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17 宮廷御前試合のイベント

 ポポロに俺のそばは居心地がいいとうれしいことを言われた翌日――


 早朝から強いレアイベントが来るという虫の知らせがあった。


 これは告白イベントぐらいの規模じゃなさそうだ。


 冒険者ギルドに顔を出すと、いろんな冒険者がこっちを見てきた。




「おっ、Bランクのアルクだ」

「ポポロちゃん、今日もかわいいな」

「あんな美少女とパーティーなのはうらやましいけど、Bランクにゃ勝てねえしな」




 いつのまにか俺たちはこのスラーツという都市で有名人になっている。

 毎日、冒険者ギルドに顔を出していれば、Bランクの奴だっていうことも広まるか。


 ちなみに【幸運値】が異常に高いこともギルド側は知っているはずだが、それが冒険者のほうで噂になってる様子はない。


 ちゃんとギルド側が守秘義務を守ってるのもあるだろうが、そもそも【幸運値】が高いか低いかを誰も気にしてないのだ。そんなことよりBランク冒険者がいるということのほうがずっと目立つ。


 まさに捨てステータスなのだ。誰も興味を払わない。





「あの、アルクさん、少し来ていただけますか?」


 受付のお姉さんのほうから呼ばれた。ギルド側から呼ばれるというのは珍しい。




「何かありましたか?」

「アルクさんに対して宮廷御前試合の招待が来ています」

「宮廷御前試合!」




 思わず、おうむ返しに叫んでしまった。


「アルクさん、宮廷御前試合というのはそんなに大きなものなのですか?」


 ポポロが尋ねてくる。


「8人から最大16人ぐらいの冒険者が呼ばれる、栄誉ある試合だ。最大16人っていっても完全なトーナメント戦ってわけじゃないけどな。王族や貴族が観覧するし、その王族や貴族が見たいと思った試合が組まれる」

「ということはいい結果を出すと褒美をもらえたりするわけですか?」


「そうだな、結果次第では騎士として認められることもある。騎士っていうのは剣士の上位職でもあるし、末端の貴族の扱いも受けられる」


 まさにあらゆる意味でグレードアップできるチャンス!






「ゲーレジェ」の中で大物を目指す際の登竜門となるイベントが宮廷御前試合だった。


 選ばれるのはCかBランクの冒険者。

 ここでいい結果を残すと、実力者だけが呼ばれるイベントなどにも声がかかるようになる。

 そこでも結果を出せば、Aランク冒険者になれる可能性すらある。



「ゲーレジェ」でAランクまでキャラを育成したプレイヤーの多くは宮廷御前試合か、さらに大規模な宮廷トーナメントを経験している。


 ただ、宮廷トーナメントのほうはすでにAランクの冒険者だって参加するので、そこで上に進むのは極めて難しい。バンティスみたいな奴がごろごろしている。



 Aランク冒険者たちをあっさり倒しまくれるなら、どっちみちほかのクエストとかでもAランク冒険者になれそうだしな。

 なので、トーナメントのほうは上に行くための場というより、すでに有名すぎる奴ら同士の勝負の場だ。たとえで言えば、オリンピックみたいなものか。


 宮廷トーナメントは中ボス設定の魔族などを倒すよりはるかに難しいと言っているプレイヤーも多かった。




 一方で、宮廷御前試合はAランク冒険者は普通は出場しない。まだ有名になりすぎてない見込みのある奴を王族や貴族が選んで連れてくる。



「ゲーレジェ」内で宮廷御前試合に選ばれる細かい仕様は公表されてないが、冒険者ギルドのクエストで高いポイントを得ているのは必須だった。

 問題はデカいクエストの成功者ぐらい、プレイヤーの数で考えると腐るほどいることだ。なので、出場できるにはかなりの幸運がいる。



 で、幸運が必要なイベントを俺が逃すわけがないってことだ。





 冒険者として名を上げるためには出るしかない。

 せっかく「ゲーレジェ」の世界で生きているなら、もっと上を目指したい。





「ケガの危険もあるので辞退の権利もあるのですが、尋ねるだけ野暮なようですね。期日までにガーネット王国の王都ボースティンにお越しください。今から交付する招待状をなくさないでくださいね」



 受付のお姉さんに招待状をもらった。



 どこまでやれるかわからないが、剣士として出ないなんて選択はありえない。








 期日まで俺はポポロと軽い手合わせをした。

 ポポロのステータスも相当なものだ。練習相手には十分だった。


 それと、拠点にしているスラーツ周辺の道場をいくつか回った。


 ステータスの極端な上昇を図れる時間はない。ここから先は確実に攻撃を当てられるか、防げるかの勝負になると思う。あるいは相手は魔法使いであれば、魔法を唱えられるまでに倒せるかどうか。



 やるべきことはやった。

 あと、俺ができることと言ったら――




 神頼みぐらいしかないよな。




 アスリートなんかは勝運のご利益ある神社なんかに熱心に参拝するそうだが、あの気持ちが今はよくわかる。


 人事を尽くして天命を待つというやつだ。自分がやれることをとことんやったら、そこから先は運というか、運命で決まる。


 そして、「ゲーレジェ」の中にも、そんな勝運のご利益があるという神様がいた。




 幸運の女神マヒア様。




 たしか神殿で祈ると、運がいいと【幸運値】がちょっとだけ上昇することもあるんだった。


 ただ、「ゲーレジェ」をプレイしている時は、いちいち神殿には行かなかった。ゲーム内の神に祈っても、本当の意味では神頼みにはならないからだ。マヒア様を作ったのは開発スタッフだからな。それだったら実在の社寺に祈るほうが効き目がある。



 でも、「ゲーレジェ」の世界で生きてる今の俺なら行くべき価値はある。


「ポポロ、数日かけて移動する。支度をしておいてくれ」


 道場の帰り、俺は言った。


「まあ、私に支度するようなものはとくにないですが。あえて言えば、水浴びできる泉とかの場所でも地図で確認しておきます」



 そういや、フクロウも水浴びするよな……。


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