第七話【魔窟】
壱
霧深い山の中を、香流羅は一目散に歩いていた。周囲は邪気に満ち溢れている。
山全体には、異常な規模の結界。一体、誰が張ったのかは解らない。
規模からして、個人の張った物では無い。
大掛かりな結界装置と、大規模な人員を用いた結界だ。
結界を破るのに、三日も掛かった。破ると言っても、小さな穴を空けた程度。其れでも、人間一人が通る入口としては、問題は無い。尤も一日もしない内に、穴は塞がってしまうだろう。山中に人の気配は全く無い。代わりに死屍累々(ししるいるい)と築き上げられた獣達の屍が、無数に転がっていた。普通の山とは、明らかに一線を画している。
山の至る処に、魔徒の気配を感じた。一つ一つの気配は弱いが、其の数は百を越えているのは明白で在る。どうやら山全体が、魔徒の巣と化している様だ。
古の時代から、人々に魔窟として恐れられた此の山の何処かに、香流羅の目的の物が在る筈だ。
――人間よ、我にお前を喰わせてくれ。
猪に取り憑いた魔徒が、囁き掛けて来る。鼻の奥まで膠着きそうな腐臭が、胸糞の悪い気分にさせる。香流羅は嘆息しながら、周囲の殺気を窺った。
――我にも、喰らわせろ。
背後からも、魔徒の気配がする。
――否や、我に喰わせてくれ。
至る処から、魔徒が狙って来ている。揃いも揃って、胸糞の悪い匂いを漂わせている。そう、此れは死の匂いだ。
「香流羅ぁ……帰った方が、良いんじゃない?」
鷹の姿をした青丸が、不安げな声を投げ掛ける。
「情けない事を、言うな。赤丸、全部で何匹ぐらいだ?」
狼の姿をした赤丸が、鼻を効かせて魔徒の気配を探った。
「全部で八匹だ。前方に三匹。後方にも、三匹。上に一匹。最後の一匹は……」
隆起する土の気配を、鋭敏に感じ取って一同は飛んだ。
瞬時に青丸を、腕に宿らせる。青い光が羽根と成って、両の腕を纏う。小太刀で鳶に憑いた魔徒を斬り滅ぼして、光の羽根を前後の魔徒に送る。起爆札も織り交ぜた攻撃を受けて、散々(ちりぢり)に飛散し、消滅する魔徒達。残った土竜に憑いた魔徒を、赤丸が噛み殺していた。
「こいつ等は、只の雑魚だ。さっさと、目的の物を見付けるぞ」
「解ってるよぉ、香流羅ぁ~!」
「なら、さっさと行くぞ!」
二匹の霊獣が、香流羅に附き従う。赤丸も、青丸も、神に与えられた神の眷属だった。
彼等を使役するには、氣を操る術を身に付けねば成らない。才覚の在る香流羅には、二匹の霊獣を使役する程の操氣術が在る。其れでも御法院の歴史で見れば、香流羅は未々(まだまだ)、未熟で在った。故に香流羅は力を求めている。目的を遂げるには、絶大なる力が必要だ。だからこそ、禁術に手を出そうとしている。
神に与えられた【天涯の書】には、龍脈の流れが記されていた。龍脈とは、大きな氣の流れで在り、氣は川の様に流れている。氣が集まる場所には、土地神が宿る。香流羅が契約している神も其の一つだ。此の書には、龍脈の歪みが生まれる場所と、其の周期が記されている。
そして【人外の書】には、氣を操る術が記されている。即ち、龍脈の氣を取り込み、己が力とする術が記されているのだ。
大きな氣を操る為には、魔徒の骨で造られた数珠が必要で在った。禁忌の秘術だが、習得すれば格段に強く成れる。自分は強く成らなければ為らない。
此の名も解らぬ山の何処かに、目的の物が祀られている社が在る。其れを見付ける迄は、山を降りる気は無かった。
静かな憎悪を胸に秘めながら、香流羅は屍の山を歩いていた。
弐
「何の用だ?」
一人、短剣を振るう羅刹を見ながら、刹那は申し訳なさそうに呟いた。
「家に来てみない……?」
「戦騎騎士で在る俺が、《禍人の血族》の家にか?」
刹那は良く解っていなかったが、どうやら其れが不味い事なのは解っている様だった。
「安心して。家には今、お姉ちゃんしかいないから……。其れに……お姉ちゃんも、羅刹に逢ってみたいって言ってるの」
「何も知らない様だから、教えてやる。《禍人の血族》とは、戦騎騎士に見捨てられた人間が、魔徒に対抗する為に、神と契約した一族の事だ。騎士達と《禍人の血族》の対立は、何千年も前から続いている。四百年前に起きた魔徒達との大きな闘いの際に、其の溝はより大きな物に成った」
一息に捲し立てる羅刹。
