16 告白イベント発生
そのあと、しばらく俺たちは堅実にフィールドでエンカウントする魔物を倒す生活を行った。
ポポロが戦力になるのは明らかだが場数が少なすぎるのは、いざという時に危ない。もうちょっと基礎をつけてもらうためだ。
それと、レアイベントといっても、毎日のようにやってくるわけじゃない。
毎日、魔物の大群がやってきて町が踏みつぶされそう! なんてことが起きたら世界が荒廃してしまう。
ポポロは問題なく戦闘を繰り返して、俺とともにレベルが上がった。
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ポポロ レベル18 冒険者ランクC
HP 98/98
MP 0/0
攻撃 92
防御 73
敏捷 119
知力 27
精神 13
容姿 106
幸運値303
スキル
飛行・高速移動・突き刺し・突風・鑑定(植物)・連続攻撃
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アルク レベル22 冒険者ランクB
HP 122/122
MP 0/0
攻撃 132
防御 150
敏捷 141
知力 49
精神 19
容姿 39
幸運値999
スキル
超刺突・薙ぎ払い・這い上り斬り・みね殴り・一刀両断
仲間
クマ食いフクロウ(ポポロ)
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順調な成長だと思うし、この調子だとポポロがBランク冒険者に認定されるのも近そうだ。
で、そのポポロに関するイベントがポポロのレベルが17になった頃から急に増えた。
ある日の朝、何かが来るという直感がやってきた。。
虫の知らせというと、悪いことを察知する意味が主だと思うが、あれの悪いことと限定してないタイプだ。
最初に起きた時は何かわからなかったが3回目ぐらいで確信が持てた。
これはレアイベントが近づいてるぞという直感だ。
こんな特殊能力は聞いたことがないので、【幸運値】カンストの影響だろう。
で、何が起きるかはおおかた予想がつく。この予想のほうは直感ではなくて、たんなる経験を通じた想像だ。ただ、そんなに外れることはない。
その日、メイド姿のポポロと冒険者ギルドに向かっていると、青年が俺たちの目の前に出てきた。
「ポポロさん! これを受け取ってください! 返事はなくてもけっこうですから!」
ポポロは落ち着いた表情で手紙を受け取った。
別に反応が鈍いのではなくて、ポポロはだいたいいつも落ち着いているのだ。フクロウであることと関係すると思われる。
青年は顔を赤くして去っていった。
手紙を開くまでもない。愛の告白だ。
「本当に多いな。これで何度目だ」
「8度目ですね。返事はいらないそうなので助かります」
そう、ポポロに愛を伝えてくる奴が激増した。
理由はわかる。【容姿】の数字が100を超えたせいだ。
3桁の大台に乗るというのは、99までと全然意味が違う。開発者が100以上を基準にして発生するイベントを多く用意していた可能性が高い。
公式が言及したことはないが、攻略ウィキでは100以上の変化はほぼ間違いないことだと記述されている。
【容姿】の場合、ゲームのグラフィックで変化を出すのが難しいので、余計にイベントで表現しようとしたのだろう。
そのせいか、ポポロに愛を伝えようとする奴がやたらと出てきた。
「俺のほうはそんなものが来たことはないな。やっぱり数字が平凡だからか」
Bランク冒険者になった途端、モテるということもない。一応、微妙に上がってきてはいるが愛の告白をされるイベントが起きるほどじゃない。
と、やや派手で悪趣味な鎧のハゲ頭でひげ面の男が俺たちの前に出てきた。悪役の俳優みたいな顔つきだ。
また、ポポロへの愛の告白か。恋愛は顔だけじゃないにしても、釣り合いが取れないだろ……。
「Bランク冒険者のアルクさん! 俺と手合わせしてくださいっ!」
俺への挑戦だった!
「ま、まあ、ケガの起きない、練習用木刀ならいいけど……」
「ありがとうございます! スラーツの北の『スラーツ極限道場』でお待ちしています! いつでもけっこうですので!」
男はそのまま去っていった。
Bランク冒険者は達人扱いだ。勝負を挑まれること自体はないことじゃない。
ちなみにこれもレアイベントではある。Cランク冒険者までで勝負を挑まれる確率はかなり低い。
Bランク冒険者になれる奴は「ゲーレジェ」のゲーム内でもごく限られているから経験のない奴のほうが多い。
「アルクさん、告白、おめでとうございます」
「違う。これは絶対に違う」
そのまま道場に行って、ヒゲ面を簡単にいなした。
俺もAランク剣士のバンティスに稽古を受けた。相手より強い剣士である以上、練習ぐらいは付き合ってやるべきだと思う。
道場の帰りの道中、ポポロに尋ねた。
「なあ、もし、好みのタイプの奴が告白してきたら、ポポロは付き合う?」
なんでこんなことを聞いたかというと、俺に仕える立場だから恋愛はダメと自分を御しているのだったら申し訳ないと思ったからだ。
告白の回数は8度にのぼる。そろそろ好みのタイプの奴がいてもおかしくないだろう。
俺としては恋愛したいのを止める権利はないと思っている。
「いえ、好みのタイプと言われても、とくにないですが」
「別に俺にメイドとして仕えるとかは気にしなくていいからな」
「いえ、そもそも告白してくるの、皆さんフクロウじゃなくて人間ですし」
「種族の問題だった!」
たしかにそうだ。俺の前に何匹のカエルが求婚してきても、全部断るよな。
「それと……」
少しだけポポロが顔を横にそらした。
「アルクさんのそばにいるのは、けっこう居心地がいいですから」
「そ、そうか……。ありがとな……」
正直言って、ものすごくうれしかった。
ポポロもおそらく特異な存在でちょうどいい居場所のようなものがなかったのだと思うし、できることなら俺が居場所になってやれればと思う。




