと……」


「確かにあそこの魔物は調査されていないからな」


 生存も確認できないということは、殺されたか捕まったということになる。

 それができる存在となると、大陸に住む魔人族、もしくは魔物の2択だ。

 しかし、報告に来た男の言う通り、どちらかというと魔物の可能性が高い気がする。

 魔人大陸の魔物はまだ完全には調査されていないため、どのような種類がどれだけいるのか分からない。

 そこに住む魔人の者たちを攫い、奴隷化して色々な情報を得てはいるが、人の住む周辺の魔物の情報ぐらいしか手に入らない。

 だが、その得た情報からでも、言われているように強力な魔物が蔓延っていることは分かる。

 出現する魔物は、人族の大陸では上位に来る危険なものばかり、よくそんな場所で生きているものだと言いたくなる。

 しかし、自分たちも領土の拡大のためにそんな土地でも手に入れたいため、人のことは言えないといったところだ。


「どういたしましょうか?」


「予定していた第2陣の人数を増やすしかないな……」


 魔人大陸とは言っても、魔人の住んでいる地域は分散している。

 しかも、毎年多くの人間が魔物に殺されることから、どこの国も微弱にしか住人が増えていかない。

 気を付けるべきは魔物で、それさえクリアできれば住み着くことも難しくないはずだ。

 魔人に比べて、人族は数が多い。

 ある程度の場所が決まれば、後は多くの兵を送り込んで領土を拡大して行けるはず。

 何段階かに分けて人を増やしていくつもりだったが、最初に送り込んだ者たちがどうなったか分からないとなると、策を少し変える必要が出てきた。

 言われている通り魔物が強力なら、人数を増やして対処すれば成功の可能性が上がる。

 そのため、宰相の男は第2陣の増員を決めたのだった。


「数を増やして、魔人たちに気付かれたりしませんか?」


 人数を増やせば、たしかに魔物への対処は楽になるし、拠点の捜索も容易になるはずだ。

 しかしそうなると、魔物だけでなく魔人たちにも気付かれるかもしれない。

 そのため、そちらへの対処も考えなければならなくなる。


「調査の結果、魔人はドワーフの武器に頼った者しかいない。バレた所で大丈夫だ」


 魔人大陸の南に住む住人の集落の中で一番警戒するべきは、エナグアと呼ばれる国だけだ。

 場所柄ドワーフ族との関係が深いらしいが、その戦闘力は大したことがない。

 人族よりも魔力を多く有しているにもかかわらず、魔力を使うのは武器に流すだけで、性能が良すぎる武器を持ったが故の弊害が魔人たちには蔓延しているのが現状で、それがそう簡単に改善されるわけがない。

 だからこそエヌーノ国王は領土拡大に動くことを決断したのだ。

 魔人たちに気付かれるとしても、その時には対応できるだけの人員を送り込んだ状態だ。

 臆する程の相手ではない。

 問いかけてきた男に対し、宰相の男は自信ありげに答えた。


「そのためにも、増員用の選別を急げ」


「了解しました」


 宰相の指示を受け、報告に来た男はすぐさま行動に移った。

 もうこの侵攻には多くの人と資金を投入しているため、今更引き返すことはできない。


「成功する以外この国に道はない……」


 山に囲まれた小国。

 何の資源もなく、領土拡大のために山を切り崩せば、他国が侵入するのを助けることになるだけ。

 八方ふさがりの状態で、唯一生き残る可能性があるとしたら他大陸への侵攻。

 その目標が魔人大陸。

 成功すれば、領土拡大を図り、人族大陸の大国に並べるほどの領土を得られるはず。

 そんな期待を持ちながら、宰相の男は大陸へと攻む込算段を再検討し始めたのだった。







「という訳で、第2陣が来る可能性があります」


 いつもの訓練の休憩中、ケイはバレリオから再度報告を受けていた。

 ケイが捕まえた斥候部隊の者から、更なる情報を得ることができたとのことだ。

 エヌーノ王国の宰相は、魔人たちが捕まえたという可能性を排除していたが、そう考えるのも仕方がない。

 斥候の者たちが上陸した場所は、エナグア王国からは離れている。

 ケイさえいなければ、発見される可能性は極めて低かったからだ。


「どうしましょうか?」


「そのまま放置で良いんじゃないか?」


 どうやら続々と人を送り込み、気付いた時には魔人ではどうにもできない状況に持ち込もうという作戦らしい。

 バレリオたちからすれば、来るたび倒せば被害も少なくできるかもしれないと思っているようだが、ケイは少し考えが違う。


「どうしてですか?」


「奴らがある程度作り上げた時に崩した方がダメージは大きいだろ?」


 意図が分からずバレリオが問いかけると、ケイはこともなげに答えた。

 折角積み上げたものをあっという間に壊されれば、相手にとっての精神的ダメージは大きい。

 小国が侵攻を計るということは、何かしら切羽詰まった状態なのだろう。

 計画の後戻りができない状態まで資金と労力を使わせ、破れかぶれの状態にすれば、訓練した魔人たちの相手ではなくなるだろう。

 魔人たちが勝利すれば、エヌーノ王国なんて小国が生き残っていけるはずがない。

 小国とはいえ国が潰れれば、魔人たちを脅威に思う人族の国が増えるはず。

 恐らくドワーフ王国の王太子のセベリノは、そこまで企んでいるのではないだろうか。

 何気に腹黒な気がするが、セベリノの思いも分からなくはない。

 いつまでもドワーフの保護を受けている状況では、魔人たちの未来は今と変わらない。

 無人島を、たった1人で国と認められるまでところまでにしたエルフ。

 彼のように自分たちで繁栄を勝ち取ってほしいという思いから、今回ケイに協力を求めたのだろう。


「さぁ、訓練を続けようか?」


「はい!」


 魔力には色々な利用法があると知ったからか、ケイが指導している魔人たちは魔力操作の楽しみを知ったようだ。

 今までも努力をしていたが、懸命なだけで楽しみなんてものはなかったのだろう。

 それが今では生き生きとしているように見える。

 それを感じ、ケイは自信を深めている。

 この戦いはきっと勝てると。



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