「四百年前に一体、何が起きたの……?」
「騎士達は《禍人の血族》達を、捨て石に使ったのよ。其れが伝承に依って、大きく歪んで伝わっていったわ。《禍人の血族》に取って、戦騎騎士とは、魔徒以上に憎い対象と成っているの」
タリムが諭す様に、付け加える。
「だって……羅刹は、私を護ってくれたでしょ?」
「あぁ。だが……他の《禍人の血族》は、俺なんかには護られたくない筈だ。現にお前の兄貴は、俺を憎んでいた」
「お兄ちゃんに、会ったの?」
「二度、刃を交えた」
香流羅の眼は、憎しみに染まっていた。憎悪の炎は、決して鎮火する事は無い。いつまでも、何年でも、己が躯を焼き焦がし続ける。其の炎が大きければ大きい程に、紅蓮の憎悪は殺意と成って放たれる。
其の感情は、戦騎騎士で在る自分に確実に向けられていた。香流羅の瞳に宿る憎しみは、自分の眼にも宿っている。自分と香流羅は、似た者同士なのかも知れない。
故に互いに解り合う等、不可能に等しかった。そう、解り合える筈が無い。
「ご免なさい。……けど、お兄ちゃんは私が必ず説得して……」
「――無理だ!」
刹那の言葉を遮って、羅刹は叫んでいた。
「二人共、少し落ち着きなさい!」
二人を諫めるタリム。
「兎に角。一度、刹那ちゃんのお姉さんに逢ってみなさい」
「本気で言ってるのか?」
意外そうに、羅刹が問う。
「其れと……私は【裁きの門】に喚ばれているから、着いて行けないからね?」
「タリム、お前……面倒事を俺に押し付けて、逃げるつもりか?」
「あら、其れとも……貴方も【裁きの門】に着いて来るのかしら?」
「否、在の女は嫌いだ」
「なら、決まりね。行ってらっしゃい!」
愉しそうに言って、タリムの気配は消えた。
極界に在る【裁きの門】に向かったのだろう。此れで暫くは、戦騎を喚装する事が出来ない。
「羅刹……?」
窺う様に、刹那が此方を見る。
「仕方がない。今回だけだからな」
「うん!」
表情を明るくして、刹那は頷いた。
参
「此処か……」
五十匹以上の魔獣を屠った頃、漸く目的の社が見えて来た。次第に霞む視界は、霧の所為だけでは無い。体力の限界が近付いていたが、休む訳には往かない。
「貴様、此処に何の用だ?」
今度は人の姿をした魔徒が、行く手を塞いでいた。先程までの雑魚とは様子が違う。
身形からして《禍人の血族》だと解った。恐らく自分と同じ様に、数珠を求めて此処に来たのだろう。そして魔徒に討たれて、魔徒に成り下がった。恐らく、そんな処だ。
鬼神化こそはしていないが、自分と同じく《禍人の血族》ならば、術を使う筈だ。
――もう、使っているよ。
何処からか、声が聴こえた。若い女の声だ。
光の輪が、身体を拘束している。身動きが取れずにいると、目の前の男が槍を構えていた。逃げる暇は無さそうだった。真面に受ければ、命は無い。
「赤丸!」
香流羅の声に呼応して、炎の鎧が身を包んだ。
放たれた槍が、先端から炎の熱で溶けていく。此方も術を使って、拘束を解いた。術の様式からして、御法院の物で在る事が解った。同門と謂う訳だ。死者とは謂え、身内に手を掛ける事に為る。
「香流羅、後ろ!」
敵が二人以上、居るのは解っていた。己が祖先が相手だとしても、邪魔立てする為らば斬るだけだ。
背後から閃光に包まれた弓が飛来していたが、飛んで躱した。空中で、青丸の羽根を纏う。此の形態で居れば、短時間だったが飛行が可能に成る。弐の矢、参の矢と追撃をしてくる女。躱しながら、女を目掛けて滑空する。動きが単調だ。
背後で雷鳴が、鳴り響いていた。どうやら男は、雷を操る様だ。前後から閃光が襲い掛かっていたが、燕の様に素早い動きで其れ等を躱す。二人の動きには、共通して隙が在る。溜めが長い為に、連続して術を放つ事が出来ないのだろう。未熟な故に、補い合う様にして二人で連携しているのだ。だが幾ら連携していようが、所詮は未熟なコンビネーション。崩す事は容易かった。
「貰った!」
光の羽根と共に、起爆札を女に飛ばした。
爆発と共に、女の気配は容易く消滅した。
香流羅は空中で旋回して、男に目掛けて飛来した。
雷を放つ男の顔は、修羅の形相で在った。余程、此の世に憎しみを遺していたのだろう。尤も憎しみを持たない《禍人の血族》は、かなり稀な存在だ。自分の識り得る中では、一人しか居ない。
