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 ドキドキしながら、病室に入った。恐る恐る彼を見ると伏し目がちにしている彼は私と目が合うことはない。ほっとしたのも束の間、岡田医師の言葉にハッとする。


「はいー、処置終わり~永井ちゃん、あとよろしく」

「あ、ハイ!」


 処置が終わればあとの包帯を巻いたりなんかは看護師一人でやる。途中まで固定器具を押さえていた岡田医師だが、一人できそうなくらい巻けたら早々に病室を出て行った。やっぱり先生は忙しいからね。…………ってふたりっきりになるっていうことを忘れてた! 何を話したらいいかわからないまま、黙々と包帯を巻いていく。


 すると――――

 隣のカーテンの向こうから声が聞こえてくる。隣のベッドも若い男の子だ。


「先生、もう行ったよ」

「ん、そだね……あッ」


「こっち来いよ」

「ここは病院だよ?」


「……いいじゃん……」

 ついつい聞き耳を立ててしまう。うわ、看護師の私が隣にいることわかってないのか?! ど、どうしよ! 汗が噴き出す。つい、思わず顔を上げてしまった。当然、その私が顔を上げた先には伊崎さんの顔があるわけで……


 同じく目を丸くした伊崎さんはかなり驚いたらしく、まだ包帯が巻き終わっていないのに後ろに飛び退いた。そしてその拍子に軽くではあるが、私の肩に足が当たった。


「いっつ……てー……ごめん、永井さん」

 伊崎さんは少し当たっただけだったけどかなり痛かったようで顔を顰めた。その声でやっと私がカーテンの中に残っているとわかった隣の若いカップルは途端に静かになる。気まずい沈黙だが、伊崎さんが謝ったのに黙っているわけにはいかない。


「大丈夫です。伊崎さんは大丈夫ですか」

「……大丈夫です……」


 包帯が巻き終わると彼はまだ気まずいのか下を向いたまま赤くなっている。私はそんな彼の姿を見て少し微笑んだ。だってちょっと顔が近かったくらいで赤くなるなんて可愛くない?


 カーテンを開けようと思ったら外で「サチ、寝てんのか」と男性の声が聞こえた。

 聞きなれたその声は――――



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