プロローグ
毎日、同じ職場。毎日、同じ職場の顔ぶれ。まあ、そんなのは当たり前だけど。今日も深夜勤も終わる時間が迫り、朝のバイタルチェック、申し送りの準備に忙しなく動いていた。
プルルルル。ナースコールがナースステーションに響く。
「どうされました?」
「点滴の管はずれちゃって、、、すみません」
外科のこの病棟はあまり重症の患者が運ばれてくることが少ないので急変することが少ない。……田舎の小さな病院だからっていうのは突っ込まないでネ。
「はーい。すぐ行きますね~」
返事をしてすぐに病室へ向かった。
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もう、8月になると朝10時ともなれば外気が暑くて仕方がない。朝から太陽が私の肌をジリジリと焼く。夜勤明けの朝は眠いし、でもお風呂入りたいし、疲れてるし、きっと今の表情、最悪。
今日は日曜日特に出かける予定もないし予定を立てる気もない。だって気分も最悪なの。通勤ラッシュは終わっている時間だからそれほど混んでいないのでラクラク椅子に座れた。電車に揺られ、お腹をさする。
あと、どのくらい勤めればいいかな。下車する駅にたどり着いて少し歩いてから改札口を見ると見慣れた人物が迎えに来てる。スラッとした長身にワイルドな顎鬚。筋肉質な身体は見るからに逞しい。その外見とは裏腹に心配性の彼なのだが。
「おい、大丈夫か。顔色悪いんじゃないか?」
「そんなことないわ。少し疲れてるだけ」
本当は『少し』じゃなくて『とっても』疲れてるのだけど……
「ほら、階段。手掴まれよ」
手を貸してくれたこの男は伊崎歩登。恋人、、、夫、、、?わかんないけどそんな感じ。お互いの自由と自立した関係を保つためにその関係を続けている。だけど、この状態、自立しているとは言い難い。
病院での勤務時間を過ぎても自由がないし、と言っても私も毎日迎えに来てくれて『来るな』とははっきり伝えないのだから文句など言えないが。……でも、窮屈だな、なんて贅沢なこと考えちゃった……
歩きながら
横になりながら
料理をしながら
仕事をしながら…………
せり出たお腹をさするのが日課になってしまった。
今まではお互いに働いているので料理の好きな私は料理担当でその代わりに伊崎は掃除担当だった。洗濯は仲良く二人で、というのが常だったのに。最近は料理しかさせてくれない。というのも、伊崎はあまり料理ができないから。だけど、深夜勤などのときはできないなりに何か作ってある。
市販のルーを使ったシチューであったり、サラダであったり……
嬉しいけどやっぱり私が作りたかったのに、、、私のストレスは少しずつ積み上げられていく――――




