第1章 第1話
広がる景色を見渡すと、そこはこじんまりとした部屋の中でした。
「...っ、ここはどこですか?」
「ここか?ここは俺たちの事務所や。」
「事務所、ですか?」
「せや。」
なんの事務所なんでしょう...
そう考えていた時でした。
「あんたがユミユミやね!ようこそ!ミミちゃんプロダクションへ!!!!!!」
と言いながらドアを勢いよく開け、女の子が飛び込んできました。
「ウチの名前はミミ!こっちの世界のトップアイドルやで!」
事務所...?プロダクション...?アイドル...?ミミ...?この子は何を言っているのでしょう...?
「えっ、もしかしてユミユミここに転送された理由知らんの?」
「はい...その方の名前も...」
「はぁっ!?えっちょほんとありえへんねんけど?K君ちゃんと説明してから連れてきてってウチ言わんかった?」
「あ〜すまんなぁ、偶然見つけれたんが嬉しくてうっかり忘れとったわ」
「忘れとったとちゃうやろ!はよさっさと説明してや」
「えー俺が?」
「K君以外だれがすんの」
「はいはい。」
騒がしい人が現れました。
それからK君と呼ばれた彼は淡々と説明し始めました。
「まず、ミミはこっちの世界のアイドルや。さっきはトップアイドルやゆーてたけど実際は売り出し中の地下ドルってとこやな。それで、女の子の2人組を組めばいい、ってなって、占った結果、吉本美優、あんたが選ばれたんや。」
「K君、ちゃんと自己紹介もしてや。」
「...」
「K君?」
「はいはい。俺はK。こっちでは苗字とかないから気にせんとって。このプロダクションのプロデューサーやってる。普段はこうやっておじさまの姿やけど、必要に応じて変身してんねん」
ボフゥッ
K君の姿が変わりました。
30cmぐらいの風船に角が生えたような見た目になりました。
「んーまぁあんましこの姿になる事は無いねんけど、紹介程度に...」
だんだん状況は掴めてきました。
「ところで、ミミさんは私のことをユミユミ、とお呼びされてましたが、私はユミではなく美優ですよ?」
「あー、それはミミが考えたアイドルとしての名前ね!やっぱ本名はまずかいかなぁってことでつけてん」
思ったより適当で驚きました。
「とは言っても、私はまだアイドルになるなんて言ってませんよ?」
「はうあ!!そう言われたらせやねんけど...こんなに背丈が似てて、ウチ好みの黒髪ボブの女の子なんてこっちの世界にはおらんねんもん...」
そう言って彼女は泣き始めました。
確かに、背丈は私の方が5cm高いぐらいで、変わりませんでした。
でも、彼女は小学生のような体型、金髪でおそらく天然パーマ、話し方はKさん同様の大阪弁を話す...私とは全然タイプが違う少女でした。
「そんなに泣かれましても...それにあなたまだ小学生でしょう?どうしてまたアイドルになりたいと思ったのですか?」
バンッ
彼女は近くにあった机を叩きながら、
「ミミは!ミミは小学生8ないっ!もう17歳や!」
はい?
「こちらの世界では成長速度が元の世界と違うのですか?」
「あーいや、ほとんど一緒やで。ただ、ミミが幼く見えるだけ...」
「それは失礼しました...」
まさか私より1つ上だったとは思いませんでした。