15 盗賊の実力を確認
宿は2日目以降、ペット可の宿ではなくて、ペットなしの二人部屋にした。
ポポロも冒険者登録した以上、ペット扱いというわけにはいかない。二人部屋より1人と1羽のほうが安いので一種の詐欺行為の疑いがあるし。
そして、冒険者の生き方についてポポロに簡単に解説しつつ、冒険者ギルドで何か程よいクエストを探した。
知識も大事だが、実際にやってみて覚えるのも大切だ。
それに冒険者としてのポポロの実績も見ておきたい。ステータスからある程度のことはわかっても、経験の差は大きい。
で、冒険者ギルドに行ってみたら、こんなクエストがあった。
それは「緊急! 伯爵家の宝物を盗んだ盗賊の逮捕」というもの。
「これも突発的に起こるイベントだから、一種のレアイベントだな……」
「アルクさん、これがいいです」
ポポロもやる気だ。
「う~ん……。戦闘面での心配はあまりしてないんだけど」
「では、何も問題がないような気がするのですが」
「まず盗賊の居場所を見つけるのが大変なんだよな」
盗賊側はたいてい山中に身を隠すので発見に手間取る。
なお、ややこしいが、この場合の盗賊は職業名とは違ってガチの犯罪者だ。ゲーム中でも職業名の盗賊のほうをシーフに変えろとかいろいろ言われたけど、結局そのままだった。
「それならおそらく大丈夫です」
ポポロは任せろという表情になった。
◇◆◇◆◇
クエストを受けた俺たちは盗賊が逃げたという方向の山のほうに行った。
なお「ゲーレジェ」では、逃げた場所と全然違う場所を示されるということはなかった。現実には盗賊が裏をかくこともあるだろうけど、ゲームでそれをやられるとプレイヤーがストレスたまるだけのクソゲーになるからな。
なので、少なくとも、逃げた先のおおまかな場所は予想できる。
「山の中を地道に調べるしかないか」
「ここは私にお任せください」
と言うと、ポポロはフクロウの姿になった。
そして、空を飛んでいく。
「そうか! 空から探すのか!」
15分後、ポポロが戻ってきた。地上に出て、メイドの姿に戻る。
「発見しました。いかにも悪そうな連中が野営をしています。人の足だと30分と少しはかかりそうですが」
「上出来だ。よし、行こう」
犯人たちは山中の細い谷でテント生活をしていた。たしかに道から外れているし、低くなったところで見えづらい場所だ。
「ポポロ、戦い方を見せてくれるか。危なくなったらすぐに加勢する」
「わかりました」
ポポロは颯爽と敵のところまで斜面を駆け下りていく。
手に細身のナイフを持って。
前世のフィクションの影響かもしれないけど、メイド服で戦うのって意外とさまになる。
「なんだ? 敵か?」
「メイドだぞ。でも、ナイフ持ってるけど」
「どうして、メイドが攻めてくるんだよ!」
連中も気づいたようだが、戦闘態勢に入る前に一人がポポロのナイフを突きつけられた。
「強い殺意を感じました。殺す気の者には容赦はできません。助かりたい者は降伏してください」
「ふざけんな! 伯爵家の財宝盗んだ時点でこっちも命懸けなんだよ!」
連中も引く気はない。
たしかに言い訳が通用する罪でもないな。
ポポロの動きは素早い。
というか【敏捷】が100を超えてたな。「ゲーレジェ」で3桁の数字はその道の大物の証しだ。モブの奴がかなうわけがない。
「なんだよ、こいつ! 全然見えねえ!」
「落ち着け! 盗賊が女一人に――ぐえっ!」
敵の規模はそれなりのもので十人以上はいたはずだが、あっさりとポポロが制圧した。
左手にナイフを握りつつ、足を動かして蹴り上げたり、敵に足払いをかけたりもする。
はっきり言って俺が出る幕はなかった。
多くのステータスがCランク冒険者ぐらいといっても、特定ステータスが異常に高いと話は全然違ってくる。敵が覚える体感的な実力ははるかに上になるだろう。
「終わりました。もう抵抗する敵は残っていません」
「上出来だ。ポポロ、無茶苦茶強かったぞ」
これぐらいは当たり前と思っていたのか、ポポロはとくに喜ぶふうでもなく、犯人の持ち物を探していた。
「ありました。宝石の類が入っている箱があります」
「じゃあ、それだな。無事にクエスト達成だ」
◇◆◇◆◇
冒険者ギルドに戻った時点で、不明だったポポロの冒険者ランクが設定された。
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ポポロ レベル16 冒険者ランクC
HP 90/90
MP 0/0
攻撃 85
防御 67
敏捷 110
知力 26
精神 13
容姿 99
幸運値298
スキル
飛行・高速移動・突き刺し・突風・鑑定(植物)・連続攻撃
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「あら、Cランクになりましたね。レベルも上がったようです」
ポポロはひょうひょうとしているが、受付のお姉さんのほうは衝撃を受けていた。
「冒険者の登録をした直後からCランクになる人なんて見たことないですよ……。どんな生活をしてたんですか……。人間離れしてます……」
そりゃ、人間じゃないからな……。
人数はたったの2人だけど、相当強いパーティーかもしれない。
「あの、ものすごいことをされているんで、もっと喜んでもいいんじゃないでしょうか? ずいぶんクールですね」
「単純にどうすごいのかよくわかってないんです。冒険者ギルドがない生活が長かったので」
「おかしいなあ……。冒険者ギルドって田舎にも配置されてるはずなんですけどね……。なんでこんな人材が隠れてたんでしょうか」
フクロウの生活をしていたとは誰も思わないよな。
ただ、ポポロがクールというのはわかる。あまり感情を表に出さない。
だが、その日の夜、同じ部屋に入ったポポロはフクロウの姿に変わった。
「あの、頭撫でてもらえませんか? それと、あごのところもお願いします」
「まあ、それぐらいなら。人の姿の時より気楽だし」
ふわふわのフクロウの頭を撫でると、フクロウのポポロの顔がほころんだ。
「フクロウの時はけっこう感情表現が出るんだな。人間の時だとこんなに笑わないだろ」
「まだ、人の時の笑い方に慣れてないんです。ポポー」
明日から原則昼に1回更新にする予定です。なにとぞよろしくお願いいたします!




