プロローグ
わかってる…!そんなことはわかってるの!でもゆるせない!ゆるしたくない!
──目の前にある、心に巣食った闇を解く鍵。しかし、その鍵を手に取るどころか背を向けてしまう不器用な少女。
おいらはねずみちゃんを助けられれば、それ以外はどうなってもいいと思ってる
──大切なものとその他の明確な線引き。それ故に、自分さえ顧みない真っ直ぐで思い切った行動を起こす無邪気な少年。
僕は、本当は何も出来ちゃいない…最後に褒められて嬉しかったのはいつだっけ
──父母の温かな愛に囲まれ肯定されながら育った。それなのにいつしか気づいてしまった、自分の能力とのギャップに苦しむ臆病な青年。
いらっしゃいませ!何にいたしますか?
──父と共に営む喫茶店で、天真爛漫な笑顔を見せる女性。そんな彼女さえ一切の闇を宿さず幸せな日々を送るわけではない。
地球世界であれ、別世界であれ、その間に位置する狭間の街であれ、“人”ならば皆何かを抱えて生きているのだろう。長すぎる時を生きてようやく人の面白さに気づいた俺は、少しばかりおせっかいを始めた。自分の人生を謳歌しないまま人としての生を辞めてしまったことへの罪滅ぼしかもしれない。生まれてそして死ぬ、それなのに生きる意味はあるのかという問いは過去何度も繰り返されただろう。しかし、生き物の正規ルートからドロップアウトした俺に言わせれば、ただ死なずに生きているだけの生ほど無意味なものはなかった。月並みだが、俺が守るこの狭間の街──十字街の人々には、かつての俺のようにならないで欲しい。ああ楽しかった、と小説を閉じるように人生に幕を下ろして欲しい。
そのために俺は、俺に出来る形でおせっかいを続けようと思う。