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第267話

「じゃあ、行ってくる」


 帰ってきたばかりだと言うのに、翌日にはドワーフ王国へ向かうことになったケイ。

 妻である美花の墓に手を合わせ、息子のレイナルドとカルロスの2人に出発の挨拶をする。

 日向の時のように、従魔のキュウとクウを連れて転移することにした。


「あぁ、気を付けて(・・・・・)


「……? あぁ……」


 2人の言葉に若干の違和感を感じるが、別段おかしなことを言っている訳ではないので、ケイはそのまま転移の扉を開いた。

 転移の先は獣人族のカンタルボス王国。

 ドワーフ王国に向かうにしても、一回の転移で行くには相当な魔力が必要になる。

 なので、カンタルボスへ行ってからドワーフ王国へ向かう予定だ。







「ケイ殿!!」


「あっ!」


 カンタルボス王国に転移したケイは、すぐさま王城へと足を運んだ。

 昨日のうちにレイナルドが連絡をしていてくれたこともあり、あっさりと謁見の間に通された。

 しかし、謁見の間に入り、王であるリカルドの顔を見てようやくあることを思い出した。


「ヘブッ!!」


 リカルドは走り寄ってきて、そのままケイにラリアットをかましてきた。

 あまりにもいきなりのことで、ケイは咄嗟に魔闘術を発動することしかできなかった。

 そのため、ケイは綺麗にラリアットを食らってしまい、変な声をあげて吹き飛んだ。


「イタタタ……」


「レイナルドから聞いていたが、いきなりいなくなるとはひどいではないか!」


 レイナルドたちから感じた違和感は、リカルドのことだった。

 ケイもすっかり忘れていたが、日向へ向かう時、リカルドに何も言わずに島から出て行ってしまった。

 もしかしたら、付いてくると言い出しかねなかったので言わなかったのだが、それが良くなかったのかもしれない。

 遊び相手がいなくなって城から出れなくなり、国の仕事をする日々でずっと発散できなかった鬱憤を晴らすための一撃なのだろう。


「すんません。あの時はそんな余裕がなかったもので」


 一応手は抜いてくれたようで、痛いくらいで済んで良かった。

 リカルドの本気だったら、骨にヒビが入るくらいは覚悟しないとだめだったはずだ。

 それに、ケイが言うように、あの時はリカルドのことは頭になかった。

 それほど切羽詰まっていた状態だった。


「……どうやら元に戻ったようですな?」


「えぇ、ちょっと美花の形見と旅行してきたら何とか……」


 いきなりラリアットをかましておいてなんだが、リカルドはケイが攻撃に対して反応するか確かめたのもあった。

 昨日レイナルドからケイが戻ってきたことを伝えられ、元気を取り戻したとの報告を受けていたが、自分の目で確認するまでは信じられなかった。

 しかし、どうやら報告通りのようで安心した。

 極東の島国である日向。

 聞いただけで自分も行きたいところだが、ケイには良い保養になったようで何よりだ。

 美花のことを忘れていないのも、ケイらしいと言えばケイらしい。


「さて……今日来たのはもしかしてドワーフ王国のことかな?」


「えぇ……」


 勝手にいなくなった事のわだかまりはこれでなしにして、リカルドは今回のケイが来た目的のことを話すことにした。

 とは言っても、リカルドはその目的が分かっているので、早速その話を振った。


「何でも、魔人領に関わることだとか?」


「そうなのだ」


 日向を去る時も聞いていたし、レイナルドからも聞いていたので、少しだけなら何の問題なのかは分かっている。

 しかし、詳しい話は分かっていないので、ケイはリカルドに尋ねることにした。


「我々獣人と魔人は関わり合わないと決まっておるのでな、よく分かっていないというのが現状なのだ」


 人族と魔人、人族と獣人、この関係はかなり悪いが、獣人と魔人は特に何もない。

 というより、お互いあまり興味が無いといったところであろうか。

 人族という共通の敵がいるが、獣人からしたら魔人は人族と肌の色が違うだけの者たちで、魔人からしたら獣人は獣のように荒々しい性格の持ち主たちという印象しかない。

 はっきり言って、お互いがお互いに対して無関心ということだ。

 無関心なために相手のことが分からず、疑心暗鬼から侵攻して来るのではないかと考え、お互い不可侵の関係になることで落ち着いている。

 そのため、今回ドワーフ王国による要請は、どこの獣人国にも来ていないらしい。


「では、今回はエルフの私だけということでしょうか?」


「その通り。レイナルドとカルロスもいいのだが、彼らは島から離れられないだろう? ケイ殿が帰ってきたのはドワーフ族にとっても救いだろう」


 レイナルドとカルロスは、半分は人族の血が流れている。 

 そのため、今回参加するのは良くない。

 2人とも見た目はケイと美花に似ているので何とも言い難いが、スパイ呼ばわりされる可能性もある。

 その点、ケイは純粋なエルフ。

 何も言われることはないだろう。


「ドワーフ族のことを頼みますぞ!」


「分かりました」


 今回参加するのは自分だけなようだが、ドワーフ王国には面白い発明が沢山ある。

 それがなくなるのはもったいないため、ケイは当たり前のように頷いた。


「それはそれとして、今日は日向の話を聞かせてもらおう」


「…………分かりました」


 魔力の回復を待つにしても、結構時間がかかる。

 今日はここで1泊世話になる予定になっているため、時間はかなりある。

 それが分かっているからか、リカルドはケイから日向の話を聞く気満々だ。

 仕方がないので、ケイはリカルドに日向の話をすることになったのだった。



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