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001

挿絵(By みてみん)


 ――あの腹の子は何?


 場所は封月ふうづき家の屋敷。

 大広間に呼び出され、この俺、尾田切おたきりあかしは目の前の人物に尋問を行われている。


 俺は封月家の娘、封月端月(はづき)の世話係として身の回りの世話を行っていた。その内に俺と主である端月は惹かれ合い、一度だけ体を重ねた。


 ――一度だけ。

 ――それが今の状況に繋がる。




 詰まる所、目の前の人物は二人いる。封月端月の父と母である。

「あの腹の子は何?」

 主の母は氷柱のように冷たく突き刺すような声でもう一度問う。

「端月と……私の子供です」

 鋭い視線と剣幕に怯えながら、振り絞るように答えた。その言葉に、端月の母の後ろで腕を組んで考え込むようにじっとしている端月の父は、「うぅん…」と声を漏らし、眉間の皺を深くして考え込んだ。

「……娘ももう子供ではありません。あなたに責任問題を追及するつもりもありません。しかし、なぜ? 子を埋めない端月が妊娠しているのですか」

「わ、わかりません……」

 そうなのだ。俺の主、封月端月は女性機能を備えておらず。本来妊娠することはありえないことなのだ。今こうして端月の両親と三人で深刻に話しているのは、腹の子が何なのか? についてである。


 腹の子が『何』なのか……


 人間なら、封月家の呪いはまだまだ終わっていないことを意味するが、女性機能はなぜ復活したのか疑問が残る。重ねて言う通り、子宮を備えていない端月には、とても信じられることではない。

 もし、人間でないのなら――状況的にその確率が高いのだが――それが何を意味するのか見当もつかない。


「尾田切君は、娘が妊娠出来ないことを知って、娘を抱いたのか?」

 考え込んでいた端月の父は唐突に聞いてきた。俺が、妊娠する心配のない端月が都合が良いからと身体を求めたのか。と。

「私は世話係としてお使えしている身、もちろん、子を産めない身体をであることは知っていました。しかし、私は以前から端月のことを愛していました。……この思いはずっと胸に留めておくつもりでしたが、あの時まで何もしていません。そして、あの時は端月から私を求めてきました」

「娘が悪いと?」

「いえ、……しかし、正確に状況を説明するべきだと判断しました。」俺は一度唾を飲み込み、続ける。「今問題なのは端月が本当に妊娠しているのか、それとも、幻覚の一つであるのかが問題だと考えています」

「そうだな。……となると、いくら三人文殊の知恵といえど、当人が不在では答えが出ない」

「しかし、端月は今、不安定過ぎます」

 端月は今、腹の子を守る一心で誰にも心を開かない。屋敷牢で閉じ籠り、身体的にも精神的にも不安定な状態だ。

「何かいい方法は無いものか………?」端月の父は再びおとがいに手を当てて考え込む。

 どうしたものか。

 実は俺の中では一つ考えがある。しかし、ある意味ではこの事件の原因である人物を呼び出さなければならないのが、すごく不安だ。

 わずか二週間で五ヶ月程の膨らみとなった腹の子を察するに、事態は焦眉の急。背に腹は変えられない。俺は腹を決め、貝木椛を呼び出すことにした。

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