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第263話

「お疲れさまでした」


「どうも」


 綱泉佐志峰の姿をしていた蛇の魔族を倒したケイ。

 その後の始末は集まった日向の者たちに任せ、自身は美稲の町でのんびりとしていた。

 その後始末も一段落したのか、八坂から呼び出しがかかったため、美稲の領主邸へと足を運んだ。


「西厚殿までいらしてたのですか?」


「えぇ、私もあなたに御礼を言いたかったもので」


 八坂のいる部屋へ招かれて短い挨拶を交わすと、ケイはすぐさま八坂の隣に座る人間に目が行った。

 同竜城制圧時の途中、ケイと行動を共にした西厚がいたからだ。

 西厚は南の領地の人間で、その所在地もこの町から遠くない。

 それもあってか、八坂とは仲が良いらしい。

 今回でも八坂の意見を聞き入れてくれるなど、便宜を計ってくれたのもそれがあったからこそのことだったようだ。


「御礼ですか? 何かした覚えはないのですが?」


 魔族を倒しはしたが、それはもう八坂から十分な礼を受けている。

 なので、別にこれ以上礼を受ける理由がないため、ケイは首を傾げる。

 美稲の町では、宿代や食事代は全部八坂が出してくれている。

 別にケイなら魔物を狩って、その素材を売り買いすれば資金は得られるので、わざわざ出してもらうのは少々申し訳なく感じるが、そこは享受することにしている。

 この町に限らず日向の食事は、懐かしさも相まってケイにはかなり馴染む。

 やっぱり、前世の日本を思いださせるからだろうか。

 妻の美花も味覚は似ていたので、もしも一緒に来ていたら楽しめたことだろう。


「魔族とか言う存在のこと、それにその脅威を消し去ったことは私だけではなく他の日向の者たちも同様です」


「欠陥魔族を倒しただけですから……」


 蛇の魔族はたしかに強かったが、所詮は魔法を使えないという欠陥があった。

 あれだけの魔力があって魔法が使えていたら、ケイでももっと苦戦していたかもしれない。

 相性が良かったと言えばいいのかもしれない。


「いやいや、今回のことでだいぶ将軍家からの覚えが良くなりましたよ」


 上重が主犯の事件によって起こったこの籠城戦も、佐志峰が魔族であったということが分かり大きく混乱した。

 魔族という存在も実態もあやふやな者に、多くの兵が命を落とした。

 その魔族の強さにより手の打ちようもなかった中、たった1人の異人の協力によって事態が収拾したという話に、将軍はかなり興奮したらしい。

 歌舞伎の演目に、などと言う事まで言い出す程だった。

 そのケイを率いた西厚は、かなりの褒美を得ることができたとのことだ。


 上重と言えば、どこにもその姿がなく、逃亡したのではないかという噂がたった。

 しかし、城内で大量に蠢いていた蛇を相手に辛うじて生き残っていた者たちの話によると、ずっと佐志峰の側にいたので、逃亡したということはないとのことだった。

 その証言をもとに城内を詮索した所、天守閣付近に上重が着ていたらしき着物の残骸が散らばっていた。

 そこから推測するに、佐志峰の蛇に喰われたという説が有力になった。


「八坂殿もこれからは忙しくなるでしょうし……」


「……? 八坂殿がどうしたのですか?」


 結局、参戦したとは言っても、八坂は西門からの逃亡者を捕まえるだけの仕事。

 その逃亡者も1人としていなかったために、ほとんど何もしないのと同じだった。

 そんな状態の八坂に、特に何か起こるようなことは何もなかったように思える。

 なので、西厚がいう忙しくなるという意味がケイにはよく分からない。


「八坂殿が今度の同竜城の城主へとなることが決まったのです」


「おぉ! それはめでたい」


 蛇の魔族を倒しても、蛇が大量に残った同竜城。

 その蛇たちを倒すのに少しかかったが、城自体は特に大きな欠損もなく、掃除をすればまた使える状態だった。

 新しく城を建てるのも金がかかるし、そのまま次の西地区の領主が使うことになっていたらしい。

 綱泉家に変わって西地区を受け持つことになったのが、八坂家ということになったらしい。

 他にも領主候補もいたが、魔族や魔物が蔓延った城。

 候補者たちは縁起や気味が悪いとみんな断り、八坂に話が巡ってきたようだ。


「それもこれもケイ殿のお陰です。感謝申し上げます」


「そんなことないですよ。そもそも八坂殿がそれだけの器のある方だっただけです」


 ケイのことを知っているとは言っても、途中参加の立場でありながら戦場で何度か西厚へ進言してくれた行為を考えると、判断力があって上に立っても大丈夫な人間だと思える。

 慕っている部下も多いし、市民にも好意を持たれている。

 将軍家の血を受け継いでいるということも聞いていたし、西地区を良く知る彼なら適任と言ってもいいだろう。


「西厚殿も進言頂きありがとうございます」


「そんな……。私の方が何もしていないのに、殿に感謝されてしまい申し訳なく思っております。ケイ殿を連れて来たのは八坂殿ですから……」


 将軍に直接感謝の言葉を受けた西厚は、その時八坂のことを話した。

 ケイを連れて来たのは八坂で、自分はそのケイを借りたに過ぎない。

 そのケイを南門に連れて行くのには、最初難色を示したが、功は全て譲るという八坂の言葉に乗っかっただけだということも話した。

 その正直さも買われて将軍家から良く思われたのもあり、その後の八坂の西地区領主の推薦も通ったのかもしれない。


「どちらにしても結局はケイ殿のお陰ですな?」


「そうですな」


 そんなことを言って、2人は声を出して笑い出した。

 ケイとしては、感謝ばかりされて何だか居心地悪く感じてしまう時間だった。





「これで西地区も治まったことですので、私は日向旅行を続けようと思います」


 事件のことは終わりにして、ケイはこれからの話に移った。

 元々ケイはこの国に来た目的は日向旅行であり、それを行うことを2人に告げた。


「確かに、そのようなお話でしたな」


 ケイの妻である美花が来たがっていた日向。

 それを形見の刀と共に巡ってみたいという思いから、ケイはこの地へ来たのだ。

 そのことを知っている八坂は、この地にもっといて欲しいという思いがありつつも止めようとしない。


「ケイ殿は観光できたのですか? でしたら、私と共に南の領地の観光へ来ませんか?」


「いいですね! じゃあ、お世話になってもいいですか?」


「もちろん歓迎いたしますぞ!」


 ケイのような強い者が自分の領地にいれば、もしもの時はかなり助かる。

 流石に今回のようなことはないだろうが、魔物はいつスタンピードを起こすか分からないからだ。

 別に行く場所を決めていなかったケイは、西厚の誘いに乗ることにしたのだった。



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