第九章 天空の塔
数日後――
一行は、無事にラファエル王国へと戻ってきていた。
蓮も無事に冒険者登録を済ませ、
冒険者の証を手に入れることができた。
ジェナもまた、
ギルドが用意した簡素な宿に身を寄せていた。
決して快適とは言えないが、
ひとまず落ち着ける場所は確保できたようだ。
二人はその後、
いくつかの依頼を共にこなし、
すでに何度も協力して行動していた。
その頃――
賽莉亜は白綾女王と共に、
今回の魔物氾濫について話し合っていた。
不自然な点が多すぎること。
そして、魔族の存在について。
――そして、この日。
冒険者ギルドに入った蓮とジェナは、
中のざわめきに気づいた。
「……なんだ?」
近づいてみると、
掲示板に大きく貼り出された張り紙が目に入る。
《天空の塔 まもなく開放》
蓮は首を傾げた。
「天空の塔……?」
すると、分会長が近づいてくる。
「天空の塔ってのはな、
五年に一度、自主的に開放される試練の塔だ」
「中にはたくさんの宝が眠っていて、
成功した冒険者は一気に有名になる」
「だが、その分危険性も高い」
蓮は疑問に思い、聞いた。
「自主的に……?」
分会長は説明を続ける。
「塔は一度開放されると、
しばらく休眠状態に入る」
「空気中の魔素を吸収して、
その周期が大体五年だ」
「吸収が終われば、
勝手に開くってわけだ」
そして、真剣な表情で付け加えた。
「言っとくがな」
「剣聖殿からは、
お前を無茶させるなって言われてる」
「中は、本当に危険だ」
蓮は何も言わず、
ただ分会長をじっと見つめていた。
「……おい」
「そんな目で見るなよ」
「お前に何かあったら、
俺が剣聖殿に殺されちまう」
蓮は舌打ちする。
「……ちぇ」
「じゃあ、
俺が自分で姉ちゃんに聞く」
――――――――――
場所は、ラファエル王城。
賽莉亜の執務室。
「ダメ!」
賽莉亜は即座に言った。
「お願いだよ、姉ちゃん!」
「俺、本当に行きたいんだよ~!」
だが、賽莉亜は首を横に振る。
「あそこは本当に危険なの」
「私はね、
百人規模の隊が入っていくのを見たことがあるわ」
「出てきたのは……たった一人」
「しかも、手も足も失っていた」
「その隊は……」
「Sランクだったのよ」
蓮は何も言えず、
落ち込んだように賽莉亜を見つめた。
その時だった。
――バンッ!
突然、扉が勢いよく開かれた。
「ははは!」
「だったら、私が連れていけばいいだろ!」
豪快な声とともに、
両腕に包帯を巻いた女性が入ってくる。
「リナ姉!!」
賽莉亜も視線を向けた。
「……辺境から戻ってきたのね、二姉」
「そうだ」
「でも、フィアはまだだ」
「別の場所で手伝ってる」
「今は辺境の情勢が良くない」
リナは続ける。
「で?」
「さっきの話……天空の塔だろ?」
蓮は頷いた。
「うん」
「でも、賽莉亜姉がダメだって……」
賽莉亜は言った。
「仕方ないでしょ」
「私も公務が忙しいのよ」
「時間があれば私が連れていったけど、
今は無理」
「でも、二姉が戻ってきたなら話は別ね」
リナは腕を組み、蓮を見る。
「蓮」
「本当に行きたいなら、私が連れていく」
「ただし……」
「中は本当に危険だ」
「私も若い頃に入って痛い目を見た」
「入ったら私はあまり手を出さない」
「でも、私が止まれと言ったら、
必ず止まれ」
「分かったか?」
蓮は大きく頷いた。
「うん!」
蓮は振り返り、叫ぶ。
「ジェナ!」
「行けるってさ!」




