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第205話

 手を出すことができないキュウは、おかしな2人組に囲まれながらも懸命に逃げ続けていた。


「くそっ!!」


「このっ!!」


 ロン毛の男の魔法、短髪の男の槍による攻撃。

 その行動からイカれた男たちだと思っていたが、その実力は普通じゃない。

 攻撃を躱すだけに専念するしかないキュウは必死に逃げ回るが、危険な攻撃が増えて躱すのがギリギリになってきた。

 もしかしたら、魔法が使えたとしてもキュウが勝てるか微妙なレベルだ。

 むしろ、逃げることだけに専念しているから、なかなか捕まらないでいられるのかもしれない。


「こうなりゃ……、合わせろ!!」


「おうっ!」


 ロン毛の魔法使いの男に合図に、短髪の男は動き出す。

 それぞれがバラバラに動いていては捕まえられないと判断したらしく、2人は何か仕掛けてくるようだ。

 

「ハッ!!」


【っ!?】


 キュウへ向かって真っすぐ突き進む短髪の男。

 その背後から、追い越すように火球の魔法が飛んで来る。

 そして、その魔法はキュウが避ける方向を埋め尽くすように周囲へと着弾しする。


【まずっ……!?】


“ドカッ!!”


 逃げ道がなくなり慌てたキュウへ、短髪男の槍が迫る。

 横に振られたその槍の攻撃を躱しきれず、柄で殴られたキュウは吹き飛ばされる。


【イ、イタイ……】


 何度も地面を弾み、かなりの距離を転がったキュウはようやく止まる。

 魔闘術を行なっていたため直撃を受けても死ぬことはなかったが、キュウはかなりの大怪我を負ってしまった。


「ったく、手こずらせやがって……」


「全くだ」


 攻撃を食らって動けなくなったキュウの側へ、男たちは愚痴りながら近付く。

 そして、血を流すキュウを拾い上げると、しまっておいた檻をまた取り出し、キュウをその中へ雑に押し込む。


「魔闘術を使うケセランパサランか……」


「こりゃ報酬上げてもらわないと割に合わないな……」


 檻の中のキュウを眺めながら、男たちはにやけながら談笑し始める。

 ベラスコに聞いた話だと、捕獲対象は魔法を使い、A級の冒険者ですら相手にならない強さを持つ魔物だと聞いていた。

 そんなケセランパサランが存在するのかと思っていたが、見つけてみたら魔闘術まで使っていた。

 その情報があれば捕獲するのに手間取ったりしなかっただろうし、もう少し穏便に済ませることも出来ただろう。

 自分たちが短絡的な行動をしたにもかかわらず、自分勝手なことを言う2人組だった。







「エルナン! プロスペロ!」


「んっ?」


「何だ?」


 目的は達成したことだし、このままベラスコの所へ持って行ってもいいのだが、ちょっと(・・・・)派手にし過ぎた。

 このままでは、犯罪者として手配されてしまうかもしれない。

 そうならないように、村人たちとは話し合い(・・・・)をする必要がある。

 キュウを捕まえた檻を持って、2人が目撃した村人たちを説得(・・)をしに向かおうとしていると、後方から1人の男が声をかけてきた。


「おぉっ!? アウレリオ!」


「久しぶりだな?」

 

 声をかけたのはアウレリオだ。

 ケイとアウレリオが最後の手合わせを終えた時、村の方角に煙が出ているのを確認した2人は、すぐさま村へと戻ることにした。

 途中でケイは自分の泊まっていた宿屋から煙が上がっていると分かり、別れて行動することにしたのだが、そこで何やら直感が働いた。

 何か気になると言うだけの理由で顔を向けた方角で、向かってみると魔法による衝撃音が微かに聞こえて来た。

 その音のした方へ向かってきたら、見知った顔が揃っていた。


「何でお前らがここにいるんだ!?」


 短髪の槍使いエルナン。

 長髪の魔法使いプロスペロ。

 アウレリオが、妻のベアトリスと出会う前に別れた冒険者仲間だ。

 その当時でも彼らはかなりの実力を有していたため、今では高ランクになっているはずだ。

 そんな彼らがどうしてこの村にいるのか不思議に思い、アウレリオは声をかけた。


「お前のカミさんが大変なんだってのも聞いてな……」


「そうそう! ベラスコに聞いたら、仕事の報酬に救う手立てを見つけてくれるらしいじゃねえか?


