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第192話

「さてと、次の町に行くか?」


 変装をするようになってから邪魔する者も来なくなり、早々に移動資金もたまったケイたちは、次の町へと向かうことにした。

 目指しているのは日向の国。

 ケイの前世である日本と同じ言葉と、似た文化を受け継いでいる島国という話だ。

 美花も生前一度は両親の生まれ故郷である日向に行きたいと言っていたが、叶わずじまいになってしまった。

 代わりと言っては何だが、ケイは彼女の形見である刀と共に移動している。


「次の町は国が変わるんだぞ」


 次の町は国が変わり、日向への船が出ている国だ。

 ケイは、そのことをキュウとクウに教えてあげる。


【うみ?】


「そうだな……でもまだ遠いな」


 ずっと海の側で生まれ育ったせいか、海に面した国だと前に教えたら、キュウはそればかり気にするようになっていた。

 もう随分海を見てないからなのか、恋しくなっているのかもしれない。


【ちょっとざんねん……】 


 たしかに海に面した国ではあるが、その中でもまだ内陸部にある町だ。

 今までのようにのんびりしたペースで行くとなると、まだしばらくかかることを伝えると、キュウは少ししょんぼりした。


「国が変われば、そろそろこの仮面も必要なくなるかな?」


「ニャッ!?」


 話を切り替えようと、ケイが付けている仮面のことを話し出すと、今度はクウが反応した。


「クウもマスク嫌だよな?」


「ニャー!」


 クウにも変声機能付きの猫マスクを付けさせているのだが、やっぱり何も付けていない方が良いのだろう。

 マスクを付けなくて済むかもしれないと聞いて、クウは嬉しそうに鳴き声をあげた。





「入国っと……」


 小さな川が流れており、小さな橋が架かっている。

 それが一応国境線になっていて、ケイたちはすんなりと国境越えを果たす。


「さて、宿屋を探すか……」


 ピトゴルペスの町へ入り、ケイたちはその日は宿屋でゆっくり休むことにした。

 そうして町中を歩いていた時、


「っ!?」


 これまで普通に町中を歩いていたケイの足が僅かに鈍る。


【しゅじん?】「ニャッ?」


「お前たち、少しの間声を出すな!」


 ケイの様子が少し変わったことに気付いたキュウとクウは、ケイに問いかけてきた。

 しかし、そのことにすぐに反応するように、ケイは2匹に小声で指示を出した。

 そして、そのまま通りを抜けて道を曲がると、足早にその通りから距離を取ろうとする。


「………………大丈夫か?」


 先程の通りから少し離れると、ケイは周囲に探知を広げる。

 そうして周囲のことを把握すると、軽く安心したような息を吐いた。


【しゅじん! どうしたの?】「ニャッ?」


 ケイが安心したことで、もう大丈夫なのだろうと思い、キュウとケイは話しかける。

 様子のおかしいかったケイに、キュウとクウが首を傾げる。

 こんなことは見たことがなかったからだ。


「何か変な魔力した奴が前から通り過ぎたんでな……」


【へんなまりょく?】


 どういう意味だか分からず、キュウはケイに聞き返す。

 ケイは常に探知の魔力を広げている。

 しかし、それはかなり薄めで、一般人には気付く者などいないだろう。

 冒険者の中でも、気付ける者はなかなかいないかもしれない。

 その探知の魔力に触れると、ものすごくざっとだがその人間の感情が分かる。

 イラ立っているとか、喜んでいるとかがその人間の魔力でなんとなく分かる程度なのだが、探知に触れたにもかかわらずその魔力には何の感情も感じられなかった。

 そういった意味で変な魔力と言ったのだ。

 

「関わると面倒そうだったから距離を取ったんだ」


 これまでどんな相手だろうとこんなことがなかったため、ケイ自身もちょっと戸惑っている。

 何をするか分からない人間ほど、何故か不気味に思えてしまう。

 そのため、ケイは距離を取ることにしたのだった。


【つよいそう?】


「ん~……、強そうではあったかな?」


 すれ違う時、顔はチラッと確認しておいた。

 そこで探知を強くすれば、何だか反応してきそうな感じだったので、そのまま気付かれないようにしてやり過ごした。

 探知したわけではないのでなんとなくなのだが、見ただけの感覚で言うと、只者ではないようではあった。


「キュウだと危ないかもな……」


 ただのケセランパサランではあるが、ケイの育成のお陰もあってか、魔法特化とは言っても結構な強さにまで成長しているキュウ。

 しかし、さっき通り過ぎた男の強さは、キュウでは勝てないように思えた。 


「何だか気持ちが悪いから関わらないほうがいいだろ。お前たちも注意しろよ」


【は~い!】「ニャ~!」


 さっきの男も、所詮はたまたますれ違っただけの、大多数の一人でしかない。

 ケイからは関わるつもりはないので、もう会うこともないだろう。

 従魔の2匹とも、ケイとは離れることはないので大丈夫だとは思うが、この世の中は何があるか分からない。

 念のため、ケイは2匹に注意を促しておいたのだった。






◆◆◆◆◆


「ベラスコの奴、情報が間違ってるんじゃないか?」


 珍しい魔物であるケセランパサランの捕獲を頼まれたアウレリオ。

 その魔物を従魔にしているという男が、このピトゴルペスという町に来ている可能性があると聞き、昔の冒険者時代の道具を大急ぎで用意し、先回りするべく馬を走らせたのだが、町中をくまなく探し回っても、手配書に描かれているような者たちは見つからなかった。

 これだけ見つからないとなると、手配書の者たちはもうここを離れた可能性も浮上してきた。

 とりあえず今日も探して、自分の直感に誰も何の反応も示さないようなら、東にある町や村に向かう方が良いかもしれない。


「……やっぱいないか?」


 色々町中の人間を見て回るのだが、どこにも自分の直感に触れる者がいない。

 あとは大きな通りを見て、何もないようなら次へ行こうとアウレリオは決めた。


「……………………」


 ただ無言で通りを歩くアウレリオ。

 彼の捜索は直感という本当に大雑把な方法だ。

 それで見つけられるなんて、他の高ランク冒険者からしたら鼻で笑うことだろう。

 ただ、これが結構馬鹿にできないと本人は信じている。

 他の冒険者がまともに探しても見つからない時、この直感に反応した所を探して捜索物を探し当てたことが何度もあった。

 冒険者としてのブランクがあるが、この直感まで鈍っていないと信じている。


「…………?」


 この通りを歩いていた途中、アウレリオの直感に、本当に微かだが反応した気がした。

 とりあえず振り返り、通りにいる人間を見てみるが、さっきの直感が何に反応したのか分からない。

 人なのか物なのか分からず、もう一度引き返して見て回るが、今度は何も反応を示さなかった。


「……何だったんだ?」


 実はこの時、手配書の人間とすれ違ったということをアウレリオは気付いていなかったのだった。



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