第八章 王都へ
賽莉亜は隊をまとめ、
蓮とジェナを伴って、王都へと向かっていた。
激戦を終えたあとの道のりは静かで、
張りつめていた空気も、少しずつ和らいでいく。
その道中、蓮が隣を歩くジェナに声をかけた。
「なあ、ジェナ」
「ラファエル王国に着いたあと、
何か考えてることはあるのか?」
ジェナは少し考えるように首を傾げる。
「んー……?」
「特には、ないかな」
「とりあえず住む場所を見つけてから、考えるつもり」
そう言ってから、
ふと思い出したように続けた。
「でも……」
「旅の資金は、もうほとんど使い切っちゃったから」
「たぶん最初は、
冒険者ギルドで依頼を受けることになると思う」
その言葉に、蓮は目を瞬かせた。
「冒険者ギルド……?」
「それって、何なんだ?」
賽莉亜が歩きながら答える。
「各地の依頼をまとめて、
冒険者に仲介する組織よ」
「魔物討伐や護衛、調査任務……
王国だけでは手が回らない仕事を引き受ける場所ね」
「どう?」
「興味、ある?」
その話を聞いて、蓮の表情が一気に明るくなった。
「じゃあさ!」
「俺、行ってみたい!」
そう言ってから、
隣にいるジェナを見て続ける。
「ジェナも、王都に着いたら一緒に行かない?」
ジェナは一瞬きょとんとしたあと、
すぐに柔らかく笑った。
「うん」
「もちろん、いいよ」
その様子を見ていた賽莉亜が、口を開く。
「蓮。
王都に着いたら、私がギルドに紹介するわ」
「それなら、
入会試験は免除されるはずよ」
その言葉に、蓮は目を輝かせた。
「ほんと!?」
「ありがとう、姉ちゃん!」
――――――――――
――その頃。
人知れぬ、薄暗い場所。
黒い霧がゆっくりと集まり、
やがて一つの人影が、その中から姿を現した。
背には二枚の翼。
頭には、歪に湾曲した羊角。
それは――
先ほど、戦場を遠くから眺めていた、あの魔族。
魔族は低く息を吐き、
周囲に控える配下たちへと視線を向けた。
「……頃合いだ」
重く、湿った声が空間に響く。
「人族の信徒どもを――」
「動かせ」
「……ふふふ」
嗤うような笑みを浮かべると、
黒い霧は再び、その身体を包み込んでいった。




