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 『幻覚の姉を持つ双子の話をしよう』

 落ち着きを取り戻した屋敷牢の中で、貝木椛は語り出す。





 これは最近知った話でね。夫婦の妻のお腹の中に双子が出来た。高齢出産というリスクの中で最初はすくすくと大きくなったが、ある時双子の成長が止まり、危険な状態になった。

 お医者さんがお腹の中をモニターで観察すると、双子は勾玉のように姉が逆子だった。そして、時間をかけて観察をして行くと、双子が一つになって行くのがわかった。不完全な二つが完全な一つになることで、なんとか生き残ろうとした。

 そして出産。一人の女の子が生まれたが、やっぱり無理をしてきたのか、産声はない。

 何度も手術を受けて、十年程の月日が経ち、最近やっと問題なく健康に暮らせるようになった。




 ……これだけでもすごい話だけど、ここからが面白い。

 その子はそれまで幻覚を見ていたと語ってくれた。

 それが、脳領域に棲む幻覚の姉。

 母胎の中で体を妹に譲り、精神体だけになって生まれた姉がいたという。

 そして、長い手術を受けて健康になると引き換えに、姉は別れを告げて消えてしまった。





「……っていう話」

 椛は端月はづきのお腹を撫でながら、話を終えた。

「……それが?」俺はその話をした意味がわからず、説明を求めた。

「もしかしたら、似てるのかもって」

「……?」

「幻覚は『生きたがっていた』。そして端月の自殺を妨害した。…自決できない呪い。では無くて、もっと好意的解釈もできる」

「端月を好いている――とか?」

「あり得るかもね」

 俺の適当な仮説が、あり得てしまうと言う。椛は真面目な顔を崩さない。本気でそう思っているらしい。

「だったら、俺への攻撃性はなんだ? 嫌われているのか?」

 蛇の津波に溺れたり、メデューサに石化させられた俺はどうすればいい。

「嫉妬されてたとか? とにかく、端月が死ぬことをよしとしないなら、味方だよ」

 椛はなにやらしきりに頷いている。椛の中では何かしらの結論が出ているのだろう。

「じゃあ、なんで幻覚を紫煙で抑えているんだ?」

「それよそれ。私の仮説が出たわ」

 椛は端月のお腹を触診しながら、続ける。

「多分、それは――」

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