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優しいあの子は殺人鬼~プロローグ~
それまで、わたしはとても幸せな日々を送っていた。
家族がいた、彼氏がいた、友達がいた。
悩みが一つもないわけじゃないけど、深刻に悩むようなものではなかった。
だから、この先もずっと幸せなんだろうと根拠もなく思っていた。
考えてみれば、交通事故、自然災害、事件に巻き込まれる、隠れた病気が発見される…いくらでも不幸になる可能性というのは転がっている。
今までわたしが幸せに生きていたのは確率の高い奇跡だったのだ。
その奇跡は突然に終わりを迎える。
「ただいま~」
誰もいない家の中へ声をかける。
当然、返事はない。
別に異常なことではない、両親は旅行中なのだ。
「お帰りなさい、マキちゃん」
「え…」
そこには私の親友が立っていた。
「なんで、シオちゃんがここに…?」
わたしは今まで幸せな生活を送ってきた。
だから、目の前の光景が不幸そのものなのだと理解するのに時間がかかってしまった。
「え…それ…」
親友の手には包丁が握られている。
そこまで思い至ったとき、わたしの親友はこう言った、
「これからあなたを殺します。」




