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○ 12番目の勇者:タンザナイト 2

 王都を守る防壁の高さに驚いた。ずいぶん遠くからも見えるなぁ、と思いながら歩いてきたけど、目の前で見ると、迫力がある。

 大きな石で積み上げられた石と石との間には、紙の入る隙間もない。そして、表面は大理石のように綺麗に磨かれている。もし、敵が攻めてきても、この防壁をよじ登っていくことはできないだろう。さすがはこの国の王都だと思う。


 王都への入り口で検問があった。勇者志願者だというと、すぐに王都の中に入れてくれた。検問所に詰めていた、僕よりも強そうな兵士は凄く丁寧だった。


 王様の住む城まで続く大通りを歩く。人の多さにまずびっくりした。通りを見回しただけでも、村の全人口よりも多くの人が目に入る。この王都にどれだけの人が住んでいるのだろうか。


 両側には、綺麗なお店が並んでいる。露天も多くあり、村では見たことがないような綺麗なアクセサリーを販売している。屋台もたくさんあって、香ばしい匂いや、甘い匂いが、漂ってくる。お腹が空くけど、お金なんて持ってないから我慢するしかない。


 城の入り口にもすぐに着いた。検問所の兵士よりも更に強そうな衛兵が立っていた。立派な甲冑を着ている。僕が、勇者志願者です、というと中に通してくれた。

 お城の中は、大きな壺や大きな絵が飾ってある。天井に吊されているシャンデリアの大きさに、さらに驚く。キラキラと光っているのは宝石だろうか。

 長い通路を歩く。通路には絨毯が引いてある。村から歩いてきたし、絨毯を汚してしまわないように、忍び足で歩いた。


「此処が、接見の間です。モリブデン王は、既に中でお待ちになられております。くれぐれも失礼の無いように」


 そう言って、案内をしてくれた衛兵は、扉を開けてくれた。

 長い赤絨毯がずっと先まで続いており、その先に座られているお方が王様だろう。緊張しながらも、足を前に動かし、接見の間に入った。一歩進めば、自然と二歩目と続き、なんとか歩く事はできたけど、心臓は早鐘のように激しく鼓動している。

 接見の間の天井の高さ。そして、天井に描かれている天井画の素晴らしさ。夜空の星空と月が描かれているが、本物の夜空よりも美しいのではないだろうか。



 王様の方にゆっくりと歩いていく。手前には、女性が立っている。とても綺麗な人だ。こんな綺麗な人は見たことがない。少し、見取れながら歩いていると、その女の人が、そっと、手で制止するような動作をした。

 僕は、そこで止まれ、という意味だと気づきその場に跪いた。衛兵さんに教えてもらった通りの礼儀作法をしているが、失礼はないだろうか。

 モリブデン王は、国民に対して寛容な人という評判は良く聞く。国民を愛し、その為に一生懸命働き、魔王の出現に誰よりも心を痛め、魔王出現と同時に、勇者を募集されたという行動力と実行力もある方。魔王さえ現れなかったら、みんなが幸せに暮らせる国にしてくださるお方、そんな噂は村まで届いていた。


「よくぞ志願してくれた。さっそく勇者となる為の試練を行いたいと思うが、準備はよいか」


 僕は、顔を上げた。モリブデン様は、凜々しい顔をされている方だと思った。


「はっい。よろしくお願いします」


 声を何とか出せてよかった。モリブデン様は、王格とでも表現すればよいのか、なにか壮麗な雰囲気をもたれている。明らかに普通の人とは、次元が違うということを、感じ取らずにはいられない。


「君の相手は、ゴブリンだ。闘技場で戦ってもらう」


 ゴブリン……。王都に向かう途中でも何匹かは退治した。


「はい。頑張ります」


「では、早速闘技に移動してもらおう。シルティー、案内を頼むぞ」


「畏まりました」


 先ほどの綺麗な女性の名前がシルティーと言うのだろう。シルティーさんが、膝を曲げて、お辞儀をしたので、僕もそれを見よう見まねでやってみる。これで大丈夫かな? 



 僕は、シルティーさんの後についていく。シルティーさんの歩く度に、左右に揺れる長い髪。とても素敵だと思う。後ろを歩くと、甘い香りがする。


「戦われるのは、普通のゴブリンではありません。プレートアーマーを装備しています。お気を付けください」


 シルティーさんが後ろを振り返って説明してくれた。見返り美人というのは、このようなものなんだな。


「プレートアーマーですか。分かりました。ありがとうございます」


 この杖で対応できるか分からないけど、やるしかない。


「着きました。それではご健闘を」


 コロシアムの入り口の門が開いた。そして、僕が、闘技場の中に入ると、その門は静かに閉じた。不安が大きくなっていく。


「準備は良いか?」



 大きな声が響いた。モリブデン様の声だった。声の聞こえてきた方向を見上げると、王様の御姿があった。王様自ら、僕の闘いを見ていてくださる。叡覧えいらんの御前試合。みっともない姿は見せれない。

 僕は王様に向かって頭を下げた。そして、臆病になっていた自分自身に活を入れた。


 僕が入ってきた門とは逆の門が上がっていく。ゴブリンが出てきた。王都への道程で倒したゴブリンよりも、遠目で見ても大きく感じる。プレートアーマーを着ているからだろうか。 

 

 ゴブリンがゆっくりと歩いてきた。プレートアーマーを装備している分、速度はなさそうだ。油断はできないけれど。ゴブリンの武器は、腰に下げている剣だろう。まずは剣を抜かれる前に先手を仕掛ける。

 

 杖を大きく振りかぶって、ゴブリンの頭部を殴ったが、効果はあまり無かったようだ。杖が折れなかっただけ良かった。やっぱり、普通のゴブリンのようにはいかないな。


 ゴブリンがゆっくりとした動作で、剣を抜いた。これからが本番だ。

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