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第259話

「………………んっ?」


 佐志峰が生み出した蛇と戦い、死傷者を出しながらも全てを倒し終えた日向の兵たち。

 綱泉佐志峰は、そのまま再度斬りかかってくるのかと思っていた。

 しかし、蛇を倒した兵たちは、そのままジリジリと後退していった。

 そして、その兵たちとは反対に、ゆっくりと歩み寄ってくる存在に目を向けた。


「また異人か……?」


 目に移ったのは一人の異人。

 かなり容姿端麗な白髪の男だ。

 その見た目はかなり派手だが、纏っている服装は先程の冒険者たちと似たような服装だ。

 しかし、この男の方が大した防具も着けておらず、質素な感じがする。

 佐志峰は、冒険者というより、旅人と言った方が近いように感じた。

 しかし、近寄ってくるところを見ると、何かあるのかと思いその男の方に体を向けた。


「……ん~…………?」


 佐志峰が体を向けたのを確認した男は、その場で足を止める。

 近付いてきたのはケイだ。

 足を止めたケイは、佐志峰の全身を上から下までゆっくりと眺める。

 そして、一通り眺めると少し首を傾げた。 


「……何だ?」


 何だか値踏みされているようなケイの視線に、佐志峰は不機嫌そうな表情へと変わる。

 まるで、自分がこの男に上から見られているように感じたからだろう。


「随分変わってんな……」


「……何がだ?」


 佐志峰に尋ねられたケイはというと、不思議そうに答えを返す。

 何が不思議なのか分からず、佐志峰は再度問いかけた。


「魔族にしては、特殊だなと思ってな……」


「っ!?」


 ケイが先程佐志峰を見ていたのは、魔力の流れを見るためだった。

 鑑定の魔術で佐志峰を見た時、普通の人間のようにも見えたが、少し特殊な魔力の流れをしているように感じていた。

 離れて探知した時は、それが大量の蛇の魔物を扱っている理由だと思っていた。

 しかし、こちらに来てしっかりと見てみたら、その違和感は人間にしてはおかしいと思うように変わっていった。

 人間の姿をしていて人間とは異なる者、ケイにはそれに心当たりがあった。

 ケイの言葉を聞いた佐志峰の方は、目を見開く。


「驚いた。まさか魔族の存在を知っている者がいるとは……」


 自分がまともな人間ではないということは、血液から蛇を生み出したところを見れば分かるだろう。

 しかし、それで魔族だということに気付く人間はいないと思っていた。

 何故なら、佐志峰自身、自分のような存在が魔族だということを知ったのも、偶然に近いものがあったからだ。

 この国に魔族は自分以外存在していないということもその時に知っている。

 自分が歴史的にも初の存在だと思っていた。

 魔族というものを知らない日向の者たちが、魔族だと分かる訳がない。

 この国よりも巨大な土地である大陸ですら、魔族の発生は極めてまれな事。

 僅かに参戦している異人たちでも、その存在を知っている者はいないと思っていた。

 しかし、意外にも目の前の異人はどうやら魔族の存在を知っていたようだ。


「それで? 1人で我の前に現れて何がしたいんだ?」


 魔族を知っているとは珍しい人間だが、理解できないことが浮かんできた。

 人間にとって、ただの魔物が知識を持つだけでかなりの脅威になる。

 魔物には寿命がないと言われている。

 確認をできた人間がいないため、これはあくまで仮定だ。

 しかし、長命なのは確実だ。

 同じ魔物を3代続けて従魔にしたという話が伝えられているからだ。

 この世界には、生物を殺すことによって肉体に変化がある。

 いわばレベルアップだ。

 そのレベルアップには、人族とエルフ族によって違いがある。

 短命の人族の方が高く、長命のエルフの方が成長力は低い。

 それと同じように、エルフ以上に魔族の成長力は低い。

 低いだけで、成長しない訳ではない。

 知識があり、長生きしてコツコツ他の生物を殺してきた魔族は、まさに化け物といった存在。

 そんな存在を前に、この男が1人で何をしに来たのかということを、佐志峰は聞かずにはいられなかった。


「色々確認をするのと、場合によっては殺そうかと……」


「……殺す? 貴様がか?」


 ケイには、いまだに佐志峰に対して疑問に思う所があり、それを確認しに出てきた。

 それを確認したうえでどうするか考えることにしているのだが、考えている通りだったとするならば、さっさと殺してしまおうと思っている。

 佐志峰は、僅かに笑みを浮かべる。

 人間ごとき弱小種族でしかない者が、自分を殺すと言うものだから滑稽に思えて不意に笑ってしまったのだ。


「ククッ……面白い冗談だ」


「本気だって!」


「………………」


 笑みだけでなく、声にも出して笑えて来た。

 まさか、そんな冗談を聞けるとは思わなかった。

 容姿が良くても、馬鹿では魅力は落ちるというもの。

 そう考えると、佐志峰は目の前の男の顔が段々と間抜けに思えてきた。 

 しかし、すぐそのあとのケイの言葉に、佐志峰は笑えなくなった。

 真顔の発言通り、目の前の男は本気で自分を殺そうと思っているようだ。

 嘲笑よりも怒りが湧き、佐志峰は一気に冷めた。


「……やれるものならやってみろ!」


「あぁ……殺ってやるよ!」


 怒りで一気に気分が冷めた佐志峰は、ケイのことを殺すことに決めた。

 馬鹿の戯言で済ます気は失せたため、腰に差している刀の柄に手を添え、右足を少し前に出して前傾姿勢になり、居合の体勢に入った。

 ピリつく空気から察するに、一刀の下にケイを斬り殺すつもりらしい。

 それに対し、2丁の拳銃を抜いたケイも、いつもの戦闘態勢に入った。



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