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6.魔法開発

 新技とか考えるとオッサンでも童心に返ってしまうのだ。




 火の魔法だけで倒したスマイルが落とした魔石とスマイルシートが焦げていた。

 万屋では確認していなかったが、普通に考えれば傷んだものの価値は綺麗なものに劣るだろう。これではせっかくドロップアイテムが出ても、残念な買い取り価格になりかねない。


「あとは、魔力の問題か」


 魔法を使うための力「魔力」

 これは魔法を使った後しばらく休めば、ある程度回復するそうだ。


 だが魔力の量にも回復力にも個人差があり「連続して何発、どの魔法が使えるのか」「どの程度休めばまた魔法が使えるようになるのか」など、個人個人で経験によって覚えるしかないそうだ。

 そして最も重要なのが「魔力が枯渇すると意識を失うこともある」というものだ。


「今はもう、打ち止めだなあ……」


 倒れるほどではないが、若干めまいを覚えた。

 盗みに入られて起きて三発。それから一時間ほど間を空けて二発「火弾」を使って倦怠感が出る。となると連続で魔法を使える回数は、現在、せいぜい五~六発といったところか。六発撃ったら倒れるかもしれないが。

 とりあえず少し休みながら、どうするか考えてみるとしよう。


「とりあえず火の魔法だけで倒すのはナシだな。あと魔法から入るのも無駄だ」


 言わずもがな、ドロップアイテムが焦げるからである。最初の一撃を魔法にするのも「魔法一発+ピック一発+打撃一発」となり、倒すまでに手間だけ増えてしまっている。


「魔法を使う順番を変えたり、他の魔法なら違う結果になるかもしれんが……」


 ピックから入って魔法で締める。うん、これならなんとなく上手くいきそうな気がする。でも火の魔法だと多分、焦げる。

 他の魔法というのも、現段階で使えるのは水属性の「水弾」くらいなものだから、どの程度意味があるかは不明だ。でも焦げないというのはアリかもしれない。


「魔法を色々考えてみるべきか」


 昨日、神父に聞いたところによると「あまり一般的ではないが、魔法は使い手によって様々な形に変化させられる」そうだ。


 たとえば、小さな火の玉を飛ばす「火弾」を、火炎放射器のように一定の範囲に火を放つようにしたり、指先や掌の上などに停滞させて松明のように使ったりするなどだ。


 長時間発動させ続ければ、当然より多くの魔力を消費することになるが、状況に合わせて規模を調整すれば逆に魔力の消費を抑えることも可能だろう。


「この辺はゲームなんかより柔軟なところだな」


 現実なんだから当たり前といえば当たり前だが、創意工夫がダイレクトに反映されるのだから意欲も湧こうというものだ。


「ここはやはり、水弾を変化させることを考えてみるべきだな」


 すぐに思いつく変化としては放水型だが、よっぽど大量の水を一気に放ちでもしない限り殺傷力が高まるとは思えない。


「少ない水量で高威力となると……アレだな」


 ウォーターカッター。

 これだ。




 休憩中にピックを確認したところ、微妙に刃が溶けているようだったので、本格的な魔力の回復を兼ねて一旦森を出て石斧を作ってみることにした。

 というか金属が溶けるって、スマイルの体液ってそれなりに強い酸性だったのだろうか。怖い。


「黒曜石っぽい石ってどうやって見分けるんだろうか……」


 石器といえば黒曜石だろうと周囲を探してみるが、残念なことに私にはその辺の知識は全くないのだった。切ない。

 しかし諦めるわけにはいかない。こうなれば手当たり次第にそこそこの大きさの石を拾っては割ってみるしかあるまい。


「お! それっぽいかも」


 一時間ほど平原を探し回ってみたところ、綺麗に割れる石をいくつか発見した。断面がツルっとしていて綺麗だ。

 周囲にスマイルもいないし、早速その場で作業に入る。

 割れにくい石を持って、地道に黒曜石っぽい石の形を整えていく。


「こんなものか」


 さらに一時間ほどして、石斧というか石ピックという感じの刃物のパーツが三つほど出来上がった。

 そのうち一つを、これまで小型十徳ナイフを突っ込んでいた枝の穴に差し込み、完成とする。


「うむ、まあこんなものだろう」


 石ピックを振ってすっぽ抜けたりしないか確認してみる。悪くない感触だ。

 刃の部分がこれまでより大きくなったため、威力も高そうだ。


「さて、ピックの改修もできた。魔力も大丈夫そうだしウォーターカッターを試してみるか」


 予備の刃をカバンに放り込み、石ピックをベルトに挿すと、いよいよ実験の開始だ。


「まずは水弾を……」


 魔力を掌に集めるように集中。

 手の先に湧き出てきた水を逃さないよう、できるだけ魔力で圧縮する。

 段々小さくなっていく水弾の前方にごく小さな魔力の穴を開けるイメージで魔法の名前を唱える。


「水刃」


 ビッ、という音を立てて細い水の刃がレーザーのように平原を走る。

 一瞬の後、失速した水流が二十メートルほど先で散っていった。


「おおー! これは、なかなかいいんじゃないですか?」


 糸のごとく細い水の刃を放つ魔法「水刃」の完成だ。

 まあ、どの程度使えるのかは実戦で使ってみるまでわからないんですけどね。


「それにしても……」


 魔法というのは本当にイメージ次第で何でもできそうだ。

 ちょっとした現代知識で新しい魔法ができるのだから、深い知識のある人なら尚更すごいことになるんじゃないだろうか。


「……よし。やってみるか」


 実験結果に満足した私は、ウォーターカッターを実戦投入するべく、森に踏み込んだ。




 結果からいうと「水刃」は威力は高かったが当てるのは難しかった。着弾面積がものすごく小さくなるんだから当然ではあるが。

 ただこれは、発射するときに思いつきで手を左右に動かしてみたところ命中率を高めることができ、ついでに切り裂くような効果を得られたので、あっさり改善されたと言っていいだろう。

 水刃の一撃で真っ二つになったスマイル君に合掌。


「しかし発射までに時間がかかるのが難点だな」


 一方的に攻撃できる状況でしか戦っていないからどうにかなっているが、これが複数の敵を相手にせざるを得ない状況になったらとても使う余裕はないだろう。


「なにごとも状況をよく考えて行うべきだな」


 さしあたっては、自分の魔力量を把握することと、使える魔法の習熟に努めることにしよう。


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