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第20主:悪魔の囁き

 シュウはビルルに文字を見せられて、読んでもらっている。両腕がなくて舌もないという状況のおかげなのか集中できるし、頭に入ってくる。恐らくは痛みを忘れるために、目の前のことに集中しているだけだろう。でも、おかげで痛みをあんまり感じない。


 どれくらい経ったかわからないが、洗濯が終わったことを知らせる音が聞こえてきた。


「さて、服も洗い終わったみたいだし今日はここまで。大分と一気にやったから、覚えているかわからないけど、今回した言葉を全部覚えさせすれば授業について行けるからね。それじゃあ、登校する時間になったらまた来るね」


 彼女はそう言うと彼の体を真っ二つにした。すぐに意識はなくなった。


 彼は目を覚ますとサルファとヒカミーヤが覗き込んでいた。


「ど、どれくらい時間は経ちましたか?」


「三十秒くらいです」


 舌が治っていたので安心した。一応手首を回したりもしてみるが、やはり問題ない。


「ふぅぅ」


 少し安心して、ため息が漏れてしまう。


「あの!」


「ど、どうしましたか?」


「お話ししたいことがあるのです」


「わ、わかりました。なんでしょうか?」


「いえ。ここだと誰かに盗聴されている可能性があるので、おトイレからお風呂場でお願いします」


「わかりました。そ、それでは」

「風呂場にすれば?」


「…………へっ?」


「風呂場の方が水系統を使うため機械が壊れるからないと思うんだよな」


「た、たしかに。わかりました。ふ、風呂場でしましょうか」


「かしこまりました」


 シュウとヒカミーヤがお互いに目を合わせず話しているので、苦笑をサルファは漏らす。


「オレは念のためここを見張っておくから」


「「えっ!?」」


「二人してオレに頼らないでくれよ。オレがいない時だってこれからあるかも知れないんだからさ。だから、二人っきりで話して友好を深めた方がオレはいいと思うのだけどな」


「「…………」」


 サルファの正しすぎる正論に何も言い返せない。だから二人は渋々といった感じで風呂場へと入っていく。


 風呂場へと続く扉が閉まった瞬間にサルファはにひっ! と悪巧みしているかのような笑みを浮かべていた。


「それで……話というのはなんですか?」


「妾の種族についてですが」


「種族……ですか? 確か魔物の中でも希少で一番偉い種族で、歴代の魔王を生み出した最上悪魔(コイチルチー)ですよね?」


「き、希少とは言ってませんかその通りです」


「そ、そうでしたか……。す、すみません」


「いえいえ」


「…………」


「…………」


 人と接するのが少し苦手な二人なので会話がそれで終わる。ここにサルファがいたならまだ別だろうが今、ここには彼女はいない。


 いるのは制服を着ているだけの話すことが苦手な人間の敵である元魔王と腰にバスタオルを巻いているだけの話すことが苦手な人間。


 会話が続くはずがない。でも、続けなければならない。


「あ、あの! お風呂一緒に入りませんか?」


「…………はい?」


 突然のわけのわからないヒカミーヤの発言にシュウはなんと返せばいいかわからなかったため、適当に返した。


「お、お風呂を一緒に入ると緊張が緩和されて、キチンと話せると思うのです!」


 ーー逆に緊張して話せなくなると思うな。


「そ、そうですね」


 彼は自分の考えとは真逆の返答をしてしまった。でも、出したものは引っ込められない。だから、二人でお風呂に入ることになってしまう。


 もちろん、シュウが先に風呂場に向かい浴槽にお湯を溜める。その間にカーテン越しにヒカミーヤは着ていた制服を脱ぎ、体にバスタオルを巻く。そして、入ってきた。


「ま、まだ浴槽にお湯は溜まってませんよ」


 彼はそう言いながらも少し違和感を覚える。


 ーー妙にお湯の匂いがキツイな。


 明らかなお湯の匂いなのだけど、彼が今まで嗅いだことのある匂いとは違い、かなり濃い。でも、この世界に来てからは一度もお湯に浸かったりしたことなかった。だから、この世界はこんな匂いなのだと納得してしまう。


「あの……シュウ様」


「俺を様付けで呼ぶな」


「で、ですが……」


「俺が認めたから誰が何と言おうとも俺のことは様付けで呼ぶな」


「かしこまりました。でしたら、シュウ」


「ど、どうしましたか?」


 普通に呼び方をすぐに変えられたので少し戸惑ってしまう。でも、問題はない。


 だというのに何を思ったのかヒカミーヤはシュウに背中から抱きついた。そのため彼女の小さくもなく大きくもない胸の感触がバスタオル越しとはいえ、感じ取ってしまう。


「どど……どど…………どどどど………………どど、どうしたのですかっ!?」


 彼は顔を真っ赤にしてアワアワとしている。というか体全身が硬くなってしまう。もちろん、アレも含む。


「はぁ……はぁ……」


「ふひゃッ!?」


 突然、耳元で呼吸音が聞こえてきて、さらに息も耳に吹きかかったので、彼は思わず変な声を出してしまう。しかし、彼女はさらにキツく彼を抱きしめる。そろそろと指を体に這わせる。


 流石にこれ以上はマズイと考えた彼は彼女の指を掴む。そして、指を伝って手首を掴む。


「妾は最上悪魔の中でも希少種の吸血鬼(ヴァンパイア)なのです。ですけど、血を吸わなくていいのです。妾の種族は高く売れますよ。売っても恨みませんから。ちなみに吸血鬼は血を吸うと少し鬼化してしまうのです。鬼化というのは凶暴化ということです。いつどこだ血を吸い凶暴化するかわからないので、売った方が身のためですよ」


 彼女の言葉は正しく悪魔の(ささや)きのようだ。でも、どこか悲しさを感じ取ってしまう。彼女の過去は想像もつかないほど悲惨だったに違いない。なんとなくそれをシュウは感じ取っている。


 すると、彼は体を反転させて彼女を押し倒す。そして、馬乗りになり彼女と同じように耳元に口を持っていき、伝えておくべきことを囁く。


「俺は絶対にお前を売らない。売られたいとお前自身が望んでも俺は拒否する。このことに関してはお前の意思なんて関係ない。俺のところにいるのが嫌になったら、売られるのではなく逃げろ。俺は追わない。絶対に。これで追ったらお前を俺が束縛しているかのようなものだ。俺はお前を自由にすると誓った」


 彼は伝えると彼女の耳元から口を離す。そして、視線を前に向ける。すると、口に手を当てながら少し頬を赤くしている人物と目があった。


 サルファはまるで恥ずかしいけど面白いものでも見たかのような表情をしている。彼女は扉を少しだけ開けてそこから覗いていたのだ。


「ち、違うからなっ!!」


「逆に怪しいな〜。それにお湯が溢れているし痕跡を隠そうとすれば隠せるしな〜」


「違うっ!! 信じてくれっ!!」


「ホントかな〜。おや?」


 落ちたバスタオルの中から現れたアレを見て、サルファは頬を赤く染めながら、話を止める。


「キャァァァァァァァァァァ!!」


 サルファは叫び声を上げて逃げて行った。


「なんなんだよ。一体。元は男じゃなかったのか?」


 もちろん、普通のサイズになっているので、シュウは余裕なのだ。当たり前だが、落ちたものをすぐに上げて、今はもう隠している。

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