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第十二章 吞噬



第十階層の守護者を倒した蓮たちは、十分に休息を取ったのち、さらに上層へと進んでいった。


しかし―


階層を重ねるごとに、出現する魔物の強さが明らかに増している。


(おかしい……)


リナは内心で違和感を覚えていた。


(本来、この辺りの階層の強度はここまでではないはずだ……)


口には出さない。

だが警戒心はすでに最大限まで引き上げられていた。


数階層を突破したその時――前方から激しい戦闘音が響いてくる。


「何してやがる!!」

「フェイサ、気をつけろ!!」


鋭い矢が、フェイサと呼ばれた女性の頬をかすめて飛んだ。


蓮たちは物陰に身を潜める。


ジェナが小声で言う。


「……二つのパーティーが戦ってる」


リナは静かに答える。


「ここではよくあることだ」


「塔の中では監視も届かない。野外や他の迷宮でも似たようなことは起こる」


「一番多い理由は――相手の戦利品を奪うためだ」


その言葉の途中で――空間が裂けた。


二つのパーティーの傍らに、黒い穴が開く。


濃密な魔力が溢れ出す。


あまりにも濃い。

リナでさえ眉をひそめるほどの圧。


黒い穴の中から、瞳が赤く染まり、無表情の人間たちが現れる。


続いて、黒い人型の存在が這い出してきた。


リナの瞳が見開かれる。


彼女はすぐに戦っていた二つのパーティーへ視線を走らせる。


――そのうちの一隊。


何人かの瞳が、同じ赤に染まっている。

黒い穴から現れた者たちと同じ色。


(やはり……)


(塔の中に、本当に“あれ”がいる……)


(堕落……天翼族……!)


「蓮!ジェナ!」


「襲われている側を援護しろ!!」


三人は同時に飛び出した。


「琉璃!」


ジェナの魔力が展開され、氷壁が瞬時に形成される。


黒き人影の攻撃は氷壁に阻まれ、弾き返された。


その隙に蓮が踏み込む。


赤い瞳の二人へ一気に距離を詰め、鋭い蹴りを叩き込んだ。


二人は吹き飛び、床を転がる。


リナも前へ出る。


空を殴る。


轟音と共に放たれた拳圧が、黒い人型の群れと操られた者たちをまとめて吹き飛ばした。


「た……助かった……」


救われた冒険者が震える声で言う。


「ありがとう……」


「け、拳聖様……!?」


リナは短く告げる。


「今は驚いている場合じゃない」


視線は前方。


「……来るぞ」


再び空間が歪む。


リナは低く命じた。


「よく聞け」


「目の前の敵は――」


「全員、斬れ」


「一人も残すな」


「はっ!!」


全員が応じる。


だが――


蓮だけが声を出さなかった。


戦闘は激化する。


蓮は赤い瞳の青年と刃を交える。


剣を振り上げる――


だが一瞬、止まった。


(まだ……戻れるかもしれない)


その迷い。


背後から迫る黒い刃。


「蓮!!」


轟音。


リナの拳が敵を吹き飛ばす。


蓮は地面に崩れ落ちる。


次の瞬間――


パシン。


強烈な平手が頬を打った。


「何をしている」


低く重い声。


「ここは戦場だ」


「迷った瞬間に死ぬ」


蓮は言葉を失う。


リナは真っ直ぐに告げる。


「斬れないなら立つな」


「お前が倒れれば、守れるものも守れない」


蓮は拳を握りしめる。


「……すみません」


リナは一瞬だけ蓮を見つめる。


(蓮……)


(この世界は弱肉強食だ)


(適者だけが生き残る)


(迷えば――死ぬ)


リナは背を向けた。


「まだ終わっていない」


「まだ戦えるなら、武器を取って立ち上がれ」


戦場は、まだ続いていた。

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