「だから俺たちも手伝ってやろうと思ってよ」


 アウレリオの問いに2人は顔を合わせると、この村にいる理由を話し始めた。

 話からすると、どうやら2人はアウレリオの状況を聞き、ベラスコの所へ向かったようだ。


「………………嘘だな」


 自分のことを心配してきてくれたような言い方だが、アウレリオはそれを信用しない。


「お前らは俺の邪魔をしに来たんだろ?」


「ひでえ良いようだな……」


「傷つくわ……」


 2人は、アウレリオを見た時からにやけた表情をしていた。

 ある意味馬鹿にしたような表情は、昔に何度か見たので知っている。

 この表情の時の2人は何か企んでいる時の表情だ。

 そのことから嘘だと判断したアウレリオに、2人は軽い口調で返してくる。


「お前らの悪評は、冒険者仕事を休んでいる時でも聞こえて来ていた。それに、お前ら俺が離れたことまだ根に持っているんだろ?」


「「………………」」


 アウレリオの言葉に、2人は急に黙り込む。

 2人とアウレリオが組んで冒険者として動いていた時、実力のある3人は難易度の高い依頼をいくつもこなしていた。

 それによって資金もかなり得ていたのだが、それが良くなかったのかもしれない。

 2人は得た金を好き勝手に浪費し、態度もどんどんと悪くなっていった。

 アウレリオも同じようになってしまいそうになったが、2人を客観的に見た自分がブレーキをかけてくれた。

 そうなると、彼らと一緒にいられなくなり、一方的に離れることを告げた。

 最初アウレリオを止めなかった2人だったが、他の冒険者仲間に噂を聞くと、仕事の成功率が下がり、次第に資金が手に入らなくなっていったそうだ。

 好き勝手出来なくなり、その原因が自分たちではなくアウレリオのせいだと言うようになっていたらしい。


「……そうだよ。俺たちはお前を不幸にしたくてここに来たんだ」


「鈍ってもお前の直感は聞くだろうと思った。だから他の町の捜索なんてせず、この村に当たりを付けたんだ」


 アウレリオのことを良く知る2人。

 ベラスコに脅しをかけて、アウレリオの居場所を聞き出すと、すぐさまこの村にたどり着いた。

 自分を探そうとしている人間を見つけることはできるケイだが、アウレリオを探す人間に気付くことはできない。

 アウレリオが接触した人間が怪しいと睨んでいたエルナンたちは、すぐにケイが怪しいと判断した。

 何かしらの情報が得られるだろうと、すぐさまケイが寝床にしていた宿屋へと侵入。

 強盗まがいに宿屋の店員からカギを奪い、部屋へと侵入した。

 あっさり手配書の従魔がいたことは、ラッキーだったとしか言いようがない。

 目的のケセランパサランを手に入れ、カミさんを救う情報を得ようとしているアウレリオを出し抜くつもりだったようだ。


「こいつは俺たちが捕獲した」


「これでお前はカミさんを救えない」


 まるで、ざまあみろと言いたげに、2人は檻に入ったキュウを見せびらかす。


「やっぱりこの村に……」


 檻に入ったケセランパサランを見て、アウレリオは自分の勘が外れていなかったと確信する。

 しかし、それと同時に、ケイのことが頭をよぎる。

 手配書ではケセランパサランの主人は違う顔をしている。

 もしかしたら、そのケセランパサランの主人に頼まれ、ケイが隠していたのかもしれない。


「……昔のよしみでそいつを俺に渡してくれないか?」


「はっ? 馬鹿か?」


「渡すわけねえだろ?」


 妻のベアトリスの治療法を得るか、知るためにも、この依頼は自分が達成しなければならない。

 そのため、アウレリオは頭を下げて2人に頼み込む。

 しかし、2人は全く取り付く島もないと言った感じで返事をする。


「そうか…………」


 先程の会話から、頭を下げても渡してくれるとはアウレリオは思っていなかった。

 なので、諦めることにした。


「…………何だ?」


「……何で魔力を纏ってるんだ?」


 アウレリオの様子の変化に、エルナンたちも表情を変える。


「力尽くで奪う!」


 頼んで渡してもらうことは諦めた。

 ならば、力で手に入れる。

 そう考え、アウレリオは2人に向けて武器を構えたのだった。



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