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プロローグ
一人の男が、片膝をついていた。
白い外套はすでに血に染まり、荒い息を吐くたびに、身体がわずかに揺れる。
立ち上がることすら、もはや容易ではない。
「……魔王……」
男は顔を上げ、低く言葉を絞り出した。
「俺が生きている限り、貴様の望みは決して叶わない」
それに対し、魔王は愉快そうに嗤った。
「ククク……その有様で、まだそんな大口を叩くか」
男は答えなかった。
ゆっくりと、しかし確かな意思をもって立ち上がる。
次の瞬間――
堰を切ったように膨大な魔力が解き放たれ、純白の焔が男の全身を包み込んだ。
男は視線を横へ向ける。
そこには、力尽きて倒れている一人の女性の姿があった。
――エリシア……
――すまない。
その想いを胸に刻んだ瞬間、
男は地を蹴り、白焔をまとったまま魔王へと突進した。




