身売りの女
男は、若い女の身体を求めて。
若さが売りの女は、金を求めて。
そして、寂しさを、埋めてほしくて…。
*
ある男から、LINEメッセージ。
「さゆり、おはよう。早くさゆりに会いたいよ。次に会うまであと1週間もあるね…」
さゆり、23歳、大学四年生。
艶やかで黒々とした髪をボブヘアーに。
背は165cmと、女性にしては高いほう。標準体型ではあるが、色白の手脚は長く、腕や指はほっそりしていてやけに女らしい。
奥二重に高めの鼻。目鼻立ちははっきりしている。唇は厚めだけど、口元は小さくて、慎ましやかに見られる。
丸というかたまご型というか、やはり輪郭も女性らしく、小さな顔をしている。
女優やモデル並のパーツの綺麗さがあるとまでは言えずとも、顔立ちは整っている方で、Dカップある胸に肉付きの良い身体、若い割に妙な色気もあった。
「本当、最低。」
男達からLINEが届く度にいつもこう心の中で吐き捨てた。
自分に対しても、相手に対しても。
どうして私は馬鹿なんだろう。どうして男は馬鹿なんだろう。
どうして私は既婚者に。
どうして男は妻や子がいながら。
純愛でもないの。
「援交」
この二文字を見ると心が張り裂けそう。
汚いことだと教えられ、軽便していた行為であるのに、20を越えた大人が一体何をやっているのか。
「私も早く、会いたいなあ…。でもあともう少しだよ!」
最低だ、最低だ、何度も心の中で思いながら、すぐに既読をつけて返事をする。
罪悪感もあるけれど、結局は会うのを楽しみにしてた。最低、でも、会いたい。
「あ、今回も、2で良いかな。お小遣い。」
慌てて文章を付け加えた。
お金が貰えなきゃ意味がない。
一緒にデートして、ホテルに行って、そして最後にお小遣いとして毎回二、三万貰うのがお約束。
自分の身体を安売りしすぎだろうか。
格好悪いし、汚らしい、わかってる。そんなのわかってた。
「うん。もちろん良いよ。お小遣いね。次会うときは池袋か新宿あたりで美味しいご飯食べに行こう。あとは、クリスマス近くも会いましょう。」
相手からのメッセージでハッとする。もう12月。
去年のクリスマスは彼氏と過ごしたのにな、なんて思い出して悲しくなる。いや、でも今年は援交相手と過ごすの?悲しさ通り越して何だか笑えてきた。
「うん… 」
文字を打ちながら笑ってしまう。
「いや、笑えないか…」
俊という相手の男は35歳の子持ち既婚者。
とある出会い系サイトで出会った。
見た目は爽やかで、顔も嫌いじゃない。くっきりした二重の目に高くて男らしい鼻、歯並びも綺麗。体型はthe中年って感じだけど、身なりも小綺麗にしている。
出会い系で、しかも愛人探しで出会ったにしてはかなり良い相手だと思う。
優しいし、話題も豊富で面白くて、大人の余裕も感じる。
しかし、出会い系で女を探している段階で、客観的に見れば恋愛については超最低な奴ということになる。
子供二人の写真を見せてもらったことがあったが、それを思い出すとやはり笑えない。
あ、また罪悪感。自分とこの男への軽蔑。
でも違う、これは不倫じゃない。気持ちがないの。割り切りだから。
言い訳を必死に考えるけど、心から愛してしまった場合の不倫ならドラマがあっても、身体を売ってお金を貰う援交なんて、憧れ要素は一つもないし、下品なだけ。
奥さん、そして子供に対する罪悪感。
でも、既婚者でありながら、若い女を金で買う男が一番悪い。私は…
「ありがとう。どこか良いお店決めておいてね。今日も一日お仕事頑張れ!」
相手は彼氏じゃない、不倫相手でもない。燃えるような恋をしているわけでも、嫉妬に狂うこともない。
ただの割り切り。やはり、気持ちがないから。大丈夫。奥さん、彼も単なる、遊びだよ。何とか自分の気持ちを落ち着けたかった。
しかし割り切りとは言っても、さゆりは俊に会うことを楽しみにしていた。
お小遣いが貰えることだけじゃなく、セックスすると、精神的にも肉体的にも満たされる。
愛のないセックスのはずなのに、ね。
次で俊に会うのは5回目になる。