紙一重で雷を避けて、男の胸に小太刀を突き刺していた。
此方にも、譲れぬ事情が在る。こんな処で、躓いている時間は一寸も無い。
「大人しく、消えるが良い!」
小太刀を斬り上げながら、香流羅は叫んでいた。
体力的にも精神的にも、随分と疲弊していた。だが、休む訳には往かない。香流羅は懐から、御法院家に伝わる丸薬と栄養ドリンクを取り出した。
近年の栄養ドリンクには、砂糖やカフェイン等が大量に含まれている。丸薬と合わせて飲めば、かなり体は楽に成る。
こんな処で、立ち止まってなど要られない。
自分は必ず戦騎騎士を斬る。
一族を護り、怨みを晴らすのだ。
亡き父と母の為にも、愛する者達の為にもだ。
肆
「白鷹戦騎タリムよ、良くぞ参られた」
【裁きの門】の番人で在る【嘆きのエリザ】が厳かに言った。エリザは天界の神々の眷属で在るが、千年前の闘いで粗相を起こして、極界に追いやられた。以来、此処で番人としての役目を与えられている。
「羅刹は、漸く騎士としての使命が芽生えた様ですね」
「はい。今は在の子に取って、大切な時期。厳正なる御裁きを願い申し上げます」
羅刹の処遇は、エリザの気分次第で幾らでも変える事が出来る。エリザの機嫌を損ねれば、即刻にでも地獄へ逆戻りと謂う事も起こり得る訳で在る。
零落れたとは言え、エリザは神々の眷属で在る。其れだけの権限が、彼女には与えられていた。
「今日は羅刹の事で、貴方を招いた訳では在りません」
「其れでは、どう言った御用向きで御座いましょうか?」
エリザの招集は、何時だって悪い予感しかしない。大抵はエリザの尻拭いが多い。そして其の殆どが、碌でも無い事ばかりだ。
きっと今回も、面倒事を仰せ附けられるに違いない。
身構えるタリム。
「邪悪なる魔獣・タタラが、現世に蘇ってしまいました」
「タタラが……そんな、馬鹿な。奴の復活は、未だ千年以上も先の話では、在りませんか?」
タタラとは、古の時代より多くの人々を苦しめ、数多の戦騎騎士を屠って来た魔徒の名だ。
強大な力を有した魔徒。四百年前に多くの騎士や戦騎の犠牲と引き換えに、漸く封印したのだ。其の闘いにタリムも又、参加していた。そして此の時に、多くの《禍人の血族》が犠牲に成った。
タタラの強大で巨悪な力は、其の躯に嫌と言う程に染みている。
「万が一、タタラと相対したら……倒せとは、言いません。人々を安全な場所へと避難させなさい」
本当にタタラと相対したの為らば、逃げる事すら至極困難な事で在った。
其れに羅刹の性格を考えれば、逃げる事は絶対にしない。
面倒事が又、一つ増えてしまった。
「我々は、貴方を失いたくは在りません。良いですね。呉々(くれぐれ)も慎重な行動を御願い致しますよ」
要するにエリザは、自分の保身を考えているのだ。
先の大戦で、多くの戦騎を失った。現存する戦騎の数は、千年前の十分の一しかない。魔徒達との闘いに勝ちこそはしたが、エリザの立案した作戦の所為で、多くの戦騎を失ったのも事実。エリザの立場からしたら、此れ以上の失態を晒す訳には往かなかった。何せエリザには、後が無いのだ。
「何れ天界より、タタラ討伐隊が編成されるでしょう。貴方は其れまで、何としても生き延びなさい。話は以上です」
エリザは直ぐにではなくて、何れと言った。詰まり未だタタラ復活の報告を、天界にしていないと言う事だ。
そうでなければ、天界で非常事態が起きているかだ。どちらにしても、タリムにどうこう出来る話ではなかった。
「畏まりました……」
タリムには、渋々ながらに受け入れる他なかった。
伍
「さて、数珠は此の奥か……」
社に入った途端、魔徒以外の気配を感じていた。
気配は二つ在った。其のどちらも、並の手練れではない。今の自分では、手に負える様な相手では無いのは瞬時に理解った。
其の内の一つが、此方に接近していた。緊張が全身を駆け廻る。下手をすれば、瞬きの遑も無く殺され兼ねない。香流羅は懸命に、生き残る術を探った。全身を伝う冷や汗と、焦りばかりが纏わり附く。
「珍しい事も在るな。此処に、人間の来客が在るのか?」
何時の間にか、もう一つの気配が背後に在った。
振り返り身構える。
「止めておけ。私達に、闘う意志は無い。其れに、お前では勝てん」
