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第174話

「ケイ殿! 隠れている者がどこにいるか分かりますかな?」


 倒した分だけ増えるアンデッド軍団。

 ドワーフたちの探知では反応を示さなかったが、ケイの探知には僅かな反応を示した。

 エルフのケイだからこそ探知できる反応であって、他の種族では相当な手練れでなければ気付けるレベルではないだろう。

 敵の探知には鼻を使うことが多い獣人のリカルドは、その反応には気付けはしない。

 しかし、ケイの実力を認めているリカルドは、ケイのその探知を信頼している。

 どこからか魔物を出現させている者がいるというのなら、その者を倒してしまえばいい。

 リカルドは、魔物を出現させている張本人の居場所を探れないか尋ねてきた。


「……少々お待ちください。探ってみます」


 たしかに魔力の反応を確認したが、かなり僅かな反応だった。

 魔力の扱いが上手い者の仕業のように思える。

 そうなると、しっかり集中しないと探知から逃れられるかもしれない。

 リカルドの要望に応えるために、ケイは魔力の探知の範囲を広げていった。


『反応しない? いや、魔力遮断が上手いのか?』


 自分の魔力を薄く広げ、どこに魔物がいるのかを察知する。

 しかし、かなりの距離を探っても、魔物を出現させていそうな者の反応が感じられない。

 この探知では魔力に反応したものの位置が分かるだけで、それがどんな生物なのかということまでは分からない。

 しかし、それが人なのか、動物なのか、魔物なのか、反応の違いで分かる程度の探知でしかない。

 魔力は体内から体外へ僅かに漏れているのが普通なのだが、魔力コントロールの上手い者なら、体内の魔力をコントロールして探知から逃れることできる。

 この探知から逃れる技術を、ケイは魔力遮断と勝手に言っているが、さっき魔物を出現させた手際の良さからいって、相手はその技術を使っている可能性が高い。


「だったら……」


 魔力遮断はケイもできる。

 自分ができることは、他にもできる者がいるかもしれないという証明になる。

 魔力遮断をされても探知ができるようにするための技術を、ケイは以前から考えていた。

 探知範囲はいつものように広げるということはできないが、ある一定範囲内の魔力を増やし、探知を強化することによって、探知魔力に触れた物がどんな生物なのかということまで分かるようになる。

 魔力量に自信のあるエルフだからできる技と言ってもいい。


「…………居たっ! あっちの方角です!」


 ケイが探知を強化した範囲に、僅かに反応した何かがいた。

 魔力遮断をしているからかもしれないが、それが何かということまでははっきりとは分からない。

 しかし、確実に何かがそこに居ることは分かった。

 発見したケイは、その者を見つけた方角を指さした。


「よしっ! 任せろ!」


「ちょ、リカルド殿! 何者かまでは分かっていません!」


 何者かがいると発見したことで、リカルドはすぐさま城壁から飛び出し、ケイが指さした方角へと走り出した。

 発見したはいいが、ケイもどんな相手なのか分かっていない。

 それなのにもかかわらず飛び出したリカルドを心配し、ケイも追いかけるように城壁から飛び出して行った。


「……奴か!?」


「っ!?」


 ケイの制止が届かず飛び出したリカルドは、他のアンデッドとは様子が違う者を発見した。

 それがこの襲撃を起こした張本人だと察したリカルドは、セベリノに借りたハンマーを手に一気に距離を詰める。

 相手の方も木に隠れて姿を隠していたのだが、猛烈な勢いで迫るリカルドに面食らったような反応をしている。


「ヌンッ!!」


「ハッ!!」


“ドンッ!!”


 リカルドは片手で巨大ハンマーを振り下ろす。

 しかし、相手もそれに対して反応する。

 風切り音からして強力だと分かるようなリカルドの攻撃を、魔力の障壁を張って受け止めた。

 それによって、大きな衝突音と共に地面が抉れる。

 そして、ぶつかり合ったことによる反発によって、お互い弾かれるように後方へと飛び下がる。


「……何故、ここに獣人が……」


「リッチ……か?」


 ローブを纏い、顔を隠すようにしていたその敵は、魔導士のような姿をして手に杖を持っている。

 顔を隠してはいるが、先程の衝突によってローブの下の顔がリカルドには見えていた。

 その顔は骸骨の顔をし、杖を持つ手も肉がなく骨の状態だ。

 姿からリッチかと思ったリカルドだが、様子がおかしい。

 見た目はリッチのようだが、リカルドの攻撃を防ぐようなその魔力量は信じがたい。

 そのため、リカルドはリッチであると判断しかねた。


「リカルド殿!」


「エルフ!? 生き残りがいたのか……」


 2人の衝突が起きてから少しして、ケイが追い付いた。

 表情がないので分かりづらいが、その反応と声からしてリッチは驚いているようだ。

 どうやら、アンデッドにまでエルフは絶滅したと思われていたらしい。


「……ただのリッチではない? 気をつけてください」


「了解した!」


 リカルドと対峙するリッチに、ケイは鑑定をしてみる。

 しかし、その目に移ったリッチの魔力の流れが普通のアンデッドとは違うように感じる。

 そもそも、内包している魔力の量がとんでもなく多い。

 それだけでこのリッチの強さの一端を感じ、ケイはリカルドへ注意を促した。

 結構本気の一撃をあっさりと止められたことで、リカルドもこのリッチのことを警戒していた。

 そのため、ケイの忠告にリカルドは素直に返事をした。


「フン!!」


 ケイとリカルドが短い言葉を交わしているうちに、リッチは片手を地にかざす。

 すると、そこには魔法陣が浮かび上がり、様々なアンデッド系の魔物が出現してきた。


「アンデッド!?」


「やはり貴様が呼び寄せていたのか?」


 その魔物の出現に、ケイとリカルドは目を見開く。

 思っていた通り、このリッチが無限のように魔物を出していた張本人だったようだ。


「行くぞ! ケイ殿!」


「えぇ!」


 リッチがかなりの実力を有しているのは、先程のリカルドとの衝突だけで理解できる。

 しかし、出現したアンデッドたちは普通の魔物と大して変わりない。

 アンデッドたちが邪魔だが、ケイとリカルドならたいして気になるほどではない。

 ケイは腰のホルダーから抜いた2丁の拳銃を抜き、リカルドはセベリノに借りたハンマーを握る。

 2人はそれらの武器を、アンデッドとそれを操るリッチに向けて構えた。 



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