第二章「記憶の番人(ガーディアン)」
《記憶》は、誰にとってもかけがえのないもの。
しかし、それを“管理”しようとする者たちがいる。
それが《アーカイブス》――
彼らは、悲しみや後悔を「無駄」と切り捨て、記憶を“最適化”しようとする存在。
だが、記憶には痛みがあるからこそ、人は前に進める。
アークたちは、それを知ることになる。
記憶汚染が発生したのは、深層領域。
そこは、過去に記憶を失った者たちが眠る“漂白領域”だった。
セラが眉をひそめる。
「ここは……“記憶の墓場”。忘れられた者の想念が溜まる場所よ」
アークは無言で歩を進める。
足元に散らばる破損データ。
その中には、“名前を失った子どもたち”の記憶が仄かに残っていた。
その奥、電子の霧が立ち込める先に、ひとりの存在が待っていた。
「やっと来たね、《コード:アーク》」
その声は静かで、深く、どこか哀しみに満ちていた。
姿を現したのは――白銀の仮面をつけた青年、アルマ・ヴァンレイグ。
かつて、仮想領域の構築メンバーだった彼は、今や敵組織の幹部、“記憶の番人”を名乗っていた。
「君は、なぜ戦う? 記憶を守ることに、何の意味がある?」
アークは答える。
「……意味なんて、ないかもしれない。
でも、誰かの涙や笑顔が“意味があった”と思えるなら……それでいい」
アルマは目を伏せる。
そして告げた。
「君は、“記憶の裁定者”だった。
かつてこの世界の“鍵”となる存在だったことを、君はもう……忘れている」
その瞬間、空間が割れるように歪む。
《記憶武装 -メモリーフレア-》が両者の間に発動する。
セラが叫ぶ。
「アーク、気をつけて! アルマは“過去の記憶”そのものを武器にする!」
アルマが使うのは、“仮想記憶”を具現化する武装。
アークの失った過去――“かつての仲間が倒れていく記憶”が敵として出現する。
「……こんなもの、ただの幻影だ!」
アークが剣を振るうたび、心が軋む。
でも、セラの言葉が支えになる。
「記憶は、痛みだけじゃない。そこに誰かの“想い”がある限り、前に進める!」
最後の一撃。
アークの“現在の記憶”と“過去の自分”が共鳴し、《覚醒コード》が発動する。
白銀の刃が、過去の幻影を断ち切った。
アルマは静かに、倒れ込む。
「君の信じた“記憶”が……正しかったのかもしれないな……」
だがその背後で、通信が走る。
【コードX-EVE 起動準備完了】
【最終記憶最適化プログラム、カウント開始】
セラが唇を震わせた。
「まさか……アルマの敗北は、罠だった……!?」
アルマとの対峙を通じて、アークはかつての自分の立場や、《記憶の真価》に一歩踏み込んでいきました。
“誰かを守る”という感情は、過去を思い出す力にもなります。
しかし《アーカイブス》の計画は、すでに最終段階へ。
記憶最適化プログラム《コードX-EVE》が起動し始めた今、残された時間は限られています。
次章ではリノアの記憶が深く関わる展開へと進みます――