魔徒では無い。人でも無い。此の気配は、神に近しかった。邪悪な氣は、全く感じられない。
「お前等は一体、何者だ?」
警戒を強めながら、攻撃の機会を窺う。不用意に掛かれば、此方が死ぬ事に成る。
其れだけの手練れが、二人も居る。闘うのは得策では無かった。だが、退く訳には往かない。
「按ずるな。私達は、敵ではない。見ての通り私は、半神半人の半端者。其処に身を潜ませているのは、私の従者だ。菴、姿を現せ!」
女に言われる儘に、狐面を付けた小柄な女が姿を現した。全く隙が窺えなかった。
「私の名は舞織神楽。一応、今の世に馴染む為に、女子高生と謂う奴をやっている。此処は、一時的に寝床として使っているだけだ」
邪気や悪意は、全く感じられなかった。
女の言葉を信じる訳ではなかったが、嘘ではない様だ。其の人懐っこい笑顔に、自然と心が緩みそうに為る。
「俺は此の奥に在る物に、用が在る。通らせて貰うぞ」
「別に止めしないが、止めておいた方が身の為だ。此の奥には、魔徒がうようよ居る」
気配から、十や二十ではない事は解っていた。此処に来るまでに、随分と体力が消耗している。
だが、退く気は無い。
「忠告は、無用だ。何が在ろうが、俺は目的を果たさねば為らん」
「なら、菴を連れて行け。きっと、役に立つぞ」
信用は出来ないが、此の先の気配から、一人では危険なのは解っていた。
「面を取れ。素顔を見せん奴は、信用ならん!」
「此れで、満足か?」
狐面を取ると幼い顔が、顕わになった。
妹の刹那よりも、幼い。仏頂面で在ったが、可愛らしい顔をしている。
僅かだったが、香流羅の警戒が緩んだ。正確には、油断しているのだ。其れが、命取りに成る。
「直ぐに警戒を解いては、いかんな……」
僅かに生まれた隙を衝いて、菴は小太刀を抜いていた。
太刀筋が、見えなかった。気付いた時には、喉元に切尖を突き付けられていた。菴が其の気で振り抜いていれば、首を斬り落とされていただろう。
――成る程な。
自分の弱点は、油断をする所に在る様だ。
神と同じ言葉と刃を向けられて、今の自分では二人に勝てない事を悟る。
「菴、刀を納めよ」
女に従う菴。主従関係は明白で在った。
「そう言えば、御主の名を聞いて無かったな?」
微笑を浮かべる女。
美しい顔をしていた。此方を見据える瞳には、穢れの一切が感じられない。
「御法院香流羅だ」
「では、香流羅よ。無事に帰って来る様、呪いを掛けてやろう」
女が手を翳すと、香流羅の全身を温かい光が包んだ。今の所、二人は自分に味方してくれる様で在った。
菴を連れて、香流羅は社の奥深くへと消えて行った。
陸
「貴方が、羅刹ね。刹那ったら中々、良い男を連れて来るじゃない」
品定めをする様に、砂羅は羅刹をまじまじと見た。
《禍人の血族》特有の不思議な力を、砂羅から感じた。恐らく砂羅は香流羅よりも、遥かに強い。
タリムが居ない今、闘いに成れば勝てる気がしなかった。
「あら、嫌だわ。取って喰ったりはしないから、そんなに身構えないで」
愉しそうに、笑みを浮かべる砂羅。
敵意は全く感じられない。
「貴方には、何の怨みもないわ。其れに私は刹那を護れれば、其れで良いのよ。だから、貴方が刹那を護ってくれて、感謝してるのよ」
優しい眼差しを向ける砂羅。
「ほら。お姉ちゃんだって、こう言ってるんだから。戦騎騎士と《禍人の血族》だって、きっと解り合える日が来るわよ!」
「其れは、無理だ」
「其れは、無理よ」
羅刹と砂羅の言葉が、重なる。
「私は彼の敵には成らないけど、香流羅は違うわ」
「どうして、そんな事を言うの?」
「あの子は、憎しみに囚われているわ」
「俺も、そう思う。奴と刃を交えた時に、奴から計り知れない憎しみを感じた」
憎しみに妥協は生まれない。
狂気に染まった炎の様に、相手だけではなく己までもを焼き尽くす。
其れに香流羅の過去には、何か在る様に思えて為らない。其れが何なのかは解らないが、憎しみの根源は其処に在る気がした。
そして恐らく、砂羅は何かを知っている。微笑を浮かべてはいるが、砂羅の瞳の奥にも、憎悪の炎は宿っていた。戦騎騎士と《禍人の血族》は、決して相容れないのだ。
「……さ、こんな所で立ち話も何だから、上がって。御節と御雑煮ぐらいしかないけど、心から持て成すわ!」
