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休養

「回せ、回せ――――!パスパス!」

「伊崎!行ったぞ!」


「オッケー!――――ッ?!!」


 ……マジ、有り得ね……


 あんなとこで足踏まれなければ骨折しなかったのに……足が変な方に曲がり、折れた骨は皮膚を突き破った。突き破った骨を見て俺は痛みが最高潮に達した気がした。そして反射的に気持ち悪くなる。顔面蒼白。そんな顔してたんじゃないかと思う。


 気を失って……運ばれて~手術して~今に至る。試合出れないし、ガッコの授業も遅れるし、、、すっげぇ焦る、、、だからちょっと期待してたんだ。少しでも気持ちが明るくなればいいな、とか思ってさ。


 でも、俺はこんなときまでツイテない! なんで!!なんで!!

 激痛と闘いながら心の中で叫んだ――――


 ――――俺の担当看護師になったその人は……ピンクの可愛いナース服を着た初々しい看護婦さんではなく、青いパンツタイプのナース服を着た背の小せぇ男。


「担当看護師の吉田です。よろしくお願いします」


 痛みに耐え切れなくて頭だけ下げた。流石にその日は痛みで自分でトイレに行くことができない。だから尿器と呼ばれる卑猥な形の容器に用を足すわけだが……このときばかりは同性の看護師でよかった、と安堵する。


 その日の夜――――初日は痛みが激しすぎて看護師なんて目に入ってなかったんだ、、、、夜中、黄色いカーテンを開けたのは……


「伊崎さん、眠れませんか」

「え、あ、ハイ」


「痛み、酷いですか」

「かなり……」


 お団子頭にピンクのナースキャップが夜中のベッドについている照明に照らされてオレンジ色に染まっていた……カーテンを開けて入ってきたその人は俺の理想のナースそのもので少しだけ高めの身長、スラッとした足にくっきりと浮き出るアキレス腱。


 ……てか、胸でかッ!そのナース服ちっちゃくね?胸のあたりが若干きつそうに見える。……すっごく俺好みだけど少しだけお腹がぽっこりしてるかな? でも、一般的に言えば許容範囲のウエスト。細いことに変わりはない。こんな時でも女の身体をじっくりと観察してしまうのは男の悲しい性。すぐさま、彼女のネームに目をやった“永井”と書いてある!


 気に入った!

 永井さんのおかげで痛みが半減したような気がした。


 日が経つにつれ、どんどん痛みはなくなり、怪我が治っていくのを実感する。怪我が治っていけば当然、痛みも薄れ、それなりに男の欲求も出てくるわけで……たまに顔を見せる永井さんの胸にばかり目がいっていたのは若気の至りで済ませてください。ということでお許しを。


 もうすっかり良くなってすぐにでも気持ちは歩きたい気持ちでいっぱいになるけれど、医師の説明によるとギプスを外せば、寝返りを打っただけでも悶えるほどに痛いし、歩くなんてのはもってのほかだという。


 そんな日の夜、彼女はまたもや深夜の勤務になったらしく、夜中に俺のベッドに来て様子を見る。患者の様子を見るのはもちろんだけど、きっと照明がついている患者のところの電気を消して歩いたりもしている。


 俺は寝たふりをして彼女が近づくのを待った。照明のスイッチの届く場所には俺の荷物が積み上げられていて、そこから電気を消すことはできない。だから、反対側から手を伸ばして消さなきゃいけないんだけど……薄目を開けると彼女の大きなバストが目の前にある!


 膝をベッドに乗せて身を乗り出していた。表情を窺い知ることはできない。でも、「もうッ!」と小さな声で少し怒っているような声が聞こえた。だけど永井さんが怒っていることよりも目の前のバストが気になって仕方がない。


 ……ちょっとだけ触ってみたりして……


 彼女が照明のスイッチに四苦八苦してるところに胸の下に手を入れてみる。もう少し下がってくれれば俺の手にジャストフィット! もっと下がってもっと!俺はあくまでも受身だ!自らは触ろうとはしていない!あとちょっとというところで影がなくなった。


「ん? あれ、伊崎さん起きちゃった?」

「あ、ハイ」


 惜しい!すごく惜しい!あともうちょっとだったのに!


「それよりも何ですか、この手は……」

 彼女が俺の手の人差し指を掴んでブラン、ブランとさせる。


「いや、その、、、永井さんのでっかいオッパイに押しつぶされそうだったので……窒息しそうでしたよ?」


 冗談ぽくそう言うと彼女の大人っぽい顔がカァーっと赤くなるのがオレンジのライトの下でもよくわかった。


「~~ッ伊崎さんはこの辺、散らかしすぎです! もう少し片付けてください」


 俺は永井さんの表情を見てニヤリとした。子供相手に怒る彼女を見るとなんだか可愛くてもっとからかってやりたくなるんだよな……



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