第4話 日本とドイツ
大変遅くなってしまい、申し訳ございません。ゴタゴタが落ち着き、再開の目処が立ったので、少しずつ執筆して参ります
1937年6月某日
首相官邸のとある会議室にて
「高橋大臣!重光大臣!ありがとうございます!おかげで日満蒙経済圏のみならず、イランとチベットへの支援および友好関係を結ぶことに成功した。」
杉内は立ち上がり、二人に深々と頭を下げた。
「総理、頭をあげてください。」
「そうですよ!」
二人の大臣が頭をあげるように言った。
「とはいえ、これで中東の方はイランが赤い津波の防波堤になりそうですね。」
重光は柔らかい表情で言った。
「ああ、それにイランも石油産出国。石油の確保もより安定しそうだ。ありがとう」
杉内は改めて礼を言うとソファに腰掛けた。
すると一連の様子を見守っていた水野が尋ねた。
「そういえば日独防共協定を結んだ時、ドイツに行ったと思うが、ドイツはどんな感じだった?あとあの男にはどんな印象を受けた?」
すると杉内はまるで恐ろしい物を見たかのような表情で語り始めた。
1936年11月 ドイツ首都ベルリン総統官邸にて
「失礼いたします!総統閣下!日本から来たという首相をお連れいたしました!」
部屋に入った瞬間、目に入ったのは一面がガラス張りの窓と高い天井、大きいシャンデリアであった。
そして黒い隊服に金髪に碧眼の、高身長の男はそう言うとドアを開け、奥に座っているであろう男に敬礼をした。
ただの敬礼ではない。右手を上げ、腕をしっかり伸ばしている。
部屋の奥に座っていた男は立ち上がるなり
「ご苦労であった...ハイドリヒ。」
ハイドリヒと呼ばれた男は感謝の言葉を述べると、部屋を後にした。
杉内は奥にいる一人の男を見た。
威厳ある風格、凄まじいまでのオーラ...噂によれば、この男に見つめられた女性が倒れた、なんて話も聞くくらいだ。
しかし杉内はそんなことを気にせず、話し始めた。
「お初お目にかかります。私、杉内勝と申します。大日本帝国内閣総理大臣です。本日はよろしくお願いいたします...アドルフ・ヒトラー総統‼︎」
その男は少し眉を動かすと
「いかにも...私がドイツ第三帝国の総統、アドルフ・ヒトラーだ!極東からはるばるご足労であった。」
「いえ、本日はお招きいただき、お礼申し上げます。」
杉内は深々と頭を下げる。
その後、杉内は簡単な会談のあと、日独防共協定に署名し、お互いに握手を交わした。
その日の夜、総統執務室では
「ロンメル...杉内と言う男と話したかね?」
ロンメルという男にヒトラーは尋ねる。
「ええ、少しばかし話しました...」ロンメルはそう言ってこわばらせた。
額には汗が流れ、震えを抑えながら...さながら戦場にいるかのような恐怖感を...
「ロンメル!勿体ぶらずに言え!」
怒声にも近い総統の一声にロンメルはピクついた。
「はい!僭越ながら申し上げますと...あの男は...人の皮を被った化け物です!総統は気づかれましたか⁈瞳から溢れ、滲み出たインクのように...闇が!」
すると総統は覇気を失った声色で
「あ、ああ...感じたよロンメル。私も、あの男から滲み出る闇をな...なんなのだ一体...。怖気すら覚えたぞ。」
「ええ、まるで壮絶な過去を持っているかのような...そんな背後さえ感じました。」
二人はしばらく沈黙したまま、座り込んだ。