砂羅の笑顔は、刹那と同様に屈託がない。其れに、温かかった。
羅刹の警戒心は、何時の間にか解れていた。
漆
魔徒を討ちながら、香流羅は菴を見ていた。
素早い太刀筋に眼を凝らすが、捉え切れない。此れ程迄の剣捌きを一体、どうやって会得したのかは解らない。現時点で相対すれば、自分では太刀打ち出来ないだろう。尤も其れは、現時点でだ。必ず力を得る。そうしなければ此の先、何も斬れはしない。
「余所見している暇は無いぞ、香流羅よ!」
咎める様に、赤丸が促す。魔徒の数は、百を優に超えている。況してや此処に至る迄に、かなり疲弊している。全てを倒すのに、自分一人では無理で在った。菴は大小の太刀を見事に使い分けて、魔徒を薙ぎ払っている。疲れる処か魔徒を斬る度に、強く成っていた。
良く見ると斬られた魔徒は、消滅せずに菴の持つ刀に吸い込まれている。
菴は魔徒を、喰らっているのだ。
次第に菴から、邪悪な氣が発せられて往く。魔徒と同じく邪悪な氣を、菴からは感じられた。菴の正体に、香流羅は気付き掛けていた。
だが今は兎に角、魔徒を斬るのが先決だった。
体力の消耗が著しかったが、前に進む以外の道はない。立ち止まる事は、死を意味していた。
一心不乱に、香流羅は剣を振るい続けた。
気が附いた時には、魔徒の気配は一つしか感じられなかった。其の気配は香流羅が相対した中でも群を抜いて強大で、微塵の隙も見当たらない。圧倒的な力量の差を感じていたが、逃げる事すらも叶わぬ現状。尤も端から、逃げる心算は毛頭も無い。
残る魔徒は、菴一人だけで在った。
互いに対峙して、改めて庵の強さを実感した。全く隙が無い。どう、打ち込んでも、返す弐の太刀で斬られてしまう。故に、香流羅は動けないで居た。僅かな隙で在っても、菴は見逃さない。其れは既に、学習済みだった。
隙を見せれば、斬られてしまう。獰猛な獣は対峙しただけで、相手を畏縮させる。其れだけの威圧感が、菴には在った。焦れば剣だけでは無く、判断力までもが鈍る。恐怖を抑え、呼吸を整える。
此の儘では、殺されてしまう。
焦りが、汗と共に伝う。
退けば、斬られる。前に出ても斬られる。
だが活路は、前にしか切り拓けなかった。
意を決して、香流羅は動いていた。
捌
温かい雰囲気が、部屋を満たしていた。
柔らかな砂羅の微笑みが、心を和らげる。羅刹の中で、砂羅に対する警戒心は完全に消えていた。
心が緩むと言う事は、身体が緩むのと同じ事だ。穏やかな笑みを浮かべながら、砂羅は拳を繰り出して来た。反射的に、羅刹は動いていた。
「あら……中々、良い反射神経をしてるのね?」
砂羅の拳を、左腕で捌いていた。
「何の真似だ?」
「安心して、部屋には結界を張っておいたから」
何時の間にか、刹那の姿が消えていた。
「貴方の力を少し、見せてくれない?」
微笑を浮かべて、砂羅は姿を消した。
《禍人の血族》特有の不思議な術で在った。気配はするが、其の姿は何処にもなかった。
「勘違いしないでね。さっきも言った様に、私は貴方の敵には成らない。此れは、そう……ほんの戯れよ!」
背後から迫る気配を察知して、羅刹は動いていた。短剣の鞘でクナイの一撃を受け、身体を反転させて短剣で砂羅を斬り払う。だが手応えは、全くなかった。又、術を使って姿を眩ませている。
「凄いわね。香流羅じゃあ、貴方に勝てない訳ね。けど、気を付けて。あの子は今、禁忌の書に手を掛けている」
「禁忌の書だと……。どう謂う事だ?」
今度は上から、小太刀を振り降ろして来た。短剣で受けて、鞘で撃ち衝ける。其れをクナイで往なして、砂羅は前蹴りを放つ。左足で払い退けて、羅刹は右の廻し蹴りを繰り出していた。砂羅は更に前に出て、近接距離から頭部への廻し蹴りを放った。其れを真面に喰らって、羅刹は倒れていた。体術で押し負けるのは、初めての事で在った。
追撃はして来ない。
まさか今の距離から、廻し蹴りが放てるとは思わなかった。砂羅の身体は相当、柔軟に出来ている。
本気ならば、今ので追撃を受けて致命傷を受けていただろう。
「どうやら貴方は、戦騎に頼り過ぎている様ね。戦騎無しで、何処まで闘えるかしら?」
此方が構えるのを待ってから、砂羅は回転蹴りを放って来た。其れを左腕で受ける。
「其れじゃ……駄目!」
足を左腕に絡めて、砂羅は体を捻った。
