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第2話:異世界人との出会い

 朝焼けに染まる世界。

 何もない静かな森で、まるで生えてくるかのように突如現れた。


 灰色の髪を持つ青年。シュウだ。


 シュウは目を開けた。


「俺は……一体……」


 呟きながら、おぼろげな意識を覚醒させるために首を左右に振る。


「あれ? 俺って巨大なスライムに溶かされて、死んだんじゃ……」


 外傷がないかを体を確認する。そこである事実に気づいた。


 自分が全裸であった。


「えっ? えっ!?」


 慌てて、股間を両手で隠す。


「な、なんで?!」


 予想外過ぎて、大きな声を上げる。


 すると、突然シュウの目の前に石で造られた門みたいなものが現れた。


 門の枠の中には紫色のゲル状に見えるものがある。


「なんだこれ?」


 そう漏らした瞬間、ゲル状のものに波紋が広がった。そして、中から人が出てきた。


 長い赤髪を後頭部の辺りで一つにまとめた女性だ。その女性が出てくると、すぐに目があった。女性は一瞬、硬直するが、シュウの今の姿を見た瞬間、顔を髪と同じように真っ赤に染める。


「فنfuφάω!」


 女性は慌てて意味不明な言葉を発して、ゲル状のものに戻っていった。


 朝の森の中で全裸のシュウはポツンと一人残された。


 どうしようかと迷ったが、目の前にある門が何かを確認するためにシュウは手を伸ばした。だが、ゲル状のものに触れる前に手を下げる。


 目の前にあるのは未知のものだ。触れると何が起きるかわからないと考え、シュウは門から距離を取る。


「さて、どうしようか?」


 シュウは全裸なので、下手に動くと大変なことになるかもしれないので、その場でジッとすることにした。そもそも自分の今の状態がよくわかっていない。


 シュウは死んだはずだ。だが、生き返った。その時点で謎でしかないが、そもそもシュウが死んだのは湖でだ。だというのに今シュウがいる場所は湖が一切見当たらない。ただの森の開けた場所だ。


 シュウを飲み込んだスライムが移動して、ここで排泄のような行為をしたというのが可能性としては一番高い。だが、そもそもスライムが排泄のような行為をするかもわからない。


 結局考えても謎しかないため、解明のしようがない。だが、何かすることもないので考えるしかない。


 シュウはそんなことを考えていると、ゲル状のものにまた波紋が現れた。そして、さっきと赤髪の女性が現れる。その女性の手には服があった。おそらくは男物の服だ。


 赤髪の女性は顔を服で隠し、シュウの姿を見ないようにしながらシュウへと近づいてくる。特に危害は加えられそうにないので、シュウはジッと待つ。


 シュウの前に着くと、赤髪の女性は手のひらを向けてくる。


『diبن、rugsφηψς』


 赤髪の女性の手のひらが淡く光る。


「言葉、わかる?」


「わかります。一体どういう仕組みですか?」


「魔法だよ。この世界にはよく異世界人が来るから、こういう魔法もあるんだよ」


「そうなのですね」


 シュウは相槌(あいづち)を打つ。


 彼女の言葉に自分は異世界人だと知られていると察した。


「とりあえずはこの服着てくれる?」


「わかりました。ありがとうございます」


 シュウは赤髪の女性から服を受け取り、言われた通り着る。サイズはどういうわけかピッタリだった。


 紺色のジャケットに白色のシャツ。そして、黒色の長ズボン。

 シュウが受け取った服は、恐らく制服だ。制服だとしても着るものはありがたいので、シュウはそのまま着た。


 赤髪の女性はシュウが制服を着るのを見ないように後ろに向いているため、前はどうなっているかわからない。


「着ましたよ」


 制服を完全に着てから、赤髪の女性に声をかける。女性はシュウの方に振り返った。


 赤髪の女性はシュウの方を見る。


「似合っているね」


「ありがとうございます」


 赤髪の女性は笑顔で感想を言ってくれたので、シュウは感謝を返す。


「いいよ。気にしないで。ところで君は?」


朝夜(あさや)主宇(しゅう)です。多分、察していると思いますが、この世界の人間ではありません」


「うん。察しているよ。この世界の人はこんな場所に全裸でいるわけないからね」


「全くその通りです」


 シュウは赤髪の女性の言葉に賛同する。


「多分だけど、シュウくんが全裸でいたのって、スライムに溶かされたからだよね?」


「はい、その通りです。あっ、そういえば溶かされたはずなのにどうして俺は生きているのでしょうか?」


「この世界が千年ほど前から不老不死の世界だからだよ」


「えっ? 不老不死?」


「厳密に言うと十代後半という身体の全盛期で成長が止まり、そこから歳も取らず死なないということだけどね」


「それでしたら、あなたも?」


「あっ、わたしの方は名乗ってなかったね。わたしはビギンス・ルセワル。気軽にビルルと呼んでね。ちなみにわたしはまだ生まれて、一八年しか経ってないよ」


「でしたら、同い年ですね」


「そうなの? だったら、敬語はいらないよ」


「いえ、敬語に関しては癖づいてしまっているので、そのままにさせていただきます」


「う〜ん。なら、仕方ないね」


 赤髪の女性──ビギンスは少し不服そうだが、納得の意を示した。


「とりあえずここにいると、何度も死ぬ可能性があるから、わたしについてきて。ここよりは安全なところだから」


「不老不死の世界なら、どうせしなないのですし、ここにいてもいいのでは?」


「死ぬ時の痛みはあるけど、それでもいいの?」


「よくは……ないですね」


 死ねないのに痛みを感じたいと思わないので、シュウはビギンスについていくことにした。


 ビギンスはゲル状のものに入っていく。


「俺でも問題なく入れるのでしょうか?」


「う〜ん。どうだろう? 念のために手を繋ごうか」


「えっ?」


 予想外の提案にシュウは一瞬固まる。その一瞬でビギンスは強制的にシュウの手を取り、そのまま引っ張った。


 ゲル状のものに入った。シュウがそう認識した瞬間に、景色が変わった。


 シュウの目の前には大きな建物がある。縦の大きさはわかるが、横は広過ぎて果てが見えない。その建物にはシュウが着ている制服と似たような制服を着ている者たちがいた。だが皆、制服を改造しているのか全く同じ制服はない。


「なんか多種多様な格好ですね」


「まぁ、学園とは名ばかりの戦士育成機関だからね。それぞれが動きやすい格好をしているの。わたしだって動きやすさ重視だから少し違うでしょ?」


 ビギンスはそんなことを言いつつ、くるりと一回転する。シュウはずっと目を逸らしていたので、そこで初めてビギンスの格好を見た。


 シュウと同じで紺色のジャケットと白色のシャツは着ている。だが、肩と肘とお腹の部分には布がなかった。スカートはミニスカートで、かなり軽装に見える。


「その格好恥ずかしくないのですか?」


「全然」


「そうです……か……?」


 シュウは少し感心したように反応しようとしたが、気がついたら、シュウのお腹から剣が出ていた。背後から何者かに刺されたようだ。


 何者かを確認するために背後を見ようとするが、見る前に剣から炎が出現して、一瞬にしてシュウの全身を包んだ。


(熱い。痛い。熱い。痛い。痛い。痛い)


 熱さと痛みが交互に襲いかかる。だが、すぐに熱さは感じなくなり、痛みしか出てこなくなった。


「異世界人は……殺す……!」


 少女のような声が聞こえる。だが、眼球が焼け落ちたのか視界はない。


「あちゃー」


 ビギンスはそう漏らしたのが聞こえた。


 それを最後にシュウの意識は途絶えた。

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