表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/21

2 アイテムドロップが確実に起こる

 翌日、俺は昼近くまで寝ていた。

 さすがにパーティー追放をされた次の日から元気に活動することはできない。

 とにかく気分が乗らない。



「これ以上部屋にいると、もう一泊分のお金をもらいますよ。連泊されること自体は構いませんが」


 昼前になって、宿の店主にドアの前から呼ばれた。

 連泊してもよかったが、ここで連泊分のお金を払うと、ずっとだらだら部屋に籠もってしまいそうなので一度出ることにした。





 近場の食堂で遅い朝食を食べて、今後のことを考えた。

 お金を稼がなければいけない。


「ゲート・オブ・レジェンド」(長いので、世間で使われている「ゲーレジェ」で略す)の世界では、魔物との戦闘に勝っても、ゴールドは手に入らない。

 例外はドロップしたアイテムとしてゴールドが手に入る場合だけである。


 なので、ザコの魔物を狩り続けると定収入になるというようなことは起きない。


 まあ、冒険者の場合、ある程度強くなれば、ダンジョンに潜ってアイテムを拾って換金できるが。

 そのため、冒険者ギルドで紹介しているクエストを一切受けずに冒険者稼業を続けることは可能ではある。冒険者ランクはろくに上がらないが、そうやってダンジョン探索だけをして生活している奴はそこそこいる。


 そういえば「ゲーレジェ」でもイベントを無視して、黙々とダンジョン探索だけ極めるタイプのユーザーはいた。そういう楽しみ方もできるのはいいことだ。




 今の俺の場合は……。

 どうしよう……。


 今のステータスで一人でダンジョン探索をするのは非常に危ない。ショボいザコしか出てこないダンジョンもあるが、それでは収入にならない。


 ショボいモンスターがたまにドロップするのは薬草とか錆びた剣とかガラクタみたいなものが圧倒的に多い。どんなガラクタみたいなものでも売ることはできるが、微々たる額だ。



 しかし……今のステータスでソロで、冒険者ギルドが紹介しているクエストをこなすというのも難しい気がする。

 迷い犬探しとかベタでリスクの小さいクエストもあるが、失敗した場合、1ゴールドも入らない。



 なら、新規メンバーを募集しているパーティーを探すか?

 それもないな。

 俺の職業は剣士。レアな職業でもないから、ステータスが低くてもいいから是非来てくれというところは少ないだろう。



 それに、なかなか新しいパーティーが見つからなかったら、いよいよ悲惨な気持ちになりそうだし。



「よし、ソロでやってみるか」


 食堂で一人、つぶやいた。

 

 巨大バッタとかスライムとか、どこにでも出てくるザコの魔物を狩って慣らしていこう。

 腐っても剣士なのだから、剣を振るわないと体がなまっていく気がするし。





◇◆◇◆◇




 俺は町を出ると、近場の草原を歩いた。

 そのうち茂みから魔物が出てくるだろう。


 まず、出てきたのはスライム。

 亜種の中には強いのもいるが、ベーシックなザコの魔物だ。



「もし、よかったら何か落としてくれよ」


 その時、俺はアイテムドロップのルールを思い出した。


「ゲーレジェ」では、【幸運値】はアイテムドロップに影響するが、戦闘終了後にどのキャラクターの【幸運値】を参考にするかは完全にランダムである。

 なので、俺だけ【幸運値】が高かろうと、5人パーティーで活動していた頃は影響は小さかった。



 だが、俺一人で戦う場合、戦闘終了後の【幸運値】は俺のものだけが選ばれる。

 アイテムを得られる確率は大幅に上がるのではないか。



 たとえ薬草であろうと半分の確率でドロップしてくれれば、換金することで生活はできる。



「頼むぞ! 何か落としてくれ!」


 俺は祈りながら、銅の剣を振るった。

 威力はショボいが、それでもスライムを倒すには十分だ。

 スライムが半分になって、動きを止めた。


 ――と、スライムの横に何かが現れていた。


 ドロップしたアイテムだな! よし! 【幸運値】が少しは役に立ってくれた!


 しかも、日の光を浴びて、かすかに輝いている。早速拾ってみた。ブレスレットだった。



「これって、『くず水晶のブレスレット』か?」



 前世のゲームの知識を引っ張り出す。前世の自分の記憶はあいまいだが、ゲームの記憶は別だ。とくに攻略ウィキはマニアックな項目まで読んでいた。


「ゲーレジェ」はかなりやり込んでたから、だいたいの目星はつく。ザコの魔物でも稀にそこそこの値段のするものを落とすケースはあるのだ。



 たしか、このアイテムは5000ゴールドで売れたはずだ。

「ゲーレジェ」の世界では1ゴールドが約1円。


 泊まってた安宿は一泊3500ゴールドだから、スライム1体倒すだけでいきなり宿代と食事代ぐらいは確保できそうということになる。


「よしっ! ついてる! マジでついてる!」




 ブレスレットを革袋に大切に入れて、次の魔物を探した。



 ほどなくして、小型ケルベロスが出てきた。こいつも大して強くはない。


 飛びかかってくる前に俺のほうで剣を振るう。

 二度ほど剣を叩きつけてやると、小型ケルベロスは動かなくなった。


 またも何か日の光を受けて、光るものがあった。



 小型のビンだ。緑の液体が入っている。


「これって、『万能回復薬』か」


 すべての状態異常を治してくれるうえに、ある程度HPも回復してくれる便利アイテムだ。


「だとすると、2万ゴールドで売れたはずだな……」




 そのあと、何度かザコ戦を行ったが、『万能回復薬』を2度も魔物がドロップした。


 こうして少なくとも、俺は当座の生活費に困ることはなくなったのだった。


次回は昼12時台頃に更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