砂羅の体重に引っ張られて、羅刹は倒されていた。
首に絡み付く太腿が、頸動脈を絞め付ける。
「貴方は確かに強いわ。けれども、其れは戦騎が在ってこそよ……。貴方は今、女の私に体術で追い詰められている」
頸を絞める力が、更に強くなって往く。
此の儘だと不味い。
墜ちてしまう。
「香流羅は、此れから強く成るわ。今の貴方よりも……私よりもね」
短剣を砂羅に向けて振るうが、術で逃げられる。
「貴方は、強く成らなければ為らない。でなければ……此れから先、何も護れないわ」
砂羅は異常な迄に強かった。強さの底が、全く見えない。
「次の一撃は、本気で行くから覚悟してね」
此の時、初めて砂羅は殺気を放っていた。其の気配は研ぎ澄まされた刃に酷似している。冷たい波紋が、触れる物を鮮やかに両断する様は美しい。そんな死を羅刹に抱かせる。
鋭い刃物で背後から、心臓を刺し貫かれた様な殺気を感じた。其の瞬間、羅刹の背中を砂羅の手が触れる。
――全く、動けなかった。
「此れが実戦なら、貴方は死んでいたわ」
砂羅の手から、温かい力が伝わって来る。不思議な其の力は、己の内側から全身を駆け巡っている。胸を見ると蒼白い光の刻印が、刻まれていた。
「其の術が毒に成るか、貴方の力に成るかは、貴方次第よ」
見た事も無い刻印で在った。
だが呪いの類いでは無い事は、確かで在る。気付けば辺りは一面、闇に包まれていた。
玖
一気に間合いを詰めて、香流羅は上段斬りを放っていた。
其れを小太刀で受けるのは、予想済みだ。だから予め、己の小太刀に札を貼らせて貰った。菴の動きが一瞬、止まっていた。ほんの僅かだが、相手の力を札の力が奪っていたのだ。
小太刀を捨て、菴の懐に潜り込む。起爆札を握り込んだ左拳を、叩き込んでいた。二人を爆煙が包み込む。構わずに体を捻って、懐刀を菴の胸に突き立てる。
刃先は心臓を捉えていたが、踏み込みが浅いのか菴は倒れない。
迫り来る弐の太刀を、捌く余裕は無かった。
斬撃を受ける寸前で、香流羅の全身が光を包んだ。其の刹那、菴の動きが止まった。
「貴様、何をしている?」
香流羅を睨み附けて、菴が言い放つ。魔徒の気配は、感じられなかった。どうやら、正気に戻った様だ。神楽が掛けた呪いとやらの効果のお陰だった。
「何を惚けている。さっさと、行くぞ!」
刀を納めて、菴は歩き出した。
どうやら菴は、魔徒でも在り《禍人の血族》でも在る様だ。其の力は、神楽の力に依って抑え込まれている。其れ故に気配を感じられないのだ。
魔徒喰らいの魔徒。《禍人の血族》で在りながら、魔徒でも在る菴は、かなり異質な存在だった。
其れに神楽だ。自分の事を、半神半人だと謂っていた。二人の目的は解らないが、此の二人組が敵に廻れば相当な脅威と成る。だが幸いな事に、今は自分に味方してくれている。
「どうやら此の箱の中に、お前の欲しい物が在る様だな」
小さな箱を、乱暴に投げて寄越す菴。
箱を開けると中には、数珠が入っていた。禍々(まがまが)しい力が籠められた其の数珠には、無数の邪気を感じた。数珠を手に取った途端、魔徒の思念が急激に雪崩れ込んで来た。
無数の声。
邪悪な声。
怨みの声。
嘆きの声。
憂いの声。
美しい声。
醜悪な声。
羨望の声。
魔徒達の声だ。
其の声を抑え込むには、相当な精神力が必要だった。
――成る程。こいつは、骨が折れる。
香流羅は数珠を、右腕に嵌めた。
目を閉じて、精神を研ぎ澄ます。心の奥底から聴こえる声に耳を傾ける。怨みの籠った声が、周囲の声を掻き消して往く。其の声の主が、内なる世界へと香流羅を引き入れる。其れを感覚的に、香流羅は理解した。己の精神力が魔徒に負ければ、身体を乗っ取られてしまうだろう。恐らく強大な力を有している。肉体が滅びているとは謂え、相手の精神世界に惹き込まれるのだ。
並大抵の覚悟では、切り抜けれない。
目を開いた時には、闇の中に居た。辺りには、無数の邪気が在った。
数多の魔徒の怨念に誘われて、魔徒の心の中に入り込んだ。其の奥底に沈み込む様にして、香流羅は其の者に吸い寄せられていった。強大で凶悪な気配。禍々しい其の風貌。打ち衝ける重圧。並々為らぬ邪気が漂う濃い深淵。深遠の底の底。其処此処で悲鳴が、音楽の様に哭き喚く。気が狂いそうで在った。香流羅は見えぬ眼で、屍の山に鎮座する魔徒を睨み附けた。
「お前の望みは、何だ。我は魔徒の王族の末裔・ガイア。何故、我を呼び覚ます」
どうやら、とんでもない大物に出会してしまった様だ。恐怖よりも先に、悦びが在った。狂気にも似た狂喜。既に己が精神は、魔徒に侵され始めている。気を緩めれば、気付かぬ内に、憑かれてしまう。喰われれば、永遠に魔徒と成るか、憎き戦騎騎士に斬り滅ぼされるか――其れだけは、御免だった。騎士に斬られるぐらいなら、闇に墜ちた方が未だマシだ。
既に思考が、魔徒に依って爛れている。急がなければ、運が良くて精神異常者だ。気が触れる前に、魔徒を屈服しなければ為らない。
其れにしても、自分は運が良い。
此れ程迄に強大な力を、手に入れれるのだからな。
「我が名は、御法院香流羅。貴公の力を貰い受けに来た!」
「成らば、我を受け入れるが良い!」
「断る。俺は魔徒には、屈しない!」
神楽の呪いは、未だ香流羅の中に存在していた。
魔徒を抑え込む光だ。半神とは言え、神の力。例え魔徒の王族の末裔で在っても、効果は在る筈だ。
手を翳すと眩いばかりの光が、深淵なる闇を照らしていた。
其の姿を顕にしたガイアは、想像を絶する禍々しさだった。蝋人形の様に、生気の無い老人。骨と皮だけに成った其の姿は、悪魔の様に憎悪に染まっている。
ガイアは強大な力を有してはいたが、所詮は屍に過ぎない。神の加護で更に弱体化されている。今の自分でも、充分に抑え込む事は可能な筈だ。
ガイアの胸を、小太刀で刺し貫いた。
「愚かで賢しらな人間よ。何れ……我が乗っ取ってみせよう……」
「負け惜しみにしか、聞こえないな」
完全にガイアを抑え込んで、香流羅は呟いた。
何時の間にか、元居た場所に戻っている。
全身を流れる力に、香流羅は驚いていた。此れ迄に無い程の大きな力を、自分の中から感じる。其れだけではない。周囲の氣の流れが、手に取る様に解るのだ。今の自分にならば、【天涯の書】と【人外の書】の極意が理解、出来た。水面の水を掬い上げる様に、龍脈の氣に触れる。其れを、そっ……と、掬い上げる様にして術を放った。
炎の塊が、社の壁を粉砕しながら爆炎を上げる。火柱が周囲の氣を取り込んで、弾けて往く。爆風から身を護りながら、慥かな手応えを感じていた。
自分は今、新たな境地に到達したのだ。
香流羅は高笑いを上げていた。
拾
漆黒の闇に捉えられて、羅刹は身動きが取れなく成っていた。
前に進もうにも、自分が何処を向いているのかさえも解らない。一体、此処は何処なのだろう。闇と静寂に包まれている。何の気配も感じられなかった。
――此処は、貴方の心の中の闇。
何処からか、砂羅の声が聴こえて来た。
――貴方は己の闇に捉われている。
闇の奥から並々ならぬ憎悪と共に、殺気が伝わって来た。羅刹は殺気の主を知っている。
――さぁ、剣を取りなさい。
殺気の主は、自分自身だ。目の前には、闇に染まり切った自分が居た。憎悪に駈られ、殺意を振るう事しか知らない鬼子。
悪意を携え、刀を振るう事しか出来ない愚かな男だ。闇を裂いて、悪意の刃が迫って来た。
短剣を引き抜いて、受け止める。重く鈍い剣圧に、羅刹は圧されていた。
――己の闇を斬りなさい。そうすれば、貴方は更に強く成れる。
相手が踏み込む気配を感じて、羅刹は動いていた。左手に持つ鞘を盾に、迫り来る裏拳を受ける。短剣を突き出して、相手の胸部を狙う。相手は身を捻って、刀の鞘で軌道を逸らしながら前進して来ていた。其の勢いを利用して、下から斬り上げて来る太刀を辛うじて躱す。僅かに振れる重心。追い打ちを掛ける様に、相手は蹴り上げて来た。
後ろに倒れる様にして、寸での処で躱すが追撃は止まない。体重の乗った斬り降ろしが、羅刹を完璧なタイミングで捉える。
雪崩れ込む憎悪。全てが憎かった。両親や異端の眼を向ける村人達も、己を裏切った友も、何もかもが憎かった。憎しみの中で、死んだ時の事を思い出していた。冷たい雪の降る夜。村は炎に包まれていた。慶長九年の師走。薄れ逝く意識の中で、羅刹と出狗を見下ろしながら嗤う外道丸の姿が、最後に見た光景で在る。
全てを恨みながら、江戸の世を生きた。
全てを妬みながら、死んだ。
騎士として蘇ってからも、其れは変わらなかった。憎悪に心を委ねて、魔徒を一向――只、一向に斬り続けた。晴れる事の無い憎しみ。決して報われる事のない怨恨。出狗や外道丸が、憎い。最早、憎しみの対象は、此の世に居ない。だからこそ、憎しみが晴れる事は無い。魔徒を斬れば斬る程に、憎しみの炎は大きく成っていた。
そんな自分が、何時の間にか変わり始めていた。他人の事が、どうでも良かった筈なのに、護りたいと思う様に成っている。
刹那に出逢って、憎しみの感情が次第に和らいでいた。抱いた事の無い想いを知った。感じた事の無い痛みに苛まれた。人の痛み。心の温かさ。闘う事以外で人と交わる事が、こんなにも居心地が良い事が不思議で在る。
初めて誰かを護りたいと思った。
初めて人間を護りたいと想った。
憎しみでは無く、護る為の剣を知った。
次第に胸の刻印が、光を帯び始める。
体を大きく捻って、羅刹は回転しながら短剣で斬撃を捌いた。
人間を護りたい。
刹那を護りたい。
其の想いが強く成る度に、胸の刻印の光が強く成る。
騎士として、人として、愛する者達を護る。
眩い光が、闇を照らし出す。胸の刻印が弾け翔び、羅刹の左腕に纏わり附いた。
其れは、籠手で在る。防ぎ捌く、護る為の武具だ。戦騎以外の新たなる力だ。
――其れが、貴方の選んだ新たな力。さぁ、貴方の闇を斬りなさい。
迫る斬撃を、籠手で受け流す。ゆっくりと間合いを詰め、剣を衝き出した。心の奥深くから、熱い物が込み上げている。其の想いに呼応するかの様に、眩い光りが闇を照らし出している。
胸を刺し貫かれて、自身の幻影は消滅した。
何時の間にか、元居た部屋に戻っていた。
「其れが、貴方の新たな力」
胸の刻印は消滅して、籠手の中央に刻まれていた。
「其の刻印は【護りの刻印】と呼ばれている。貴方の心次第で、其の姿を変えるわ」
砂羅は、穏やかな笑みを浮かべていた。
「さぁ、そろそろ刹那が待ち草臥れてる頃ね。今度は本当に、御節をご馳走するわ」
優しくて、温かな笑顔だった。
「護る力を授けてくれて、感謝する」
何時か戦騎騎士と《禍人の血族》が、肩を並べて闘う日が来るかも知れない。
「良いのよ。刹那の事を、頼んだわよ」
少なくとも、砂羅の様な人間が居る事が解った。
羅刹は砂羅に、微笑みを返していた。
拾壱
天界の上層部には、天承院と謂う名の王宮が在った。神々の王が住まう王宮。其処には専任の騎士が居る。
――天承院附けの戦騎騎士。其れは、神との謁見が赦される事を意味していない。其処に至る迄には、更なる功績と確かな力が必要で在った。王宮とは謂え、神々の王が住まう地。人間の理屈が通る事は無い。そもそもが、規格が違うのだ。
【嘆きのエリザ】から、天承院に住まう第一騎士団へと在る連絡が入ったのが三日前。タタラ復活の報は、未だ神々に受理されていなかった。因みに、第一騎士団に報じられた伝達は、タタラ復活とは別の案件で在る。詳しい情報は一部の神にしか報されていないが、天承院は確かに揺れていた。
神に直々(じきじき)に呼び出されて、矢紅は嘆息していた。此の時には未だ、矢紅は何も報されていない。タタラ復活も《開門》の案件も、何も知らない。故に矢紅には、動き様が無いのだ。そして、神からの呼び出しを受けて、実際に謁見する迄には、数日の時を要する。先程も述べたが、神と人間では規格が違う。永遠を生きる神々に取っては、数日は人の数分にも等しい。
故に数日を掛けて、神が熟孝をするのは自然な事で在った。
漸く考えが纏まったのか、神からの勅命を受けて初めて、矢紅は《開門》が近い内に行われる事を知らされる。詳しい時間と場所。そして必要な贄の選定。其の詳細と指揮は、全て矢紅に任せるとの事で在った。第一騎士団も《開門》の実行が、第一優先事項だと謂う報せを受けている事を教えられた。故に此の時点では矢張り、タタラ復活の報を矢紅は知らなかった。
此の時に矢紅の胸奥を占めていたのは、贄の選定で在った。《開門》に携わるのは、矢紅も初めての事で在る。古来から在る資料では、贄の多くは《捧ぐ者》が務めていたとされている。戦騎騎士と《禍人の血族》との関係に、大きな溝を生み出している原因の一つだ。
矢紅に取って、頭の痛く為る話しで在った。
天承院の最大の脅威が、己の手腕に懸けられたのだ。頭が痛く為って、当然で在る。